15:ジョーカーさんが襲われます。
ううっ。もう、お嫁にいけない……。
俺は、頬を濡らしながら、夕方の赤い道路を歩いていた。
この十字路を右に曲がれば、家だ。俺の、癒しの場所だ!
見えてきた家にテンションが上がり、なんとなく、スキップで曲がろうとする。刹那、突風が吹いた。
「ぬわっ」
あまりの強風で、俺は吹き飛ばされ、止まれの標識の棒にぶつかった。
「ぐっ」
強烈な痛みに呻き声が漏れる。
「くくく……ジョーカーって噂に聞いてたより、弱いや」
響く少年の声。俺は、顔をあげた。そこには、黒いローブを身にまとい、顔を隠した小柄の人が立っていた。ローブからはみ出した、大きな黒い鎌が目に付く。
「なっ……死神!?」
「へえ。分かるんだ」
俺は、急いで立ち上がった。少年は笑い声を漏らしている。
「僕、ジョーカーの能力見てみたかったんだぁ。まあ、楽しませてよ」
少年は、そう言うと、地面を蹴り、高々く跳ねた。そのまま、俺に向かって、鎌を振る。俺はギリギリのところで、右に飛び、転がった。
「なっ。お前も俺を狙ってるのか!」
「まあね。任務じゃないけど」
「……悪いがお前は俺と戦う時点で、勝ち目はないぞ? 俺が本気出したら、お前は死ぬ」
もちろん嘘だ。俺が死ぬっつーの。
「へえ。それは楽しみだ」
「今なら、見逃してやるぜ? ほら、ガキはお家に帰んな」
「僕は君と同い年だけど。まあ、いいや。じゃ、本気同士でやろっか」
逆効果だったー。
少年が俺に向かって走ってくる。まるで風のようで、飛ぶ時間もなかった。咄嗟に鞄で顔をガードする。
ガキイインッ。
まるで、金属と金属がぶつかりあうような音が響き、後ろへ飛ばされた。そのまま地面に転がる。
「うえっ」
ごろごろ転がり、やっと止まって顔をあげると、少年も同じような状態になっていた。後ろに飛ばされた衝撃で、手から離れたはずの鞄はどこにも見当たらなく、俺の横に転がっていたのは、銀色の盾だった。
「ええっ」
お、俺の鞄は? ってか、何故に、まるでファンタジーの世界のような盾があんの。あ、死神がいる時点でファンタジーか。
「へえ。なんの能力か分からないけど、やるねぇ」
少年がくすりと笑う。ローブのフードが取れ、少年の顔が露になる。
少年は、銀の長めのサラサラの髪(よく考えると、俺と同じ髪型だ)で赤い双眸をしていた。
「へへっ。面白いね」
少年はそう言い、吹き飛んだ、鎌を手に取る。そのまま、ゆらりと俺に近づいてきた。さっきの盾でガードしようと、横を見るが、そこにあったのはいつもの学生鞄だった。どうやら、この鞄が、盾になっていたようだ。
「あれ?」
手にとっては見るが、変化はない。
…………絶体絶命じゃん。
足がすくんで、動けそうにない。ど、どうしよ、俺!
みんなー、オラに力を分けてくれ!!
……無理です。あー死にます。「死神さんの御登場!!」連載終了します。主人公死にます。
俺は、絶望に見舞われながら、目を瞑った。
この物語は、バトルシーンがメインではないんで、ちょっと、分かりづらいかもしれませんが、お願いします!!
コメディーとして楽しんでいただけると幸いです。