悔いある過去
大きな歓声とともにトライラインへ飛び込んだ。
「ナイストライ!」と言われ、抱きつかれ、僕は大きな声で
「もう一本!!」と叫んだ。
「おーい」 「おーい」
ん?何だ? このやけに落ち着く声、何か心配してそうな…
は!? この声桜子だ。と気づいた時には遅かった。
目の前には先生。クスクス笑う友達。
寝ぼけてて、あまり覚えてなかったが、怒鳴られたのは確かだ。
チャイムがなると同時に桜子が話しかけてきた。
「京介が授業中に寝るなんて珍しいね。なんかあった?」
「ああ、あったね。お前みたいな無駄に顔がよくて、成績優秀なやつがいると、幼なじみの俺がかすんで見えちゃうからな。」
ああ、そうだ。こいつは何でもできる。絵を描かしたらコンクールで金賞をとってくるし、バスケ部に助っ人で行ったら、必ず勝って帰ってくる。そんなやつが俺を相手にしたら俺の価値が下がる。
「それは、どうもありがとう。でも、京介には運動ができるじゃない。小学校の頃、ラグビーでのトライはかっこよかったよ。それに、頭もよかったし…」
過去の話ばっか。
「悪い、便所。」
そう言って、桜子の話しを絶ちきった。いや、逃げたのかもしれない。
帰り道に夢や桜子の会話について考えた。
確かに、小学校の頃は100点ばっかで先生によくほめられていた。
ラグビーだって、チームのエースやキャプテンもしてたぐらいだ。
でも、今はちがう。
中学に入って勉強は難しくなった。中の中の下。平均より少し越えてるぐらい…
ラグビーも中学のクラブチームに入り、身体が小さいだけでレギュラーに入れてもらえない。自分で言うのも何だが、実力はあると思う。そして、誰よりもラグビーが好きだ。だからこそ悔しいんだ。だから、桜子の会話から逃げたのか。いや、それだけではない。過去が良くて、今がダメだから…そういうことが悔しいんだ。
そんなことを考えながら、京介は今日も帰路についた