表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/39

1-8 ギャグパートは基本死なない

裏でアイツの運命は捻じ曲げられた

「知らない天上だ」


 ログインした場所が場所なのか、前回とは違った場所に俺たちはいた。

摩天楼の立ち並ぶ大都会……の裏路地。

ゴミや、死体だか死骸だかよくわからないものまで落ちていて、正直気味が悪い。

そしてなにより空が白い。雲に覆われているわけじゃなく、ただただ白い。


「僕になんの用だ?大学出てからネチネチと付け回して。いい加減しつこいのだけど」

「いや、倫太郎。俺だよ。鏡衛だぞ」

「僕の身辺はリサーチ済み……ってか。轢けば帰ってくれるかな」

「えっちょっ」


 後ろからエンジン音! やけにうるさいが、そんなに馬力があるのか? 

突っ込んできた青の流星をすんでで避けて、壁の出っ張りにぶら下がる。

ひき逃げ未遂事件の下手人に倫太郎は手をかけ、そのまままたがる

流線型の滑らかなフォルム。倫太郎のユニットと同じ、メインカラーは青で構成された大小さまざまなパーツで組み合わさり、できた機械。

このご時世の主流、一昔前の創作物で知られる浮遊車と似て非なる、二輪(バイク)だった。


「突っ込め!テレンスフィクシー!」


ブオンと倫太郎の声にこたえるようにして力強くエンジン音を吹かすバイク。

一度大通りの方に抜けた後、ウィリーのような格好で空の道を走りながら突っ込んできた。

何気に運動能力はそこそこあるこのアバター、ムーンサルトというなかなか現実ではできない避け方で、身体のアーチをくぐらせるようにして回避する。

あ、倫太郎の足が顔面に迫って──


「ぶふぁあっ!?」

「バイクにだけ気を取られてんじゃねーよ」


随分と……足癖が悪い……。体操競技のような、バイクに腕をついて身体をねじるようにしてそのまま蹴りを入れてくるとは……。確かにリアルでも運動神経良いもんな……。

しかし、戦う必要はないということを倫太郎に確認させなければ。


「なあ、ここって変身解除したら現実の姿に戻るのか?」

「出来るが数秒でBANされるって聞いたぞ」

「じゃあやめとく」

「何がしたかったんだお前は」

「俺が神無月鏡衛であることの証明」


 地面に転がったままというのも随分とかっこ悪いが、バイク持ちの倫太郎と戦わずに済むならそっちの方がいい。

気さくに、いつも通りに話しかければわかるはずだ……。


「……確かに鏡衛だ」

「信じてくれたか……」

「いやオーラがお前の物だった。気づかなかった」

「なにそのトンでも設定」

「生まれつきの力」


初耳なんですが倫太郎サン。お前は人のオーラとかが見える超能力少年的なあれだったのか?

いやもしかしたら末期の中二病患者の可能性も……。


「悪かったな。つけてたのはお前だったのか」

「いや違うから。お前が路地裏にこそこそと入ってたから気になって覗いただけだから」

「じゃあ誰が……」


 ふっと。倫太郎が上を……正確には先ほどまでいた路地付近のビルを見上げた。

つられて見ると、逆光でよく見えないが、やたらシルエットがとげとげしい奴が立っていた。

そいつは肩から羽らしきものを開き、飛び立った。


「待てストーカー!」


 バイクのグリップをひねり、弾丸かと思うばかりのスピードで飛び出していく。

同じく高スピードで飛んでいるストーカーの顔が、こちらを向いた。

蝙蝠だ。羽を広げた蝙蝠のような顔だ。機械的な仮面ではあるが、そのような意匠の貌だった。


■■■■(■■■■)


そのまま口元に手を当てて何事か呟くと、風に溶けていくように、徐々に透明になりつつ身体が崩れていき、消える。


空に飛び上がったはいいものの、眼前で獲物が消え去ったバイクが。悔しそうに嘆いていた。




「逃がしたか……」


 倫太郎が車輪を転がし帰ってきた。

声音もやはり悔しそうで、ぼーっと見てただけの身としてはちょっぴり心苦しい。


「だが顔は覚えたぞ蝙蝠野郎……僕に対して粘着とはいい度胸じゃないか、やってやるよ」

「誰かの恨みとか買った?」

「いや全く。僕は基本ここら辺の道路で走ってるだけだからね。向こうじゃ二輪車の人権なんて無いし走る想定もされてない」

「あ、そうだ身体!こっちにいるってことは向こう(現実世界)に身体置きっぱなし」

「そこは問題ない。不思議なことにこのゲームはほかのVRとは違うらしい」

「は?」


VRMMO、と言えばフルダイブだろう?そして、ゲームで自由に体を動かす代わりに、現実の身体は生命維持だけの脱力モードなわけで……。

俺たちの身体は普通ならあの路地に死体みたいに転がっているはずだが……。

はっ! つまり路地に落ちてたよくわからない者は俺たちの未来と言うことか!?  早く戻らなければ。


「フェーズ3になればわかる。とりあえず大丈夫だ。僕を信じろ」

「……」

「たしか家に秘伝の出汁があったような」

「よかろう」


やっぱりともだちはしんじるものだよね!



「そういえばキョウ、お前の姫様はここに居るんだろう? 連れてってやるよ」

「なぜわかったし」

「どうせビギナーズラックでどこかのアイドル系アバターにでも会ったんだろう。ここのアバターはほんとに色んな種類があるからね」

 

確かに不審者の情報をもとに走っていたら歌に引き寄せられた。たしかに運命だ。俺の良いことがあまりなかった人生の運がここで帰ってきたんだろう、きっと。

広場に行けとか言われたような気がするけど、なんか事件らしい事件も起こってないから後回しで大丈夫だろ!


 ふと思ったが、倫太郎のバイクは図体こそでかいものの、座席は一つしかない。

どこかのおぼっちゃまが、『このバイクは一人用なんだ』と煽って来るくらい一人乗りだ。

俺は適当に捕まっていればいいんだろうか?


「それ一人乗りだろ?って顔してるな?そこは問題ない。ちゃんと誰かを乗せることは考慮している。さあ、サイドカーを出してくれ!」

「俺持ってないけど」

「違うぞこいつに言ったんだよ」


 倫太郎がひょいと指差すのはテレンスフィクシー……だったか?

勝手にライトが点灯し、張り切ったような印象を受けるエンジン音で応えた。

降りた倫太郎になぜか車体をぶつけつつも、バイクと同じくらいの幅の円を描く。

その円は発光し、天へと光柱が伸びた。

数秒待てば、空から何か煌めいたものが隕石のように……嫌な予感がする。


隕石のように(・・・・・・)こちらに向かってくるのだ。

これ、不味くない?


ズドーン!と俺の予想通り煌めく物体は超スピードで堕ちてきた。

倫太郎のところに。


「り、倫太郎ーっ!?」

「─」


土煙が晴れて、青いサイドカーに埋もれていたものの。無事を示すためか大きくサムズアップアップして返した。

大丈夫か……?死んでないか……?流石に。


サイドカーをどかして倫太郎が起き上がろうとすると、なぜかそれを邪魔するかのようにバイクが転がり落ちて倫太郎を轢いた。

……今グシャって言わなかった?


またも無事を示すためのサムズアップをしてきた。なんて頑丈なんだ。


書いてる途中に思ったのですがもう御堂君はバイク関連じゃHP減らないってことでいいですかね?

……ギャグパートのみ適用にしておきます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ