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1-5 帰り道は不審者に気を付けましょう

聖杯戦争TRPGのキャラシート作ってました。後悔はしていない

「こいつは……どうすればいいんだ? 」


  自室に戻ってオーレンのウィンドウをいじくってみてもどこにも『ナラティブ・オブ・フィクション』、『NOF』といったアプリケーションが無い。

自分でインストールした覚えがない以上妙なものに好んで近づく必要はないとはわかっているのだが……。千羽からの挑戦状を袖にするのも何かと癪だし、なによりあのチュートリアルだけで俺は魅せられてしまった。もう一度あの世界を見たいし、クロにも聞きたいことはまだまだある。ここまでらしく(・・・)別れたからにはもうあの場にはいないだろうが……。


 だ、が。入りたくても入れないというのが現状なわけで。

ログイン! だとかNOF起動! だとかを叫んでみたものの、見事なまでの無反応。

音声アシスタントも無言を貫いているため悲しくなってくる。

あとは……。


右腕を開き、じっと見つめる。あれはゲームの中だから、そんな演出だったから、出来たのかもしれない。純粋に考えて普通はこんなことは現実ではできないとわかってはいるんだ。けど……。

不思議と、出来る気がした。


 緑色の格子状の線で編まれた、3Dモデルのような長方形。

闇に浸食されていくかのように着色され、あの世界と同じように。

手には俺の【虚構】が。腰にはアルターが出現した。

ホログラムか? いや。しっかりと質量を感じさせる質感。ズシリと来る存在の重さ。

こいつは今この現実に在る『本物』だ。


どうゆう原理かは知らない。なんでこんなことが出来るのかもわからない。

こうした隠蔽工作のようなものがされている時点で御察しだが、ますます謎が深まってくる。

ドラッグみたいな危険な香りも漂わせているが、手掛かりが今ここにあるユニットだけということは流石に分かる。

ヤバめな裏の世界に足を踏み入れる感覚ってのは、こういうものなのかもしれないな。


「変身」

『エナジーチャージ』


 数十分前の出来事をなぞるようにユニットをアルターへとセット。そのままレバーを押し込んで、システムを展開させる。

数文違わぬ工程を踏んで、仮面を被り、泥を纏って。

俺は【虚構】に成った。


突如目の前に淡く光る、半径1mほどの円が現れた。迷わずに俺は足を一歩前に出し、先ほど別れたばかりのゲーム(電脳世界)へとダイブした。


既に二度味わった浮遊感と共に。

慣れないこの感覚!!




「知っている天井だ」


  俺の部屋と似ている、しかし全く違う場所。チュートリアルで見たさっきの場所だ。

しかしクロはいない。当然と言えば当然だろう。予測できていたことだ。

たった少しだけの時間でこの空間に違和感をもたらしたクロの存在感を称えるべきか俺のチョロさを嘆くべきか……。

とはいえ、ここでうだうだやっていても仕方がない。記憶に従って、外へ出る。

間取りは現実と変わりない。ホント、どうやって再現しているんだか。

一歩間違えなくても犯罪になりそうな気がしなくもないが、どうでもいい。


庭も先ほど見たとおりだし、何なら千羽との戦闘跡も残ったままだ。どうやら入るたびに損壊が直っているだとかそうゆうのはないらしい。オープンワールドと言うのはこうした損傷を直すのも手動なんだろうか。古典的に作業員が直す……とか、その場所の元のデータを呼び出して上書きする……だとかか? 

俺はそういうの(開発側)には詳しくないからなんとも言えないけれど。


とかなんとか歩きながら思いはせていれば、前方に人影。第一村人発見か?

あちらも気づいたようだ。ここは大学での失敗を挽回する勢いでフレンドリーに……。


「グルァアッ!」

「ちょっと待て襲ってクンの!? 」


確かに「人」影ではあった。遠目では気づかなかったがこれ狼男じゃねーか! 敵モブかよ!? 

赤のオーラと灰色の鬣をなびかせて一直線に距離を詰めてくる。しかし……愚直だ。千羽はもっと速かったぞ! 


「くらえ! なんちゃって柔術! 」


  まあ、柔術と言うのもおこがましい、避けて足を引っかけ地面と熱烈にハグさせてあげただけだが。

しかも高校の柔道以降まともにやったことないし。

っと? いやちゃんと受け身とってる! えらい!

じゃなくて反撃が来るゥ! ついた腕で身体を跳ね上げてそのまま頭突き。

腹に入った。いてえ!許さねえ殴り返す! ついでにコピーも使っておく!


 何やら赤いオーラが風呂上がりの湯気のように立ち上り、ちょっとムキムキになった気がする。筋力でも上げるのか?

試しに一発殴ってみる。おお、さっきよりダメージがある……気がする。


 自分のHPはバーで表示されるが、敵の名前やHPなどが表示されないため、従来のゲームっぽくなくてどうにもやりづらい。

もはやボロボロの狼男君は見ただけで瀕死と分かる。仮にHPが表示されていたとしたらレッドだろう。

ふと見れば、腰にアルターとは違ったベルトのような彫刻が巻かれている。

ユニットも見当たらないし、ここまで打ちのめしてあれだけどもアバター(人間)ではないようだ。少し安心した。PK行為は積極的にはやらない主義だからな。


「第二戦の相手としては悪くなかったよ……。だが、お前の過ちは俺を敵に回したことだな」


  そう告げて、フラフラの身体のど真ん中に右ストレートをぶち込んだ。

一度こうゆうセリフを言ってみたかった……。背景が現実よりのSFちっくなファンタジーみたいなもののせいか、現代社会で悪と戦うヒーロー……みたいな感じがして新鮮でもある。そうゆうゲームはあまりやってこなかったからな。

ただし近所の見慣れた風景が残っているというのはナンセンスだが。

細かい所が違うということは、大元はほぼ一緒ってことだ。つまり、ご近所でコスプレしてヒーローごっこをやっている小学生みたいな感覚になる。


「そういえば……レベルアップとか無いのか?」


  このようなゲームではレベルアップなりなんなりがあるのが普通だが……。

俺の視界には簡素に【虚構】の文字とHPバーとその下のよくわからないバーだけだ。

多分、クロたちが使っていた超必殺とかいう奴のゲージだろう。多分。


「【不死鳥(フェニクス)】を撃退し、次には低レベルの複製品とは言えネームドをなんなく倒す……。けしかけたかいがあったってもんだね」

「誰? あんた」

「どうも、通りすがりの旅人さんさ。あのクリーチャーを連れてきた人だよ」


 いやどうみても不審者。と言うよりかはフード付きのカーキのポンチョが靴を履いているといった方が正しいか。


「いや、家訓で不審者には近づくなって言われてるので。じゃ」

「待て待て! 私は怪しい者じゃない! 」

「怪しい者じゃないっていう奴ほど不審者だからなぁ」


 わめくポンチョを尻目に抜き去ろうとすると、慌てて靴音が迫る。


「ユニットを明かそう! 私には戦闘力なんてさっぱりだし、ああやって誰かをけしかけるくらいしか人を害す方法はないから! 」

「初心者に粘着する悪質プレイヤーかもしれない。ただでさえ始めたばっかりなのに、へんなのに絡まれた経験があるやつにどうして近づこうと思ったのやら」

「そういう自己防衛は賞賛すべきものだけど、今回ばかりは私と話をしてほしいなあって思うんだ」


 言葉通りに、そいつはばさりとポンチョを脱ぎ捨てた。

防塵ゴーグルに口元を覆う布。むき出しの銀色の筋肉には俺と同じアルターが巻かれていた。

嵌っているユニットは黄色ベースの本体に、帽子と外套を纏った男が描かれていた。


だが……脱いだとしても何も変わらないし面倒ごとの塊にはかかわらない方がいいに決まっている。

だって自分があの狼男を引っ張ってきたと明言しているのだもの。

何事もなかったかのように不審者の横をすり抜け、なるべく遠くへ向かわんと歩みだす。


「え……? 」


 後ろで呆然とこちらを見つめてきている気がするが無視だ無視。

たとえ足音がついてきていても無視。

なんか駆け足になってきたなら全速力で逃げるに限るッ!


「ま、まてーえい! 」

「待てと言われて待つ奴はいない! 」


 曲がり角や建物の影、そこらへんに再現されているゴミ箱なりなんなり。

全ての遮蔽物を利用して逃げろ! 親切な人ならあれだけど俺と千羽の戦い覗いてたって言ってるから十中八九危険人物! 

そうだ、交番的なものは無いのか!? もしくは通報機能!

調べた! ウィンドウすら出てこねぇ!


「私はぁー、君にぃー、助言をぉー」

「なんだって!?聞こえねえ?」


 だんだんと距離が離れていく追手がなんか言ってるが全く聞こえない。つーかスタミナなさすぎじゃねえか!?

チャンス! 路地裏に入ってかく乱する!


「だから君にちょっと伝えたい事があるって言っているのさ」

「な!?!?」


 なんで……だ?気づけばすぐ目の前に銀光を纏った不審者が立っていた。俺の知る限り、入り組んだ路地裏を先回りすることすら難しいはずなのに……。

と、いうより伝えたい事? 誰だ? 千羽以外に俺に言伝なんていないだろうしその千羽だってさっき飛んでったばかりだし。


「改めて、自己紹介をしよう。僕は【旅人(トラベラー)】。旅をする事しか能がないとっても優秀な人材だ」


どうでもいいけど、重力を無視して壁に立っている状態でいうとシュールだな。


そういえばネトフリでユニコーン見返してるんですけどやっぱりクシャトリヤは良いですよね

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