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日常編 01 女、パン屋で格闘す

見にきて頂き、ありがとうございます。

 パン屋さんに行った事のない人はあまりいないと思う。

 デパートの地下やスーパーの中にもパン屋さんはある。ただ近くにパン屋さんがなかったり、通勤や通学の時間と合わなかったり、小麦粉アレルギーで避ける人もいたりするだろう。

 勿論、パンより米や麺が好きと言う人もいるだろう。実際、女自身がパンよりご飯が好きな人間だ。高校時代には朝のパン食が嫌になって、自分の分をご飯食に替えてもらった事もある。ヨーロッパ旅行中にずっとパンを食べる事になり、帰国して数ヶ月パンを受け付ける気分にならなかった事もある。


 では、どうして女がパン屋さんに行くか。女の母が無類のパン好きだからである。

 一緒に行ったヨーロッパ旅行でも、パンばかりで憔悴している女に比べ、女の母は嬉々とパンを食べていたものである……。

 女の母が遊びに来る時や女の母に荷物を送る時の為に、女は時たまパンを求めて彷徨さまようのである。

 また、女がパン屋さんの多い地域に住んでいるというのもある。パン屋さんが多い町、パンの消費が多い町、などの統計を見れば、多分上位にあるだろう(最新の結果はわからなかった)。実際、徒歩三十分圏内のパン屋さんだけで三十以上あるのではないだろうか。偏った好みだが、女が比較的贔屓にしているパン屋さんだけで五軒はある。まあこれだけ数があったから、用途に合ったパン屋さんを見つける事ができたとも言える。


 パンには色んな種類がある。豆知識的に書こうと思って調べて、書くのを止めた程である。

 パンの好みも様々である。

 美味しいパンも好みに合わないパンもあるだろう。

 蛇足だが、女が先日食べた、割引されていたスーパー内のパン屋さんのパンは、イーストだかアルコールだかのにおいで美味しく感じられなかった。久々にこの臭いを嗅いだ……二十年振り位だろうか、今でもこんなパンがあるのかと女は驚いた。




 さて、パン屋さんと言えば、かなりの確率であるのが、トレーとトングである。

 トングで好きなパンを取り、トレーに載せて会計をする。言葉にすれば簡単だし、殆どの人は何の問題も感じないだろう。

 だが、たまにそれが上手くできない人間がいる。……そう、女のように。


 まず一番苦手なのが柔らかい系のパンである。左右からトングでつかもうとすると横が潰れるではないか。中身が出てしまうかもしれない。では上に載せる感じで掴もうとすると、前後左右そして下のパンが問題になってくる。他のパンを極力傷付けずにトングを動かすのは至難の業である。パンの下をそっとすくっても問題は続く。トングの下部分だけでパンを動かそうにもそれができる人は非常に器用な人のみである。従って、潰さないよう細心の注意を払ってトングの上部分をそっとパンに触れさせ、そのままほぼ滑らせるかのようにトレーへ移動させる。……でも何だか少し凹んだ気がする。

 次に難儀なんぎなのは、具材が上に載ったパンである。惣菜だけでなく、ジャムや明太子、ガーリックやチーズなども含む。きっとこの手のパンを掴む時は、大部分の人がパンの横をはさむ形で掴みたいと思うのではないだろうか。だが、この手のパンは総じて平たい形の物が多いのである。つまり、トングからの圧力を最も受け易いパンの形と言える。よって、横からは掴み辛い。勿論、上下から挟めば何も問題ないのだが、最も美味しい部分がトングに付く事をいとわず、躊躇ためらいなく掴める人がどれだけいるだろうか。いや、いっぱいいるのかもしれないが。パンの棚に極力トレーを近付け、トングの下部分にパンを載せるようにして滑らせる。……トングもお腹空いてたから食べられたのは仕方ないんだ。

 また、デニッシュ系やクロワッサン系のパンも手強てごわい。掴んだら外側が割れる。掴むのも大変だけど、運ぶのも一苦労で、掴んだ事で割れた生地がパラパラと他のパンの上に落ちる。自分のパンが減りも、他人が食べるパンに生地が落ちるのを、泣く泣く眺める事になる。パリパリの生地を割らずに掴めた事など一度もない。

 ハード系のパンはまあまあ得意である。ただ密集して置かれてあると、パンとパンの間にトングを突き刺す時に気を遣う位だろうか。

 一番得意なのは、紙やビニール・ラップに包まれたパンである。トングを使うべきかもしれないが、そのまま手で掴んでしまうのは勘弁してもらいたい。


 ところで、女は最近最強技を身に付けた。

「すみません、それ取ってもらえますか」

 店員さんの手の空いている時に限るが、素晴らしく上手に取ってもらえるのでとても満足度が高い。個体を選べないが、これは最強ではないかと考えている。


 トングを苦手にしているのとは別に、女の個人的な行動なのだが、まず単身ぐるりと店内を回りパンを選んでからトレーとトングを手に取る。

 全商品を二・三度確認して決めた後、またトレーとトングの場所に戻ってくる。それなら、パンを載せて重くなったトレーを持ち歩いて、他人とれ違った時にぶつけたり落としたりする危険性を作る必要もないのでは?という考えである。

 まあ実際は女と同じ行動を取る人を見た事がないので、変わった行動に見えるかもしれないが……。


 パン屋さんで、何だかパンと格闘している人と会ったら、温かく見て見ぬ振りをして欲しい。きっとそれは女の同類さんに違いないから。

トングが嫌いです。特に先端まで金属で、弯曲わんきょくしてるトングには殺意を覚えます。

「(柔らかいので、)仰ってくれればお取りしますよ」と言って下さる店員さんは天使に見えます。

パンを選ぶのには迷っても、取り方には迷わない、そんな皆様に羨望せんぼうを持ちます。

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