主天使達
悪魔率いる魔人の国と魔法を使う人間の国だけの世界。
ふたつの国はいつも戦争をしていた。
ある時、人間の国で計画的な兵器人間の生産が行われた。
成功体は435人中98体のみだった。
彼らは“天使”と呼ばれ、戦地へと送り込まれた。
しかし生き残ったのは3体だけだった。
飛び抜けた身体能力と氷の魔法を持つ個体と、魔術の才能と頭脳戦に秀でた個体と、好戦的で残虐的な戦闘狂である個体。
それから、その3つの個体を基準に幾度となく生産は行われた。
そして今では、“熾天使”と呼ばれる最上位の個体2名と“主天使”と呼ばれる上位個体6名と下位個体“天使”120人の軍隊が出来た。
その軍隊国家の名は“天国”
人類は悪魔の世界との境界に、天国を挟んだのだった。
――☆――
広大な荒地を2体の主天使。
「ジェッド、こりゃ一体なんの罠だよ。」
2人の周りを囲っている知性のない下位魔人“下位悪魔種”を見渡し、黄金色の狐耳を動かしながら相方に尋ねる。
「さぁ?私にわかると思いますか?」
ジェッドは銀縁の眼鏡を少しかけ直し、仕方ない、と言わんばかりに長い白髪を綺麗に結わえていたリボンをため息とともにほどく。
「じゃ、いっちょやりますかッ!!」
声とともに先に動いたのは、狐耳の方だった。
跳ぶと同時に耳と同じ黄金色の狐の尻尾を二本出し、その尻尾で悪魔を地面に叩きつける。
悪魔には基本的に物理攻撃は効かないが、その物体に魔力を纏わせていたら別の話。
「うっし、先制きまりぃっ♪」
太陽のような笑顔を相方のジェッドに向ける。
「ちょうど私も準備が終わりました。」
相方の様子を見終わり、ジェッドは目を閉じてから眼鏡を外し、ポケットにしまう。
そして一声、
「目覚めなさい。『石化の呪い』!!」
開眼と同時に、不幸にも視界に入っていた悪魔が石化する。
ジェッドは石化したのを確認し、すぐに眼鏡をかける。
「さっすが、ジェッドだな!」
太陽のような相方の笑顔を前にしたら、普段鉄面被のジェッドでも微笑んでしまう。
「貴方も流石ですよ。キコマルくん。」
――○○――
主天使No.08:キコマル
特殊能力:変身【九尾】
主天使No.07:ジェッド
特殊能力:石化【メドゥーサ】
――○○――
――☆――
霧の濃い花畑の中を一人走る鳥人間のような悪魔。
知性のある“中位悪魔種”のようだった。
黒い嘴のついたマスクを付け、手と足はの太い鉤爪。見た目から力強いものである。
遠目で見れば羽根のないドラゴンのようであった。
「(こんな所に花畑などあったものか…。)」
鳥人間は不思議に思いながら走り続ける。
ひたすら真っ直ぐに走っていると、前方の霧の中に何やら人の影のようなものが写っていた。
「(人間の影…と、匂い……?こんな所までご苦労なことだ。)」
突然霧の濃い花畑へと踏み込んでしまった時からあたりを警戒するのが正しかった。
しかしそこまでの知性が、鳥人間にはなかった。
鳥人間にあるのは欲望を満たすという思いのみ。
“人間を喰らう”それこそが彼女の思いだった。
胴体と顔が人間で腕と足が鳥のような鳥人間は主天使によってあとすこしで殺される。
「キャハハハ!!餌だ餌だぁぁっ!!……っ、」
叫びながら影へ突っ込んでいくと、そこで待っていたのは大きな開いた口だった。
「餌に釣られるなんて、……愚かね。」
鳥人間の最期にちらりと横目に見えたのはクリーム色の髪をなびかせながら、狂気を感じる笑顔をした女の子だった。
鳥人間は一口だった。
170cm近くある鳥人間を一口で飲み込むほど大きな口だけの生物。
その生物の元を辿って見ると女の子の右腕だった。
「濃霧の花畑の時点で私だと気づくべきだったのよ。夢見のピエロ、……このレミにね。」
――○○――
主天使No.06:レミ
特殊能力:憑依【右腕のみの魔人食生物】
個体別名:夢見のピエロ
――○○――
――☆――
「ねーぇー、いつになったらここでれるのよぅ!」
青髪の出るとこが出すぎた女が嘆いていた。
「うるっせぇなぁぁ…!!!んなもん知るかよ。」
黒髪の天パな男は女に向かって叫んだ。
「んーもぅ!ミョゲルのばーか!はーげ!!」
「禿げてねぇだろ!!!!」
2人は古城の最上階の手前の階。そこの廊下のような一本道の場所をくだらない会話をしながら歩いていた。
広すぎて広場か廊下か見分けがつかないそうだ。
そんな場所で2人は野生の勘とやらで前方からくる何者かに気付いた。
「ミョゲル、前……。」
「ノマ、分かってる。」
前から来る“何か”に対して警戒心を抱き、2人の顔つきは真剣そのものとなった。
「おやおや、気付かれましたか。」
「そのようね。小娘たちにしちゃ勘がいいわね。」
先に喋りかけた方は男だった。黒いロングコートを羽織ったハンサムな顔つき、だが肌は暗い灰色に近い色をしていた。
あとに喋った女は、体型はやはり出るとこは出ていた。プラスとしてその出ているものを主張するかのような黒のセクシーなドレスに身を包んでいた。肌の色は同じだが化粧をしているのか唇が少し深みのある赤で彩られていた。
「私が小娘を殺るわ。」
「OK、レディ。僕は男の子にしよう。」
非常にセクシーな女がノマと戦うことを決める。
それに合わせて、ハンサムな男がミョゲルと戦うようだ。
「あーぁ、なんかあっちでもう決まっちゃってるみたい。」
「そのようだな、こりゃぁ…参ったぞ。」
一人一人感想を述べ少し間があく。
「「とっとと蹴散らして帰るぞ/わよ!」」
ミョゲルとノマの声が重なり
「「何がなんでも捻り殺すよ/わ!!」」
美男美女悪魔の声が重なる。
気合いの入り方はなかなかだ。
そして開戦の時がくる。
セクスィーな女悪魔は無詠唱で水魔法を構成し始める。
魔法で大事なのはイメージであるが、魔法上位者でなければ無詠唱は不発か威力がかなり弱くなる。
なぜならそれは脳内でイメージが細かくないからであるとされている。
「噛み殺せ!アクアウルフ!!!」
水を狼の形にしノマに向けて走らせる。
しかし、それをただで受けるノマではなかった。
直ぐに背中で担いでいたハンマーで狼を叩き消す。
「そんなんじゃ、私には通じないよ。」
ノマはハンマーを肩に担いで走り出す。
スタイルが抜群すぎる女悪魔はバリアを張って身を守りつつ、器用に魔法を繰り出す。
「逃さないよ!!|マッディストリーム・フラッド《濁流の洪水》!!」
自身の前に出した巨大な魔法陣から勢いの強い濁流が飛び出しノマに向かって押し寄せる。
ノマはその濁流を悠々と跳び越し、空中でステップを踏む。目のやり所に困る女悪魔の頭上へと到着する。
「潰れろ。ギガントハンマー・インパクト!!!」
声とともに持っていたハンマーに魔力を流し込み、ハンマーを大きくする。それに比例して重くなったハンマーを美人すぎる女悪魔に振り下ろす。
「ふんっ、私のバリアで――」
「そんなもの効かないのよぉおおおおおっ!!!!」
重たい地響きがし、床に大きな穴が空いた。
オーラから綺麗すぎる女悪魔をバリアごと潰したようだ。
美人だった女悪魔は目が当てられないような状態で、はるか下の床にめり込んでいた。
ノマは戦闘の疲れてそのまま床に寝転んだ。
「早く終わらせてよ、ばかやろう…。」
ミョゲルに聞こえないような声で小さく呟き、そのまま目を閉じた。
――○○――
主天使No.05:ノマ
特殊能力:巨大化【物のみ】
――○○――
――☆――
「せいぜい楽しませてくださいよ。」
ハンサム悪魔は言うところの営業スマイルと言うやつをしている。
「そりゃあ、どうかな。…自分でもわからんな。」
余裕ぶってる悪魔に対して、ミョゲルは先程まで背にしょっていた刺股の先端部分を両刃にした武器を手に持ちかえた。
ハンサム悪魔程の営業スマイルとはいかないが、ニヤリと効果音がつくような笑顔を見せるミョゲル。
それからお互い見つめあってしばらく動かなかった。
そんな時、広場のような廊下のような場所で、酷く重い地響きがした。
「(こりゃ、ノマの奴だな…。)」
音からしてノマが勝った様子で少し口角が上がった。
そしてミョゲルは決意を固めた。
「来ないなら、俺から行くぞ!」
先制攻撃をする覚悟を。
ミョゲルは刺股を構えて走り出す。
そこに向かってイケメン悪魔の魔法が飛んでくる。
「ふっ、…シャドーデビル!!」
軽く笑った憎たらしいくらいハンサムな悪魔の出した魔法陣から出てきた黒いモヤに赤い目のついた奴が、ミョゲルに向かって突っ込んできた。
が、ミョゲルは刺股の刃先を器用に使って上手いこと前宙して黒いモヤを避けた。
しかし黒いモヤは追跡型だったようで、ミョゲルのあとを追おうとする。
「そんなもん、構ってられるか!ノマ!!」
「あいあいさー!」
割と寝っ転がっていたノマを呼び起こし、シャドーの相手をさせる。
ミョゲルは後ろを、ノマの方を振り向かず超ハンサムな悪魔へと走り、
斬りかかった。
「ラス・ブラッシュオフ!!!」
刀身にエネルギーを貯め赤くし、そのエネルギーで物理攻撃の効かないやつにでも切りかかれる技である。
めっちゃハンサムな悪魔の張っていたバリアごと首に近い肩から反対側の横腹まで自身のパワーで切り裂いた。
要は勝ちである。
少しほっとした。そんな時、
「やっと終わったのぉ〜?おーそーいー!!」
シャドーとの戦いがすぐに終わったのか、待ちくたびれた様子のノマが立って待っていた。
「ごめんごめん。帰ろうか。」
「そーよ!熾天使様の元へ報告しなくちゃだよ!」
ミョゲルは軽くノマに謝り、
2人は古城の出口を目指して歩き出した。
――○○――
主天使No.4:ミョゲル
特殊能力:???
――○○――