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翼を持つ少女

 少女は天使を思わせる雪のような純白の翼を持っていた。

 また、悪魔を思わせる烏のような漆黒の翼も持っていた。

 白と黒の対比(コントラスト)

 少女の背中からは、天使と悪魔の特徴を備えた一対の翼が覗き、天使と悪魔の混血を思わせた。

 その姿を喩えるのなら。

 ・・・・・・天魔。

 否。そんな種族など存在しない。

 天使や、悪魔は存在しているが、子を授かれるのは悪魔は上位種のみ。そして、上位種の悪魔はあの時完全に封印したはずだ。

 ならば、この女の子は一体何者なのだろうか。言い表せない不安感に二人は襲われ、息を呑む。


「――」


 じゃらり、と少女の手足の枷から伸びる鎖が摺れる音に二人はハッとするように我に返った。


「・・・・・・っ・・・・・・」


「おい、意識はあるか?」


 ゼロは後ろに妹を隠して、しゃがみ込む。すぐに動けるよう、警戒は怠らずに。ゼロの声に反応したのか天魔は目を開けた。虚ろな碧玉(サファイア)の瞳でゼロを見つめ


「・・・・・・けて・・・・・・」


 少女は口を開いた。放たれた声はあまりに弱々しく、小さいものだった。そして、もう一度口が開いた。少女の目には涙が溜まっていた。


「・・・・・・おねがい・・・・・・たすけっ──」


 言い終える前に少女の意識は途切れた。助ける? 初対面、しかも相手は得体の知れない少女だ。助けたとしてもその瞬間に襲ってくる可能性だってありえる。自分達の安全を優先するなら関わらないことが得策だ。


 ──そのつもりだった。いつもなら見捨てるはずのゼロだが、この少女だけはなぜが見捨てる気にはなれなかった。襲われればその場で殺してしまえばいい。それに、宿の中で放置することも出来ないしな。


 ゼロは別にお人好しという訳では無い。例え道を歩いていたら目の前に小さな子供が行き倒れ今にも死にそうな状況に出会しても助けようという気持ちはこれっぽっちも湧かないし、賊に女の子が襲われているという物語定番の展開に遭遇しても、ましてやその女の子から助けを求められても無視をして素通りする、そういう人なのだ。


「たくっ、面倒なことになったな」


 レイナはゼロの服をぎゅっと握り、じっと顔を見つめた。ゼロはそんな妹の心配そうな表情を見て少し微笑むと頭を撫でる。


「分かったよレイナ、手当するから少し手伝ってくれるか?」


 その言葉を聞いたレイナの表情はパァァと明るくなり「うん!」と笑顔で答えた。でも、ま、その前に。


「レイナ、天井直しておいてくれるか? バレたら大変だしさ」


 天井には大穴があいていた。少女が突っ込んでいたせいで空いた大きな穴が。そこからは星が見えていた。

 もしこのまま朝になって、部屋の天井から屋根にかけて昨日はなかったはずの大穴が起きたら知らない間に出来ていたなんて知られたら、絶対宿主に追い出される。なので、ゼロは隠蔽する事にした。そう、バレなければいいのである。誰も無かったことを追求することなど出来ないのだから。


「うん、分かった」


 レイナが天井に手を向けると壊された天井や、机が元に戻った。まるで、時間が巻き戻っているかのように。


時間軸反転(タイムリワインド)】これは、ただの修復魔法ではない。時間という概念に介入し空間内に存在するものの時間を逆向きに進める魔法だ。戻せる時間には制限はなく、自分意思で自由に止めることが出来る。また、空間内で戻す対象を選択することも可能で、今回は宿の時間だけを反転させた。


 ゼロはその間に少女を姫抱っこするとベットに寝かせる。少女の体には無数の傷あった。落ちたことにより傷口が開いたのか、赤い液体がゼロの手に付着する。脈拍は弱くゆっくりで、顔色は悪く蒼白だ。骨には異常は無かった。


 ゼロは少女をじっと見る。

 これは、毒か、しかもかなり強い。


 少女の体は毒によって少しずつ衰弱していた。このままでは取り返しのつかないことになってしまう。早く手当しないと。


「どう? おにーちゃん、容態は?」


 修理を終え少女が寝かされているベットへとレイナは近付いた。


「良いとはいえないな・・・」


「・・・治る?」


 微笑みゼロは即答する。


「任せろ」


 とは言ったものの、治癒魔法をかける訳には行かないし、そもそもあいつと違ってこういうのは専門外なんだよな。


「まずは、毒の方から何とかしないとな」


 ゼロは少女に手を翳す。すると、エメラルド色の魔法陣が形成された、が、効果を発揮する前にそれは粉々になった。それを見た二人は驚きを隠せなかった。


「「!?」」


 人間レベルの魔法が効かない生物はいくらでも存在している。だが、ゼロが使った魔法はそのレベルを優に超えるものだった。それが、効かない生物なんて二人は見たことがなかった。だが、策が無くなった訳では無い。


 魔法が使えないとなると、あれを使う他ないか。疲れるし、あの時以来久しぶりに使うから上手く出来るかどうかは分からないけど・・・・・・。


「レイナ、傷薬と包帯の準備をしておいてくれ」


 ゼロは少女の手を握り、レイナは首を縦にふった。ゼロが手を握ると、少女の体とともに体が光に包まれた。それは、ゆっくりとゼロの体に移動し霧散する。霧散するとすぐ消毒して傷薬を塗り、包帯をまいて傷口が開かないように固定した。

 もし仮に、この少女が悪魔の血を引いているなら優れた自己治癒力を少なからず受け継いでいるはずだ。だが、体力を使う自己治癒はこんな衰弱した状態ではそれも見込めないし、治癒魔法もこの少女には効かないだろう。たとえ使えたとしても、命の危険がある、安易には使えない。なので、元気になるまでは傷薬を塗って時間をかけて治すことにした。上手くいってよかった。


「これでひとまず大丈夫だろ」


 ゼロはその場に座り込み寝転んだ。あーくそ、久しぶりに使ったから疲れたな。何年ぶりだっけ、


「お疲れ、おにーちゃん」


「そっちもな」


 このまま寝たいが、どうにもそうにはいかないみたいだ。


「・・・・・・さてと」


 ゼロは体を起こしドアの方へ。さっき窓を見た時、外に数人いた。多分音で起きたのだろう。その前は誰もいなかったし。レイナの安眠のために張った防音の結界まで壊されたから仕方ないことだとは思うけど。


「ちょっとその子任せるぞレイナ」


「え? うん、いいよ。任せて」


 ゼロは部屋の外に出ていった。それと同時にドタバタと大きな音をたて、宿のおばさん――シズネと、男達(多分見物人)が部屋の前にいるゼロを囲み


「な、なんだったんだい! ?さっきの音は!」


 シズネはゼロに掴みかかった。自分が経営している宿だ、そんなあんな音が宿から聞こえた、なんてなれば心配するのも当然か。でも、本当の事を言う訳にも行かないしここはとぼけておこうか。


「なんの事だ?」


「さっきあんたの部屋からすごい音なったじゃないか!」


「気の所為だろ」


「そんな訳―」


 シズネが言い切る前にゼロは口を挟んでシズネの言葉を切り捨てた。


「気の所為だ」


 ゼロの有無を言わさない雰囲気にシズネは渋々降りた。


「わ、分かったよ、でも次なんかやったら出てってもらうよ!」


「あぁ、分かったよ」


(何もやってないんだけどな、ほんとに)


 シズネは大きなため息をついたあとゼロを指差し忠告すると、下に降りていった。見物人達も一緒に(ゼロが睨んで強制的に)。ゼロは全員が降りたことを確認すると部屋の中へと戻って行った(結界を貼り直して)。


「レイナ、その子目を覚ましたか?」


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