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宿泊まり木

 広場に着いた。広場までの道に色んな出店があって、そこで遅めの昼食兼早めの夕食をとった。こういう出店の料理って高いけどついつい買ってしまうのは何故だろうか。目的である宿だが、空き部屋がある宿は見つからなかった。


「宿、見つからないね・・・・・・」


「満席ばっかりだな・・・? あれが門番の人が言ってた掲示板か、デカイな」


 縦五横七メートル程の掲示板だ。その隣には小さめの掲示板。そこにはこの街のお知らせ的な事が書いてるみたいだ。せっかく広場まで来たのでゼロは一応地図の確認をしておくことにした。別に明日でもいいが早いことに越したことはない。地図によるとこの先の道にも宿があるみたいなのでそこへ向かう。


「? あれじゃないか? 地図に描かれてた宿って」


 一軒の建物を見つけた。赤い屋根の三階建。木と煉瓦の丈夫そうな造りの建物で店の外には看板が立てられていた。看板にはこう書かれてある。



 ——宿 泊まり木


 空き部屋あり。貴方の疲れた翼を休めていきませんか?


 店長より



 よかった。ようやく泊まれる。


「ここにしようか、空き部屋もあるみたいだしな」


「早く入ろー、私もうくたくただよ」


 二人は両開きの扉を開けて宿の中へと入っていった。一階には酒場と食堂を足して二で割った様な雰囲気だった。中央にはカウンター。それを挟むように階段が上の階へと続いている。


「いらっしゃい、泊まりかい? それとも食事? 」


 カウンターにいた優しそうな雰囲気をもつふくよかなおばあさんが、ゼロに話しかけてきた。


「泊まりだ、とりあえず四日で頼む」


 ゼロはそう言うとポケットから金貨を一枚取りだしてカウンターに置く。


「部屋は二人部屋、釣りはいらない」


「あ、あんた!釣りはいらないって、これで何泊出来るか分かってんのかい!?」


 カウンターに書いてある文字には、一人一泊銀貨一枚と書いてある。銀貨は銅貨の百倍、金貨はその百倍、さらにその百倍に白金貨というものがある。ゼロが出したのは金貨一枚だがそれでもこの宿の値段なら一ヶ月は余裕だ。


 宿のおばさんが驚くのも無理はないだろう。二人は外見から冒険者だということは誰だって分かる。冒険者は金にがめつい、それも商人を次ぐ程に。そんな冒険者が金貨を出して釣りはいらないなんて言うはずないのだから。


 だが、ゼロはそんなことは気にもとめて無かった。


「そんなことはどうでもいいから、早く鍵をくれないか? 」


「わ、分かったよじゃあこれにサインを」


 女性はインク付きの羽ペンと宿帳をゼロに差し出した。ゼロは自分と妹の名前を書いた後、鍵を受け取る。鍵の番号は三一〇と書いていた。


「食事はどうするんだい? うちでは食事も取れるんだけど」


「あー、もう済ませてきたんだ、悪いな」


 ゼロはそう言うと、妹を連れ自分たちの部屋へと向かった。


 部屋は二人部屋にしては少し狭くベッド二つにクローゼットと机があるシンプルな造りだ。正面に設置された窓を開けると心地良い風が部屋全体に広がっていく。外を覗くと夕暮れの中を、手を繋ぎ楽しそうに歩いている親子の姿があった。


「・・・・・・いい街だな」


「おにーちゃん、おにーちゃん、このベットふかふかだよ〜♪ 」


 ベッドの上で足をパタパタさせるレイナ。それを見てゼロは少し笑みをこぼした。


「嬉しそうだな」


「うん♪ だってさ、昨日は外で寝たんだよ?」


「仕方ないだろ? 場所が場所だったんだから」


 ゼロは荷物をポイッと部屋にほおり投げて、刀を窓の近くの台にかけると、ベットへと倒れ込んだ。あ、凄いふかふかだ。安宿なのに。


「あー疲れた・・・・・・」


 ふかふかのベットが疲労した体を眠りへ誘う。まさかあんな所でドラゴンと戦闘する羽目になるとは思わなかった。やばい、眠い、でもダメだ、まだ寝るわけにいかない。ゼロは眠る前に、明日までに最低限やっておくことを考える。あれは部屋に入った時にすませたし、武器の手入れは・・・まだしてなかったな。ベットから出て刀を掴む。


「? おにーちゃんどうしたの・・・?」


 目が細くなって今にも寝てしまいそうなレイナ。


「刀、まだ手入れしてないからな、錆びるのはやだし」


 刀に目線をちらりと向ける。


「私・・・・・・手伝おうか?」


 レイナは体を起こそうとするが、ゼロはそれをとめた。眠たいのに手伝おうとしてくれるのは嬉しいが、自分の武器の手入れは自分でやらなければやらないことだ。手伝ってもらうわけにはいかない。それにレイナの眠りの邪魔をする訳にも行かない。


「いやいいよ、レイナはゆっくりしとけ、今日いっぱい歩いたから疲れたろ?」


「うん、分かった・・・・・・♪」


 ゼロは妹の頭を優しく撫でるとクローゼットの所に移動し座り込む。そこで、砥石を取り出し研ぎ始める。

 研ぐ時に必要な水は【水生成(クリエイトウォーター)】で、臭いは常時【浄化(プリフィケーション)】を発動させながら研いでいく。研ぎ終わると水気をハンカチでとり、刀を納め窓の台に立て掛ける。


「あ、そうだ、レイナ明日のことなんだけど・・・? レイナ? 寝てる・・・」


 ふかふかベットでレイナは気持ちよさそうに寝入っていた。余っ程疲れていたのか、熟睡だ。起こすのは可哀想なのでこのまま寝かしといてあげよう。それに、もっとレイナの寝顔見たい!! 目に焼き付けなければ・・・は? 眠気? そんなものレイナの寝顔の可愛さで吹っ飛んで行ったわ!


「・・・・・・はっ! 」


 レイナの寝顔を見ていたらいつの間にか真っ暗になっていた。窓を見ても人一人いない、寝静まった夜。


「俺も、そろそろ寝ようかな・・・」


 そう思った時だった。

 バキバキ、ドシャァァン――。

 大きな音が部屋中に鳴り響き、何かがダイナミックに入室してくる。


「っ!?」


「はにゃっ!? え? え? 何? 何があったの? 」


 音にびっくりしたレイナは飛び起き周りをキョロキョロと見渡した。何やら混乱している様子。かういう俺も驚いた。音にもそうだが、それよりもここまで接近されるまで全く認識すら出来なかったことにだ。ゼロは数百キロの距離から自分たちの方向に近寄ってくる攻撃や、(もの)は全て感知して対応出来るが、今回は感知すらできなかった。


 だが、そんなことは些細な問題だ。ゼロにとってはそんなことよりも、貼っていた防御結界を簡単に突破されたことの方が問題だった。

 この結界は物理・魔法攻撃の一切を封殺、たとえこの世界が無くなるくらいの大爆発が起きようとも傷一つ付くことの無いし、相手の敵意に反応し触れると問答無用で元素レベルに分解する術式を組み込んでいる。

 また、自分たちの知り合い、仲間以外は入れないようにもしてある。それをこんな簡単に壊されるなんてゼロは考えもしてなかった。

 レイナの方が結界の精度や、構成スピードは優れているとはいえ、ゼロの結界は決して弱い訳では無いのだから。


「おにーちゃん、今の音、何?」


「分からない、レイナ、俺から離れるなよ?」


 二人は落ちてきた何か近づいていく。雲で月が隠れ光が届かなく真っ暗なので、慎重にいつでも動けるように警戒して。そして、その何かの姿を目にした。


「なっ・・・」


「何・・・これ・・・」


 その何かは何の変哲もないただの少女だった。背中に生えた一対の翼と、異常な気配を除いては・・・・・・。

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