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零校代表の覇王道  作者: 保養坂白亜
1/1

1話 隠岐翔は代表生徒

初登校です。至らぬ所も有りますが、ぜひ読んでみてください。

 桜咲き誇る四月の頭。この春初めての暖かな風が吹く中。ここ、国立第零高等学校、通称「ゼロ校」では入学式が行われている。


「えー、校長の山本だ。まずは入学おめでとう。諸君らは厳しい入学試験を勝ち抜いた者達だ。これからは本校の生徒としての自覚と尊厳を持って行動して欲しい。校長先生の話だから皆長くなると思い込んでいるようだが、私は長ったるい話が嫌いでな。以上だ」


「(短い……)」


 その場にいる全生徒がそう思ったことだろう。


「校長先生ありがとうございました。それでは代表生の方お願いします」


 その声の後、俺はステージに上がった。やれやれ。


「はい。皆さんおはようございます。隠岐(おき) (かける)です。あ、言い忘れた。えーっと、暖かな風と豊かな桜に囲まれて、僕達生徒一同はここ第零高等学校に入学しました。満開の桜はまるで僕達を……あれ? 合ってるかな? なんか違う気がするなぁ。まぁ、とにかく、教職員の方、理事の方、事務の方、そして在校生の方々、どうぞよろしくお願い致します。以上を持って挨拶とさせていただきます」


 我ながら完璧だぁー。


「ありがとうございました。次は学年主任の――」


こうして、入学試験でちょっといい成績を残した俺は、代表生としてスピーチをし、華々しい高校デビューを遂げた。



 入学式を終えた一年生は、あらかじめ分けられていたクラスの教室へと案内された。AクラスからGクラスまでの七つのクラスがあり、校舎の一階に位置していた。俺は案内のまま、入口に一番近いAクラスの教室に入った。

 それぞれが指定の席に付いて、前を向く。そこで担任と思わしき先生が口を開いた。


「よし、まずは入学おめでとう。入学式でも言ったので知っているだろうが、このクラスの担任で、学年主任の如月(きさらぎ) 弥生(やよい)だ。これから1年間は嫌でも私のクラスだ。よろしくな」


 いい人そうで何よりだ。

 学年主任の挨拶聞いてなくてごめんね。


「では、多分お互いの事なんて知らないだろうから、自己紹介タイムといこうか。出席番号順に、名前と、趣味とかまぁざっくりと頼む」


 如月先生がそう言うと、一番右側の前の席の女の子がその場で立ち、教室全体を見渡せるように向き直った。


「じゃあ、私からだね。」


 自然とクラス中の視線がそこに行く。


秋川(あきかわ) 蓮花(れんか)です。中学の頃は剣道部に入っていました。趣味は……特に無いかな? これからよろしくお願いします」


 自己紹介は次々と進んでいき、十三番の俺のところまで来た。俺は右から二番目、前から六番目という席から、教室をなるべく見渡せるように左斜め前を向いて立ち上がった。

 その瞬間、クラスがザワつきだした。


「隠岐 翔です。中学校の頃は帰宅部に務めてました。高校では何かしたいです」


 クラスがどよめく。

「あれ? 案外普通だぞ?」「もっと変な人だと思ってた」

 などと言う声が聞えてくる。

 おかしいなーまだ入学したばかりなのに、何その偏見。


「次は僕の番かな?」


 その声と同時に、今度は俺の後ろに視線が集まった。

 透き通るような青色の髪の美少年は、辺りを見回して、口を開いた。


「僕の名前は、風月(かぜつき) 芽吹(めぶき)です。趣味は……料理とか、ゲームも好きです! これからよろしくお願いします!」


 そう言って、席に座った風月を、ポカーンと見ていたら、それに気付いた風月が

「よろしくね」

 と笑いかけてきた。口から八重歯が覗いている。何コレ変な気分。


「おぉ、よろしく」



 自己紹介もほとんど終わり、残すところ一人。長い黒髪が目立つ整った顔立ちの子である。

 あれ? あの子、どこかで見た覚えが……


夜桜(よざくら) 黒乃(くろの)です。趣味は読書です。よろしく」


 夜桜黒乃……どこかで聞いたような……。


「では、自己紹介終了だな。これから一年間、クラスメイトだ。仲良くしろよ。取り敢えず今日は終わりだ。授業開始は明後日だから、くれぐれも忘れない様に。それでは、全員、寮の紹介といこうか。副担任の水無月(みなづき)先生に案内してもらってくれ」


 この高校は、全寮制だ。


「副担任の水無月(みなづき) 慶子(けいこ)です。よろしくお願いします。今から皆さんを寮に案内するので、付いてきてください」



 教室棟を出て、校内の学生寮に着いた。きれいで、ホテルのような外観だ。それにしても、この高校広すぎないか?三分は歩いたぞ。


「さて、ここが学生寮です。既に皆さんに配っている生徒証には、この寮に入るパスとしての機能があります。駅の改札口みたいですね。ゲートが十個も設置されているので、混むってことはあんまり無いですね。それでは皆さん、生徒証は持ってますね?」

「あ、あのぉ〜」


 肩身が狭そうに、俺の後ろに付いてきた風月が手を少し立てた。


「何ですか? 風月君」

「生徒証、この寮に荷物と一緒に届けちゃって、今持って無いです……すいません」

「あ、そうですか。じゃあ、もう寮に届いていると思うので、取り敢えず風月君は私の後ろに付いてきてください。教員には、他の人も連れていける権限があるので。他の皆は各々ゲートを通って下さい。持っていれば勝手に感知されるので、ただ通るだけで良いですよ」


 皆が通り始めると、認証音らしきものが沢山なり始めた。よし、俺も行くか。

 おお、通れた。これなら、駅の改札っていうよりは、高速道路のインターチェンジみたいだな。



「皆さん通れましたね。それでは、寮の内部構造の説明をします。この寮は二十四階建てになっています。一階がロビーで、二階が食堂、みなさんの部屋は、十七階にあります。学校説明会の時に言ったと思いますが、二人一部屋となっています。では、部屋分けを発表します。とは言ってもほとんど出席番号順ですけど……この紙を皆に回して下さい。人数分刷ってきてるので、余りは出ないはずですよ」


 俺は左隣の人から、プリントの束を受け取り、そこから一枚取って、プリントの束を右隣の人に渡した。

 えーっと、どれどれ……


 女子

 1701 秋川 足立

 ――――

 1710 森下 夜桜

 男子

 ――――

 1713 上野 浮ノ瀬

 1714 隠岐

 1715 風月

 1716 岸本 桑原

 ――――      


「……」

 あれ? 二人一部屋じゃ無かった? なんで俺だけ一人なの?


「先生。なんで僕と隠岐くんだけ、一人なんですか?」


 俺の思考に呼応するかのように、風月が尋ねた。


「それはですね、学校の入学試験の最優秀の隠岐君は、特別に一人部屋なんですよね。そして、このクラスは男子二十人なので、次に成績の良かったあなたを一人部屋にしました」

「ああ、なるほど……」

「それでは、ルームキーを配ります。カードタイプのやつですね。部屋番号順に取りに来てください」



 全員分のルームキーが配られた。なんかやたらハイテクだな。


「では皆さんは自分の部屋に行ってください。荷物を届けた人は、部屋に直接とどいています。階段もありますけど、エレベーターで構いませんよ。では、私はこれまでで。今日は早めに寝て、明日遅刻しないようにしてくださいね。ちなみに、明日は8時に教室集合です。それより前に起きて、食堂で朝食を済ませて下さいね」


「(クラス全員で一斉に行っても大丈夫なエレベーターって、結構でかいな……)」

 そんなことを思いながら、エレベーターの方を見てみると、予想を超えた数のエレベーターがあった。十台だ。さすがに多すぎるとも思ったが、全校生徒九百人程が、朝一斉に出ていくのだから、当然かも知れない。

 数だけでなく、エレベーターの大きさも結構あり、30人乗りぐらいの大きさだ。

 エレベーターに乗って十七階に着くと、各々が自分の部屋に入って行った。俺は自分の部屋である1714の数字を目指して、歩く。

部屋の目の前まで来た時、隣の部屋で、自分と同じく一人部屋になった風月が話しかけてきた。


「お互い一人部屋だけど、嬉しい反面ちょっとだけ寂しいよね。」

「あ、ああ、そうだな。俺とか、初めプリント見た時は、いじめかと思った。」


 それを聞いて、風月は、クスッと笑って

「それじゃあ、また明日ね! 隠岐君!」

 と、満面の笑みを見せ、部屋に入って行った。


「俺も部屋を見るとするか」

 そう呟いて、俺はドアを開けた。と思ったら、鍵がかかっていた。ルームキー貰ったじゃん。馬鹿みたいだ。これは……動揺している……!?

 気を取り直すなりルームキーをかざして、ロックを解除し、ドアを開けた。

 部屋を入ってすぐにお風呂、洗面所、洗濯機、トイレなどがあり、その少し奥に、キッチンと冷蔵庫がある。キッチンまであるのか。そして、その奥に、ベッドが二つあり、その前にテレビまで置かれている。やっぱり二人用の間取りなんだろうな。そして、更に奥の窓際に、イスが二つ、テーブルを挟んで並んでいる。ほとんどホテルだな、これ。 

 足元にダンボール箱が一つ、俺が届けた荷物だな。箱の中身は何だろなクイズなどする必要も無く、俺はダンボール箱を開け、中身を取り出した。中身は本でした! って知ってたけどね!

 部屋の中を見渡し、あるものを探す……。


「あったあった」

 ベッドの横に本棚をみつけ、そこに本を綺麗にしまった。本の種類は様々だ。小説や、自分の好きな本を取り敢えず詰め込んである。

 さて、もうやることも無い。時計を見たら、六時を回っていた。夕食は、食堂で食べるとして、少し休んでから行くか……。

 奥側のベットで横になりスマートフォンを開き、時間を潰すことにした。



 部屋の外から、篭った、木の衝突音が二度した。

 誰かが部屋をノックした音だろう。時計を見ると、7時半丁度だった。急いでドアの手前まで行き、ノックの主を確認せず、ドアを開けた。

 そこには、風月がいた。


「どうしたんだ? こんな時間に」


 そう尋ねると、風月はほんの少し恥ずかしそうにしながら

「隠岐君夕食まだ?」

 と、尋ね返してきた。


「まだだけど、どうかしたのか?」

「えーっとね。カレー作りすぎちゃって、一人じゃ食べきれないから、食べるの手伝って欲しいかなー、なんて……」

「ぜひ御一緒しよう」


 丁度お腹も空いてきた頃合だ。仕方なく食べるのを手伝ってやろう。し、しかたなくなんだからねっ!



 風月の部屋は、やはり俺の部屋と同じ間取りで、入った瞬間カレーの匂いがして、食欲がそそられた。


「いや〜、隠岐君が食べてくれるって言ってくれて助かったよ。」

「そうか。それにしても、食材はどこから?」

「ああ、食堂にご飯食べに行ってみたらその隣に、食料品売り場みたいな所があったんだよね。それで、どうせなら、カレーでも作るか! みたいな?」

「風月は料理が好きなんだな」

「それなりにねっ」



 俺がテーブルで待ってると、風月がカレーを持って来てくれた。


「お口に合うといいなぁ」

「それじゃあ、いただきます」


 スプーンでカレーをすくい、口に入れる。


「……美味しい。美味しいよ」

「そう?良かった」


風月は嬉しそうだ。っていうか……

「美味しすぎる。今まで食べたカレーの中で一、二を争うのは間違いない」

「大袈裟だね……」


 大袈裟なんかじゃない、と反論したかったが、慌てて二口目を口に入れてしまい、その後も口が空くことが無かったので叶わなかった。



 カレーを一瞬でたべ、更におかわりしたものも、すぐに食べてしまった。


「本当に美味しかった。ありがとう。せめて皿洗いぐらい手伝うよ」

「大丈夫だよ」

「こっちはタダ飯食らってるだけなのに、何を遠慮しているんだ? いいから、皿洗い手伝うよ」

「ここ、食器洗い機あるから。」

「そっか。」


 来る前は、食べてやるか、なんて考えていた自分が恥ずかしい。とても申し訳ないね!



「それじゃあ、ごちそうさま、また明日。」

「うん。おやすみ!」


 自分の部屋に戻り、時計を確認すると、8時過ぎだ。取り敢えず風呂に入って、ベッドに寝転がった。


「今日は疲れたな……」



「隠岐君いらっしゃいますかー?」

「はーい」


 部屋の外から呼ばれて、俺はドアを開けた。

 ドアの外には、三十代程の女性が立っていた。


「荷物、届けたでしょ?今日以降に届いた荷物は、自分で取りに来ることになってるの。」

「はぁ。」


「(荷物なんて届けたっけ……?)」

 そう考えながら、一階のロビーに行き、段ボール箱三箱分荷物を受け取った。

 部屋に戻り、届け物を確認する。

 きちんと、届け先には自分の名前が書いてある。

 箱を開けると、そこには1通の手紙が入っていた。


 ~兄へ~

 忘れ物です。


 差出人は妹だった。

 ダンボール箱には、着替えや、家にいた頃使っていた目覚まし時計、歯ブラシなど、生活必需品や、体操着などが入っていた。

 なんでこんなもの忘れたの……俺……。

 完全に馬鹿だった。何しに来たんだ……。



 粗方収納を終え、寝巻に着替え、倒れ込むように、ベッドに寝た。

 体重がかかり、ベッドから少し(きし)むような音が聞こえる。

 俺はポケットからスマートフォンを取り出した。スマートフォンを起動して、眠くなるまで暇を潰そうと、青い鳥のアイコンを開いた。

感想を頂けたら幸いです。

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