激流
「葉山千尋、17才。学力としては平均。身体能力成長中。
人に頼まれると断れない性格のため、人助けをして放課後を過ごしている」
テラス席でコーヒーを飲み、机に置いた資料に目を通す
年齢として二十代半ばの女性だ
「彼で間違いない」
02
「すいません。ありがとうございました!」
「長財布を後ろのポケットなんかにいれてるからだよ。気をつけてね」
後ろのポケットに入れていた財布をスラれた男の人に礼を言われて交番から出る
全く、長財布はスラれないように鞄の中に入れておかないと
「また人助け?本当に好きなんですね」
交番から出て、駅に向かおうとしたら後ろから女性に声をかけられた
僕はこんな状況がトラウマがあるので確認を入れておく
「えっと僕の事ですか?」
「ええ。貴方で間違いないわよ」
こっちは知らないのに僕に声をかけてきたと思い込んで返事をしたら後ろにいるやつが目的の奴という状況
トラウマだ
この挙げた右手はどうすればいい
なんて事1年に1回は遭遇する
「貴方に助けてもらいたいの、葉山千尋くん」
「え゛っ!」
会った事ないよね
それとも僕が忘れてるだけ?
人を助けた時に名前なんか聞かれた事ないし、どっかで会ったとしか思えないけど…
「何処かでお会いしましたか?」
「無いわよ。元首都で働いてるって言えば分かるかしら?」
「元首都!あの都市伝説は本当だったんだ…」
僕が生まれる前
世界の主要都市に未確認の敵が攻めてきた
その圧倒的な戦力で人間は首都を放棄
新たな首都を作ったが、そこもすぐ破壊されると思っていた
しかし、やつらは未だに廃墟となった元首都を攻撃し続けている
それ以外は安全なのでもう各国は元首都を放棄して無干渉を決め込んでいる
それが学校で習った事
だけど都市伝説として聞いた事があった
その元首都で未確認相手に戦い続けている少数の人達がいる
「本当よ。取り敢えず心苦しいけど来てね」
「へ?」
手を引かれた
そこで意識が途切れた
03
「こ、こは…」
「気が付いた?さっきはごめんなさいね」
この人はさっきの女の人だ…
僕は、えっと…スリを捕まえて、この人に話しかけられて…
「あ!さっきなにしたんですか!いきなり意識なくなって!」
「麻酔よ。便利なものね。モスキートニードル。無痛の注射針なんか作るから簡単に眠らされたわ」
「な、人攫いですか!?返してください!」
麻酔で眠らされたという事を言われて、起きたばかりの事もあって混乱した
どういう状況か確認せずにこの人に掴みかかろうとしたが
「運・転・中。事故起こして死にたいの?」
言われて外を見れば車どころか人すらいるように見れない廃墟だった
「眠け覚ましとしては効果覿面のようね」
「…確かにいい景色ですね」
「私は天神川なお。君の上司になる人よ」
「…入るって言ってませんけど」
「国家命令。逆らえないわよね。これ、命令書」
天神川さんから紙が1枚渡された
そこには命令書と書かれており、配属先と僕の名前が書かれていた
YHVH本部パイロット隊
葉山千尋
「パイロットやるんですか?!この僕がぁ!?」
「そんな難しい事じゃないわ。それに貴方にしかできないのよ。パイロットは」
「でもっ!それにYHVHって神様の事じゃ」
「未確認が天使に見えたから、それに対抗するには神様しかいないでしょ?それに天使は空から来るのに神様が地上に埋まってるって洒落がきいてるでしょ」
そんな淡々と真顔で洒落とか怖い
こんなところで洒落とか頭おかしいんじゃないか
というかここに来るまで真顔で笑わない
それも怖い
着いたのか10階ぐらいのビルに入っていく
天神川さんは5台程止まっている駐車場の5番に車を止めた
「さて、着いたわ。早速貴方の乗るモノを見に行くから」
「その前に説明を!」
「機体の説明と一緒にするから。いいからついてきなさい」
このまま説明なしとかだったら
流石に怒るぞ
何十年前に放映した新劇場版:Qの主人公だってそうだったんだから
04
地下4階についた
しかしこれまでの区切りとは違うのか4階に入ってから長かった
機体を見に行くといっていたのでここにあるのかな
ならこの長さは納得できる
ドアが開くと大きな空間が広がっていた
機体を置いてあるなら格納庫みたいにメカメカしていると思っていたのだけど違った
遺跡のような感じだった
エレベーターから一直線に前に伸びた道しかなく周りは水で満たされていた
そして先は丸く膨らんでおり、その周りに巨大な石像が三体たっていた
「あの球体の中に人がいるからその人に説明してもらって」
「え、天神川さんは来ないんですか?」
「私は貴方を連れてきたって報告してくるわ」
そう言うと天神川さんは乗ってきたエレベーターで上へと登って行った
僕は言われた通り真ん中の球体を目指した
不気味な所だ
途中周りの水に触ってみたが冷たかった
夏とか泳げそうだな
球体に着いて中に入ると1人の人がパソコンと見た事ない機械を操作していた
「あの…すいません」
「ん?君は…」
スーツの上に白衣の人
それ以外に印象というのがない
男か女かも分からなかった
「葉山千尋…です」
「君かぁ…。成る程、山田りお。ここで研究員兼治療員をしている」
「はあ…あの1つよろしいですか?」
「ん?なにかな」
「山田さんは…男なんですか?女なんですか?」
「ふふ。見た通りだよ」
それが分からないから聞いている!
見た通りで分かるなら聞かない
けど、これ以上聞くと失礼に値するしここは我慢する
女性の方なら尚更失礼だ
「さて、説明するけどいいかな?」
「あ、はい」
「まず、君が選ばれた理由は…血だ」