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【昭和刀の斬れ味 8】

 さて、今回は少し趣を変えて、初心者の頃行なった昭和刀による巻き藁以外の仮標の異種斬りの経験を述べたせて頂きたいと思います。

 多分、試斬の猛者の多い昨今、土壇斬りを含めて、どの種類の仮標の試斬でも上級の方々が多数いらっしゃいます。

 刀剣観賞や刀剣の外装の勉強の傍ら、試し斬りを行った初歩の段階の失敗例と思って、熟達者の方は笑いながらお聞き下さい。


 良く大根を切るように人間を真二つにしたとか、大根のように手応えも無く斬れた。の様な表現が使われる場合があります。

 実際に初、二段の頃に昭和刀で大根を水平に斬った経験があります。残念ながら、見事、失敗でした。切断された大根の切り口を見ると、大根の上下の切り口の切断面が両方共にきれいな切断面だったケースが100%に達しませんでした。

 今考えると失敗の原因は、昭和刀の健全な重ねと刀のスピードの遅さにあったような気がします。当然ながら、大根以外の繊維質の多い他の野菜類でも同様で、腕の未熟を感じる場合が多かったので、ここ30年程は、斬っておりません。


 このように失敗例が多く、成功例の少ない大根等の植物の試斬ですが、全部失敗した訳ではありません。念の為。(笑い)

 反対に使用する刀が、昭和刀以外の研ぎ減った戦国時代の数打の末古刀や南北朝の重ねの薄い寸延び短刀では成功しております。家庭用の文化包丁でも上手に斬れた経験があります。

 腕達者の皆さんは、健全な昭和刀や長寸の現代刀で見事に成功されている方も多いと思いますので、折がありましたら、そのコツをお教え下さい。


 このように刀が接触する切断面の両面がきれいな断面にならないケースは、野菜よりも硬い真竹や孟宗竹の場合はもっと顕著で、充分に踏み込んで斬った袈裟でも上下どちらかの切断面が汚い状態になるのが私の場合一般的でした。

 竹林の中で地面に生えた竹を連続で斬る場面でも、意外に成功した回数は少なかった記憶があります。特に、竹林から切ってきて、数日経過した竹を斬ると例外なく、片側しか切断面が整っていないケースが殆どで、最悪の場合は斬った両面共に端がギザギザになってしまった例もありました。


 さて、植物以外の硬い物では5寸釘や薄い鉄板、やや厚目の銅板等に挑戦しました。斬り台の上に水平に置いた鉄や銅を試斬する場合、昭和刀を握っている安心感は最高です。傷のある古刀や新刀でこれらの硬い物を斬ったことも何度かありますが、もしも刃毀れや刃切れが生じたらと思うと心配でしたが、丈夫な昭和刀の場合、自信を持って向かい合えた気がします。

 斬れ味は何回も述べましたように個々の刀で差異がありますが、多くの昭和刀の中には強度的に安心して堅物試し用にお薦めできる刀も多くあります。一例を挙げると茨城県笠間の正兼刀匠の刀は、戦前製作の軍刀身と戦後作刀の双方で試してみましたが、驚嘆すべき強靱さを保有しており、常に刃こぼれも無く切断できた経験があります。


 同刀匠の地金は水戸の徳勝系統ですので、柾鍛えで斬れ味は少し不満がありましたが、戦時中に研磨したと思われるやや蛤刃の寝刃で、堅物を友人と共に何度も試させて貰いました。その間、5年程でしたが、刃先を一度も研磨すること無く過ごしましたが、特に問題は生じませんでした。


 金属等の硬い物を試す場合は、皆さんもそうでしょうが、巻き藁以上に周囲に気を遣った方が良いケースが多いです。特に、小さな形状の鉄片や銅板等の切断時には予想以上に遠くまで、飛ぶ場合がありますし、周囲に観客や見学者がいらっしゃるケースでは、要注意です。

 一度、試斬者は私ではありませんでしたが、昭和刀が試斬時に物打から折れて、10m近く飛ぶのを見たことがあります。刀が折れる音も聞こえませんでしたが、キラリと光る物体が飛ぶ姿にはひやりと致しました。


 最近は、ビールやジュースの缶もアルミ缶になって、斬っても余り面白くありませんが、

以前は、スチール缶も多く、飲み終わった缶に水をいれて、袈裟斬りの材料によく使いました。手応えも丁度良く刃筋を見るにも適当な大きさで都合が良いのですが、刀身の側面にヒケが無数について、刀が可哀想になり、自然にやらなくなった記憶があります。


 その他では、江戸期の白樫の槍の柄や木刀にチャレンジしてみたこともありました。両方とも意外と深く斬り込めないもので、映画やTVのように両断出来無い未熟さを感じております。

 樫や枇杷等の丈夫な木の上手な斬り方があればお教え下さい。


 また、台の上に置いた、堅物試しでは、昔は色々な物を試したようです。実際に試した

ことはありませんが、手元にある江戸初期位の尾張の透かし鍔に試し斬りの跡がある鍔があります。切り込み傷は4ヶ所あって、2ヶ所は古く江戸前半くらいに錆色から感じられますし、残りの2ヶ所の傷は、それよりも相当若く、幕末以降の感じのする傷です。

 どの傷も厚さ4mm強の鍔の表面に近い深さにしか斬り込んでおりません。正式に鍛錬して焼き入れした鍔の強度は予想以上に高いと感じました。


 その他の堅物としては、廃棄する脇差の刀身を台の上に横に置いて斬り込んで見た経験があります。予想以上に薄く細い傷しか付かない状態に腕の未熟さを感じたものです。刃に対する打撃でも昭和刀は丈夫で、古刀のように刃に捲れが出ることもなく、良く食い込みます。但し、焼き入れ温度が高いと思われる刀では試しませんでした。


 現在、試し斬りの材料に用いても良さそうな江戸中期から後期に掛けての駄鍔を数点持っているのですが、昔から土壇斬りに自信の無い小生がチャレンジする可能性は将来ともに低い気がしています。(笑い)


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