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【昭和刀の斬れ味 4】

 今回と次回は、少し前に戻るが昭和刀の中身の各種刀身の続きと軍刀外装を含めた拵えを中心に述べてみたい。


 昭和刀の刀身の概要は3回までにお話した通りだが、これは少ない例ではあるが、時に、明治大正期のサーベルの中身に近い、応永備前を短くしたような姿の良い、やや身幅の狭い昭和刀の中身に接する事がある。刀身は昭和初頭に明治大正期の作刀スタイルの流れで造られた物が多く、作者も幕末の新々刀期からの伝統を持つ一門の作刀が目立つ。月山一門や一貫斎一門の作など姿も良く、作風も多様で鑑賞面での完成度も高かった。研磨状態も上手の物が多く、斬れ味は全般的に良かった。特に片手抜き打ちの斬れ味の優れた刀が少数ではあったが存在した。欲を言えばもう少し身幅が広いと安心して水平が斬れる気が個人的には感じた。


 もちろん、軍刀の中身として古刀、新刀、新々刀も少なくなく、末古刀の関物や末備前、北國物や平高田の中上作や中位作も拝見したし、江戸新刀、大坂新刀の中堅所の刀身もあった。しかし、全般の印象として、明治期の高級サーベルの中身のような、太刀銘の時代の上がる古刀や新刀でも上位作には殆ど遭遇できなかった。それに、本稿の目的が昭和刀の斬れ味にあるので、古刀、新刀については、別の機会に譲りたい。


 保存されている昭和刀の外装に関しては多くの場合、白鞘や打刀拵えでは無く94式や98式、3式等の軍刀外装が付属している場合が多い。軍刀の半太刀式外装は野戦を想定して制定されている。けれどもの場合、個人的な意見ではあるが試斬用の刀の外装としては少しバランスが悪い。他の方々もそのように感じるのか江戸期の打刀拵で新規に外装を作成して使用されている。


 柄の長さを使用者の体格に合わせて決め、鍔を選択すると使用時の感触は相当程度改善する。もう少し、具体的に表現すると、例えば、2尺2寸(66.7cm)の刀身を身長175cmの人が使用するとして、柄の長さは一般論として、8寸から8寸3分(24.2~25.2cm)位になるでしょうか? 


 刀身に対して、若干柄が長く成りますが、使い勝手は軍刀の半太刀柄よりも大きく改善できると思います。しかしそれでも、皆さんのご意見として、「刀によっては新刀や新々刀の手持ちとはバランスの点で少し悪く、重く感じる時がある」、と聞く。古刀に比較すると格段に刀身その物のバランスも柄を握った時のバランスも悪い印象らしい。しかし、使い慣れると殆どバランスの多少の悪さは克服できたと聞く。


 何か、昭和刀の短所だけを挙げてしまった様だが、昭和刀は欠点だけでは無く長所も多数存在する。当時の中国戦線での実戦経験も加味されて制定されただけに野外等の試斬に向いているように感じる。現在の居合道愛好者が好む2尺5寸や6寸(75.8~78.8cm)の刀での試斬の場合、刀が長すぎて、斬った勢いが余って床や地面に切っ先が接触した経験を持つ方も多いと思うが、その点、2尺1寸~2尺2寸(63.7~66.7cm)前後の昭和刀では殆どその心配は無い。


 また、昭和刀の最大の特徴の一つとして、刀身の強靭性がある。個人的な感想で恐縮だが、多分平安時代から続く日本刀史上、最大の強靭性を持っているのが昭和刀ではないかと常々思っている。


 その為、まだ手の内が決まっていない刀身を良く曲げる初心者の場合、最適な刀と言っても良い。特に研ぎ減った古刀や初期新刀の場合、皮金も薄く、実によく曲がる。その点、陸軍の打撃試験を通過した軍刀は理想的な強度を持っている為、曲げることが得意な (笑い) 初心者の入門用刀剣としては理想的であろう。


 また、棟の重ねが相対的に厚い為、太めの巻き藁や竹の場合、刀の抜けが悪い点は【昭和刀の斬れ味1】でも述べたが、優秀な鋼で適度に鍛錬された優れた昭和刀の場合、そのような事は私見の範囲では無かった。


 確かに刀匠の技術レベルにもよるが鍛え過ぎの昭和刀や鍛錬不足の昭和刀の場合、刃味と共に斬った時の抜けが悪い刀が多いように感じる。この点に関しては、前回も述べたように、好ましい事ではないが、刀匠の作刀時点とは異なる棟の重ねの薄い形状に追加工した試斬刀を見る場合があるが、出来れば、刀匠本来の姿を大事にして欲しいものである。


 それに皆さんがご存知のように斬れ味は刀の形状だけでなく、材質や鍛錬の巧拙も大きく影響する為、昭和刀の場合、刀の形状を考慮して平肉を少なく研ぎ直したり、寝刃を合わせ直したりしても、残念な事に斬れ無い刀も相当数存在する。もし、このような刀の斬れ味が改善する修正方法をご存知の方が居られたら、是非、ご教示頂きたい。


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