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黒い神  作者: 小春日和
兄妹の邂逅
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シャーマンの能力 2

 持衰。古代にあった贄の習慣。シャーマン。シャーマンであった卑弥呼。卑弥呼の行った鬼道。いくつも浮かぶキーワードを、繰り返し繰り返し、少年は、少しずつ、噛み砕いて繋げていく。

「持衰の役割は、海の気候の変化に対応できなかった古代人が、信仰の力で、航海を無事に成功させようとした結果の惨事だった」

魏志倭人伝の持衰の項を、改めて思い出す。『その行来して海を渡り、中國にいたるには、恒に一人をして頭をくしけらせず、キシツ(シラミ)を去らせず、衣服コ汚し、肉を食わせず、婦人を近づけず、喪人の如くせしむ。これを名づけて持衰と為す。もし行く者吉善なれば、共にその生口・財物を顧し、若し疾病有り、暴害に遭わば便ち之を殺さんと欲す。その持衰謹まずといえばなり』。つまり、古代の日本人が中国に渡るときは、持衰という生贄を立て、禁欲を身に課した挙句、航海に何かあったなら厄役として葬る、ということだ。

 「魏志倭人伝に書かれた持衰はただの贄だけど、後の時代では、持衰はシャーマンとしての側面も持った……」

航海のたびに身の危険に晒される持衰の中には、自己の保身を願うあまり、航海を無事に乗り越える能力、つまり、天候を読み取る技を身につけていった者もいたはずだ。空気の湿り具合、雲の位置、満潮や干潮の作用。それらを組み合わせて時化(しけ)を読み、航海の日取りを計算する。

 持衰からもたらされた情報に則った航海が、ことごとく成功を収めたとしたら、持衰の地位は飛躍的に上がるに違いない。だから、特にそういう能力に秀でた存在が、『天候を読み取る=自然を操る』ことのできる『神と同一化した巫女(シャーマン)』として、人々から崇められていった経緯は容易に想像がつく。実際に、晴彦の知識の中にも、卑弥呼のような強大な力を持つシャーマンのルーツは持衰である、との認識があった。

「美耶ちゃんの中にいる持衰が、もしかしたら卑弥呼と同格ぐらいの能力を持ち得ていたとしたら……」

離れている相手に念の力で作用を及ぼすことぐらい、簡単なんじゃないだろうか……。


※晴彦が確信している『卑弥呼のような強大な力を持つシャーマンのルーツは持衰である』という認識は、K新書の書籍に書かれていたものをソースとしています。ただ、書籍の発行年度が古いので、wiki等で確認はしましたが、現代の歴史的認識とは異なっている場合があります。

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