表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

作者: 綴 詠士
掲載日:2026/02/10

 ああ、そうだ。

 

 管制室。目の前の画面で赤い炎を出し、轟音を立てて飛び立つロケットを見て、俺は確信した。

 

「お前は、夢をかなえたんだな」

 

 周囲の歓声を尻目に、あいつの夢をじっと目に焼き付けていた。


 ***


「私、宇宙飛行士になるんだ」

 

 二人での下校。赤い煉瓦が敷かれた歩道を歩く。少し冷えた空気に金木犀の香りがする。

 

 西宮が言った言葉を理解するのに時間がかかる。

 

「宇宙飛行士?」

 

 あまりにも突飛な話に面食らってしまった。

 

「冗談か?」

 

「本気だよ! 今まで宇宙の話散々したでしょ!」

 

「したし天文学者にでもなるのかとは思ったけど、まさか宇宙飛行士とは」

 

「何か文句でも?」

 

「ないない。すごい夢じゃんか。すげえな」

 

 素直に尊敬する。

 

 俺にはそんな夢も目標もないから。

 

 ただ毎日を過ごしているだけだ。学校に行き、友達と遊び、ゲームをして、宿題をこなし。常時平穏で変化なし。

 

「でしょ。だからどうすれば宇宙飛行士になれるか調べていろいろやってるんだよ」

 

「ふうん。勉強ができればなれるもんじゃなさそうだもんな」

 

「勉強はいるよ? だけどそれだけじゃダメなんだよね」


 それを聞いて西宮の英語の単語帳はボロボロになってたなとか、朝時々ランニングする西宮に会って、無理矢理走らされそうになったなと思い出す。

 

「ふうん。まあ、西宮の問題は予想外のことが起きた時にパニックになるくらいだもんな」

 

「……それはいいじゃん。偶にだし。皆そうなるでしょ?」

 

「それはそうだ。失礼しました」

 

「田島は何かないの?」

 

「え?」

 

 思わず高い声が出てしまう。

 

「何か、夢とか」

 

「……」

 

 考えるふりをする。腕を組んで空を見上げる。青空が見えるだけだ。

 

「ないな」

 

「ふーん。もったいない。田島勉強できるのに、進路も何も考えてないの?」

 

「まあな。別に進路はまだ先だろ。俺たち高校1年だぞ」

 

「だけど早めに決めた方がいいよ。そっちの方が早く準備できる」

 

「母親かよ」

 

「幼馴染だけど」

 

「知っとるわ」

 

 俺の言葉に西宮がクスりと笑うと、急に真面目な顔をする。 

 

「じゃあ一緒に宇宙飛行士にならない?」

 

「はあ?」

 

「いいじゃん。決まってないんでしょ?」

 

「いや、そこまで思い切れねえよ」

 

「えー? いいじゃん」

 

 二人でそんな話をして帰った日だった。

 

 ***


 管制室にて思わず過去を思い出していた。


 発射スイッチを押した指が少し熱い。

 

 宇宙飛行士じゃなく、こうしてあいつの夢をかなえる仕事をしていた。

 

 幼馴染。いや、妻が夢を叶える協力をずっとしてきた。

 

 それが今、報われた。





他の掌編、短編は作者ページへ。気に入ったらブクマ/評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ