『煙の異世界を往復』第6話アニーに再び会える
岩の国の森で、透き通るような姿のアニーと再会する
大輔は駆け寄り、その温度のない身体をそっと抱きしめた。
アニーを完全に戻す努力が始まります。
夜明けの空に、白い煙が細く立ち昇っていた。
その中心で、大輔は深く息を吸い込む。
胸の奥で、アニーの声が揺れていた。
『大輔……境が、開きかけているわ。来て――』
その囁きは、風に乗り、春の花の香りと溶け合っていた。
大輔は静かに目を閉じ、手にした金の種を掌で包む。
決意はすでに固まっている。
「アニー。今、行く」
火を灯し、煙が柔らかく渦を描いたその瞬間、
世界の輪郭が静かにゆがんだ。
白い花の光が脈打ち、煙の奥が深い金色へと変わっていく。
ふわり、と重力がほどけるような感覚。
大輔の身体は吸い込まれるように、境界の向こうへ消えた。
* * *
気づくと、そこは懐かしい香りの満ちた森だった。
岩の国の空は薄い金の膜を透かしたように柔らかい。
遠くで滝の音が響き、鳥たちがさえずる。
「……戻ってきたのか」
呟いた声は震えていた。
森の小道を歩くと、光の粒が風に舞い、その中心に――
「大輔……!」
アニーが立っていた。
以前よりも透き通った姿。
身体はまだ完全ではなく、光の中に線のように形が浮かんでいる。
「アニー!」
大輔は駆け寄り、その温度のない身体をそっと抱きしめた。
「あなたが煙を繋いでくれたの。境界がまた呼んだわ。
……ありがとう、大輔」
「もう離さない。必ず、君を完全に戻す」
アニーは微笑み、彼の胸に顔を寄せた。
その仕草だけで大輔の心は満たされた。
* * *
数日後、 大輔の帰還はすぐ広まり、
村人たちは「女神の煙使いが戻った」と口々に喜んだ。
短いが穏やかな時間だった。
アニーの身体は日に日に輪郭を取り戻し、
金の種の煙を浴びるたび、少しずつ温もりが増していった。
「また二人で現世界にも行けるように……
もう少し研究してみるよ」
「ふふ。あなたらしいわね。楽しみにしてる」
手を繋ぎ、笑う時間が続いた――
その「終わり」が、突然訪れるまでは。
大輔が再び境界を越え、アニーと再会する回です。
白い花と金の種がつなぐ「煙の道」が、物語の大きな転換点になりました。
アニーはまだ完全な身体を持っていませんが、
彼女が少しずつ輪郭を取り戻していく描写は、
大輔の想いと煙の力が共鳴している象徴のように書いています。
短いながらも温かい時間――
しかし、その裏で次の大きな波が静かに動き始めます。




