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テイル❖ストーリー

4 次世代お掃除ロボット

作者: 神海みなも

 朝八時、今日も定時通りに彼女は屋敷の掃除を始める。彼女はホットケーキのような丸い金属性の身体を、壁やドアにぶつけながらせっせと掃除に励んだ。


 まずはじめに掃除するのは、この屋敷の主であるマスターの部屋からだ。彼女はドアの下部に設けられた彼女専用の扉から室内に入る。そして部屋の奥から順に埃を吸い込んでいった。


 彼女は次世代型という事もあり、おしゃべりすることができる機能を搭載している。もちろんマスターには朝の挨拶を丁寧な口調で、まるで人のように声をかける。彼女自身もお話が好きなご様子。


「マスター、朝でございます。今日も良いお天気ですね。私も仕事に精が出ますよ」

 彼女はそう一言いうと次の部屋へと向かった。


 次はマスターの娘と息子、双子の部屋だった。また彼女はドアの下をくぐり奥から手前へと埃を吸い込んでいく。彼女は二人にも声をかける。


「ほらほら、お二人とも早く準備をなさらないと、学校に遅刻なされますよ」


 彼女はそう一言うと部屋を後にした。


 次の部屋は夫人の部屋。また彼女は他の部屋と同じように掃除していく。彼女は夫人と話が合うようで、いつも二人テラスで話しに花を咲かせる。けれど最近彼女は話しかけてもらえないことに少し不満を持っていた。


「おはようございます、奥様。今日もいつものテラスでお待ちしておりますので、よろしければお声をお掛けください」


 彼女はただそう言うと部屋を後にした。


 そのあと彼女は順に全ての部屋を掃除していく。家政婦や執事、コックの部屋からキッチン、玄関ホールや使われていない部屋まで塵ひとつなくなるまで掃除した。


 午後二時を迎えようとした頃、彼女はほとんどの部屋の掃除を終えていた。後は大浴場や中庭が残っているが、休憩するために二階にあるテラスへと足を運ぶ。


 彼女の上部にはソーラーパネルが埋め込めてあり、太陽光で充電する。電池やコンセントからの充電は不要で、事実上壊れない限り、半永久的に働き続けることができるのだ。もちろんこの屋敷のマスターの特注で、世界に二つとない代物だ。


 なので彼女はいつも充電がなくなりそうになるとこのテラスにやって来ては、夫人とおしゃべりしていたのだった。しかしいつからか夫人はこのテラスを訪れることはなくなっていた。


 彼女は夫人が来ないことを確認すると、昔夫人に教えてもらった歌を、いつものように口ずさむ。そしてまた屋敷の掃除へと向かった。


 日が傾き、彼女は自分の部屋へと向かう。今日一日を振り返り、もっと効率よく掃除するにはどうすればいいのかと試行錯誤する彼女。自分の部屋へと戻り彼女は眠りについた。


 まぶしい光に包まれて目を覚ます彼女。良い天気だわ、とつぶやく彼女。


 今日もいつものように彼女はマスターの部屋を訪れる。


 そう、いつものように、マスターへ声をかけるために。


「マスター、朝でございます。今日も良いお天気ですね。私も仕事に精が出ますよ」


 一家が亡くなってから、今日でちょうど十年が経とうとしていた。

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