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クリスマスまでまだ半年

作者: しろかえで

今日は黒姉を真似たお仕事小説?でもあります。


もちろん安全安心!!(*^^)v




 園田真帆さんは商業高校からの入社で、同期の中では一番年下だった。


 腰の辺りまであるサラサラの黒髪で静かに微笑むその姿はまさに2.5次元レベルで……

 新人研修の時には同期の男共は競って彼女と絡みたがったし、オレもその一人だった。


 でも、彼女と一緒だったのはその研修の数日のみ!

 彼女は本社の経理部に配属、オレは “棲む世界”がまったく違う地方の営業所勤務となった。


 園田さんは“本社人事部に配属となった竹下”から猛アプローチを受けて付き合い始めたとか、その竹下の音頭取りで彼女の成人式のお祝いを同期の有志で行ったとかの“風の噂”が聞こえて来たけれど、オレは勿論、その“有志”の中に入る事も無く……

 三年経った今でも営業所では一番の下っ端で……仕事に於いても、寮(営業所の入っている商業団地の一角に何棟かある従業員向けの団地の1フロアを会社が借りあげている)の中でも“追い回し”をさせられている感じだ。

 他の同期の奴らの名前はどんどん目にする様になっているのに……オレは持たされる数字も小さいし“御用聞き”みたいな仕事ばかり! 

 久しぶりに()()()()、大学のサークル仲間と飲んだ時にこの事をつい愚痴ってしまったら「拓海!お前、“第二新卒”が通る内に転職した方がいいぞ」と言われた。

 そんな矢先に所長から呼ばれ

「欠員の穴埋めで支社へ行け!」とのお達しがあった。



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 一般職として採用された私だけど、支社への転勤を打診された。


 家から離れるなんて考えもしなかったから戸惑った。

 帰って両親に話したら二人共いい顔はしなかった。

 まあ、私はまだ二十歳そこそこの“世間知らず”の女子だし、一人暮らしさせるのが心配と言うのがその理由だったけど……去年、お兄ちゃんが結婚して独立したので、私まで居なくなるのが寂しいと言う事もあるのだろう。


「やっぱりお断りすべきかなあ」と思い始めていたら……


 お母さんからこの話を聞いたお兄ちゃんが日曜日に家に来て、意見を言ってくれた。


「これは“総合職並みに”真帆が評価された結果だから、受けるべきだ!幸い、転勤先の支社はオレの家から近いから、真帆を近くに住まわせればオレと綾乃でフォローする!」


 その翌週、私は綾乃義姉さんと連れだって物件巡りをし、兄夫婦の住まいの近くにある賃貸マンションに住む事となった。



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 営業所に居る時、自分は“小さな数字の追い回し仕事”すら十分に出来ていないと思っていた。

 でも支社に来て……

 ()()()()()()退社した2期上の先輩の後を、指導も説明もろくに受けられず引き継いだのだけど、自分でもびっくりする程、うまくこなせた。


 勿論、運やタイミングによるところも多いと思う。

 でも、何より大きいのは、あの営業所の三年間、上司や先輩から、時には小突かれながら受けた指導のお陰だ!


 どんな案件でも“芯”があって、その芯を掴むのは上っ面だけでは及ばない。

 それを見極め、モノにするだけの人間力と言うか胆力が必要なんだ!



「『佐々木拓海は18期生の隠れた逸材』って噂を聞いて、オレは耳を疑ったけどよ!まあ、上手くやりな! でないとお前の抜けた穴を埋める甲斐がないからな!」


 支社で久し振りにお目にかかった所長に、自販機のコーヒーをご馳走になりながら掛けて貰った言葉……


「それに応える為にも!」と、気合を入れた朝のプラットフォームで偶然、園田さんに出会った。



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「そう言えば同期の佐々木も今度支社移動だってよ! これで()()()()()()()()()()完全に脱落だろうな」


 最後の“寝物語”の時、自分が今度、人事部で主任になる事を鼻に掛けながら吐き捨てた隼人の言葉は……私に、“同じ様にカレから掃き捨てられた”と感じさせた。


 だから正直、佐々木くんの顔も思い出さなかった。


 ところが支社へ初出勤の朝、電車へ乗り降りする人々が流れるホームの上で……


 バカみたいに

「よしっ!」

 と気合を入れる背中は

 全然違うはずなのに……お兄ちゃんに似た雰囲気があった。


「ひょっとして……綾乃義姉さんはこんな背中に惹かれたのかしら??」


 背中から目を離せず、なんだかとんでもない想像までしてしまった私と、振り返ったその人と目が合った!


「あれっ?! 佐々木……くん?」



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 三年ぶりに会った園田さんの顔は、やっぱり大人びていた。


 髪は少し短くなり背中に掛かる位で色も明るくなっていたけど、サラサラなのは変わらない。


 昔の淡い恋心が

 思い出される。


 でもきっと、竹下と!!

 これからの“プチ遠距離恋愛”を楽しむんだろうなあ~


 だから変な期待や下心は持っちゃいけないんだ!


 そう心に決めて!

 でも目を逸らせちゃ失礼だからと

 たぶん引きつった笑いで

「ご無沙汰!」って声を掛けたら……

 本当に思いの外、園田さんの顔がパアーッ!と輝いたので

 オレはかなり面食らった。



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 初出勤の朝、偶然ホームで出会ってから、


 何となく会社までの道のりをカレと並んで歩く様になった。


 ホントは……


『何となく』なんかじゃない。


 ワザとなんだ!


 その“心”の意味を確かめたくて……

『背中の件』を綾乃義姉さんに聞いてみた。


 綾乃義姉さんは

「うふふ! 真帆ちゃんの想像通りだけど……そんな事の前に、真帆ちゃんの顔が“リトマス試験紙”になってる!ドンドン赤く染まってるよ!」

 とまで言われてしまったから……


 私って!実は恐ろしく心変わりが早い女のかもしれないけど……

 隼人の事なんか、すっかりどこかへ行っちゃって……


 歩きながら交わす“さもない”話の中に、色んな()()()()()()、もうすぐ来る私の誕生日をさり気なく教えたりしている。



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 他に人が来ないのを見計らって真帆さんにプレゼントの『フランス産 ドラジェ アソートボックス』を手渡した。


 そのお昼、商談が終わって次へ向かう途中の駅のホームの立ち食いそば屋で、ざるそばと天丼のセットを搔っ込んでいると、真帆さんからメッセが入った。


「誕生日プレゼント、本当にありがとう!私もお返しをしたいから誕生日を教えて!」

 なんて嬉しいメッセが来たので「1月21日」と返したら


「じゃあ、クリスマスが先だね!」って返信が来て……


 オレはエビの尻尾を咥えたままガッツポーズをした!!



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 今日は社食一人ご飯!


 だって、嬉し過ぎるから!!


 ドキドキしながらメッセ出したけど……

 クリスマスまでまだ半年もある!!


 そんなに悠長な事はしてられない!!


 どうしよ?!

 どうしよ?!


 私、一人でおたおたして……


 う~ん!う~ん!って唸りながらまた書いた


『あと、せっかくだから!いただいたこのお菓子、私のウチで一緒に食べよ! ネットで買って日曜日に届いたエスプレッソマシンの自慢もしたいから!』ってメッセを……

 今、「エイッ!!」と送った。




                         おしまい






うふふふ


可愛いでしょ?!


だって、しろかえでですもの!(笑)



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