結婚式とその後 フランSide
人口300万の小国に過ぎない我が国が、2000万人も抱えるジークベインリードハルトと、800万のスルエラと肩を並べ、スルエラに関しては完全に追い抜き、海上の覇権争いを制したと言われる女王陛下の勢いを結婚式は現しているようだ。この春の祝い事に、諸外国からの王族が大聖堂に一堂に会していた。
私の見つめる先には、愛しいジョージ王子が待っている。予知した通りのウェディングドレスを身に纏い、天井のステンドグラスに光が降りそそいで光の中を進んでいるような錯覚に陥りながら、私は歩いて行った。
参列席から、父と母、弟二人も微笑みを浮かべて私を見守ってくれていた。
「汝、病める時も健やかなる時も……」
私は「イエス」とだけ答えた。気づくとジョージ王子の温かい唇が私の唇に重なっていた。胸が震えた。ようやく結婚式を挙げられたのだ。しかも、これほどの来賓が集まり、皆に祝ってもらえるなんて夢のようだった。
「僕が王子だと知っていても、僕のことを愛したの、フラン?」
ジョージ王子がそっと私にささやき、私は頬を赤く染めて「イエス」とささやき返した。もう一度、ジョージ王子が私に口付けをした。綺麗に撫で付けられたブロンドの髪がいつもと違ってますます凛々しく見えて、いつにも増して私の心はときめいた。
信じられないほどの幸運だ。愛する人に愛されるのは、奇跡に近い。婚約者に騙されて、領地も森も奪われ、母も誘拐されたはずの私が、紆余曲折を経て、我が国の世継ぎの花嫁となるなんて、誰にも信じられない未来だろう。
私は震える手でジョージ王子の手を握った。ジョージ王子はしっかりと握り返してくれた。私たちが大聖堂の外に歩いて出ると、祝福の花びらが空高く舞ってふわりと降り注いできた。大歓声が起きて、詰めかけた人々が祝福してくれていた。私は涙が溢れた。
結婚パレードとして、金を使った紋様が掘り込まれた王家の馬車に乗って大通りを行進した。沿道に詰めかけた皆が笑顔だった。私は嬉しくて嬉しくてずっと手を振り続けていた。
フォーチェスター城に戻ると、私は世継ぎの花嫁であるフラン妃になっていた。
祝賀会も見事なものだった。フォーチェスター城のシェフはとても腕が良い。特筆すべき素晴らしい食事だった。ジークベインリードハルトのラファエル殿下とロザーラ妃に会ったことしか覚えていない。二人とも若く美しかった。次から次に挨拶をかわしたが、来賓の方々の華やかさと豪華さと数が私の限界を超えていたのだ。
信じられないほどの幸運だ。愛する人に愛されるのは、奇跡に近い。婚約者に騙されて、領地も森も奪われ、母も誘拐されたはずの私が、紆余曲折を経て、我が国の世継ぎの花嫁となるなんて、誰にも信じられない未来だろう。
私は震える手でジョージ王子の手を握った。ジョージ王子はしっかりと握り返してくれた。私たちが大聖堂の外に歩いて出ると、祝福の花びらが空高く舞ってふわりと降り注いできた。大歓声が起きて、詰めかけた人々が祝福してくれていた。私は涙が溢れた。
結婚パレードとして、金を使った紋様が掘り込まれた王家の馬車に乗って大通りを行進した。沿道に詰めかけた皆が笑顔だった。私は嬉しくて嬉しくてずっと手を振り続けていた。
フォーチェスター城に戻ると、私は世継ぎの花嫁であるフラン妃になっていた。
祝賀会も見事なものだった。フォーチェスター城のシェフはとても腕が良い。特筆すべき素晴らしい食事だった。ジークベインリードハルトのラファエル殿下とロザーラ妃に会ったことしか覚えていない。二人とも若く美しかった。次から次に挨拶をかわしたが、来賓の方々の華やかさと豪華さと数が私の限界を超えていたのだ。
正直に言うと、私の頭の中は待ちにまった今夜の初夜のことで頭がいっぱいだった。期待と不安でどうにかなりそうだった。
私たちは婚約してから2年も待たされたのだ。ジョージ王子は私のことを切なそうに時折見つめるものの、ずっと我慢してくれていた。
フラン妃になった今は、一転して世継ぎを求められる。この国の存続に直結する問題だから。
私はプレッシャーと喜びと不安で食事がまともに喉を通らなかった。
祝いの食事が終わると、ジョージ王子は私の手を引いて寝室に直行した。
「ジョージ王子、待った方がいいわ。手順が決まっているのよ」
私がささやくのも構わずに「君を抱きしめたいんだ、今すぐに」と煌めく瞳で見つめられると、私も夢見心地になり、それ以上は抵抗できずに寝室に二人で入ったのだ。
彼が私の首筋にキスを落とし、抱きしめられた瞬間に感じたことのない感覚に身悶えした。
――もう、止まれないわ……私自身がジョージと一つになりたくて仕方ないわ。
「脱ごうか……」
ジョージ王子は私の宝石が散りばめられたウェディングドレスを脱がせようとし始めたが、このドレスは簡単には脱げない。
――だめ……ベスに手伝ってもらわないと……。
私がベッドサイドの呼び鈴を押してベスに来てもらうわとジョージ王子に説明していると、ソファの隅からいるはずのない人物が姿を現した。私たちは完全に硬直した。
「あの……」
ベスは泣きながらソファの陰から立ち上がっていた。
その瞬間、私たちは驚きのあまりに動きを止めていた。恥ずかしさとバツの悪さが混ざりあい、涙を溜めた若い新米侍女ベスの様子に、私は心を痛めた。
「王子、いかがなされました!?」
部屋に飛び込んできたウォルター・ローダン卿も驚いた様子だった。
「あの……ベッド周りのお支度をしておりまして、先に入浴の順番だと思ったものですから、お二人はまだいらっしゃらないかと思いまして……」
ベスは泣きながら説明した。
「いいのよ。私たちの気持ちが焦りすぎたのよ」
私はベスを抱きしめた。ベスは悪くない。
「ジョージ王子、皆が考えた手順通りにやりましょう。これだけ待たされたのですから、今日は素晴らしい夜にしましょう」
私はジョージ王子にキスをした。
ベスが涙を拭いて、私にひざまずき「浴室の準備は整っております」と告げた。
「一緒に入る?フラン?」
青い瞳を輝かせてジョージ王子がささやいてきたが、私はジョージ王子の唇を人差し指でそっと押さえて、「シーっ!」と合図をした。
皆が手筈を整えた順番でやろう。先ほど抱きしめられた感覚が残っていて、私の下腹部が疼く。私も準備万端なのだ。
今夜は初夜だ。
成功させるのだ。窓の外に見える薔薇の花が、私の心を浮き立たせた。いよいよだ。




