表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/19

第2話 ライズ・オブ・エンカウンター(2)

 カタパルトから勢いよく射出されたマキナ。脚部を固定していたロックボルトが火花を散らせて解除される。虚空へと飛び立ったマキナを弥生は必死に制御する。


「姿勢制御……よし!」


 ふと弥生が見上げると、そこには宇宙を覆い隠すほどのルスル。三十程度ではない、五十、七十ほどだ。しかし、真ん中の五機以外、すべて射撃型だ。


 射撃型とはルスルの中でも一番小さく、数の多い種類だ。十字型の形をしており、大きさは二メートルほどしかない。だが、装甲は硬く、対空ミサイル程度では歯が立たない。十字型の中央部にある赤い発光球体が、圧縮レーザー砲の発射口であり、コアと呼ばれる存在だ。これを破壊すればルスルの動きは止まる。


 それが弥生の視界を灰色に染めていたのだ。そして大群の中心部にいるのが指令型だ。指令型はマキナと同じぐらいの大きさで、腕部と脚部が無く、背面部に巨大な羽がある。それはまるで不死鳥のような形であった。だが、それは死ぬ。不死身ではない。ただ、周囲に発生する粒子バリアは厄介だとヨムナは言っていた。コアの横にある耳のような箇所からレーザーを放つ。


 弥生は写真で見たことのあるが、実際に見るのは初めてだった。その造型は奇怪な形をしていたが、それと同時に彫刻のように美しかった。初めて見た敵は美しかったのだ……。


挿絵(By みてみん)


「これが……ルスル……はッ!」


 射撃型が一斉に圧縮レーザーを放ってきた。視界が無数の紅の閃光に包まれる。弥生は右操縦桿を引き、左右ステップを交互に踏みつけ、背面スラスターを展開。左脚部バーニアを吹かして先行のレーザーを回避。しかし、ホーミング力のあるレーザーだったため、半数は旋回してマキナを後方から攻めようとする。


 弥生は右ステップを踏みつけ、ブレーキペダルを押す。右に旋回したマキナはレーザーとの速度差を利用し、レーザーの捕捉可能範囲から離脱した。瞬間、後攻のレーザー群がマキナに向かってくる。


 左旋回、そして縦に百九十度回転。迫り来るレーザー網の隙間を掻い潜り、付近にあった気象観測衛星を影に隠れる。気象観測衛星はレーザーに貫かれて爆発。黒煙がマキナを覆う。


「いまッ!」


 弥生の目の前に現れるミサイル捕捉立体モニター。マキナと精神的にシンクロしている弥生は、脳波イメージのみで五十機の射撃型を一度に捕捉。1、2、3、ロックオン。


 脚部ミサイルポッドが全展開。右トリガーに力を入れる。誤差修正完了。0、912度調整……。


 弥生の眼光は次々と射撃型を捉えてゆく。七十八機、すべてロックオン完了。後方の指揮型の粒子バリア展開を想定しても、五十機は狙える。そして、弥生は操縦桿の両トリガーを引く。


「消えてッ!」


 脚部ミサイルポッドから発射される無数の小型ホーミングミサイル。それは射撃型のコアめがけて蒼色の鮮やかな弾道を描いてゆく。射撃型もレーザーを撃ってくる。しかし、弥生の脳波調整を受けた小型ホーミングミサイルは、細かな角度調整を行い、それを回避して射撃型は次々と紅蓮の焔に包まれていった。


 広がる紅煙。四散する残骸。黒煙に包まれていたマキナが緑色の眼光とともに、姿を現す。緑色の粒子を関節部から放出させて、脚部バーニアを吹かせて、背面スラスターを展開。


「あと五機ッ!」




 同時刻、フラガラッハのブリッジは驚きと一抹の不安に包まれていた。薄暗いブリッジ内に光る電子機器とモニターのバックライト。ヨムナはその前方に座っていた。その隣には皐月。


 ヨムナは頭につけているヘッドホンを付けなおして、マキナの予備制御を行う。電子音の中、中央部にて指示を出しているのは幸蔵だ。その隣にいるのがドレイク。


「シュミレーションにはリアリティが足りなかったようね……もちろん、いい意味でね」


 ヨムナは呟く。一瞬にして七十八機もの射撃型を撃破するなどシュミレーションでは不可能な操作だったのだ。つまり、それほどマキナのロックオン能力が高かったということだ。


「マキナ……機械仕掛けの神……まさに、その通りね」




 マキナは指揮型の圧縮レーザーを抜けて、一機の指揮型の前方に現れた。そしてマキナは両腕の刀を展開。そして、緑色の粒子を圧縮したビーム刀を発生させて、指揮型を脳天から一刀両断。


 左右対称に両断された指揮型は暫く、動かなくなるとコアが膨張し爆発。黒煙とともに鮮血らしきものが飛び散る。機械的なフォルムから噴出す鮮血は不気味だった。機械が血を流しているようで。


 怖い……怖いよ……助けて。


 マキナは圧縮レーザーをマシンガン状にして連射してくる指揮型の周りを飛翔。レーザーはマキナの速度を捉えきれず、寸前で機体を逃す。弥生は右操縦桿の第二トリガーを展開。そして引いた。


 マキナの頭部三十八ミリバルカン砲が火を噴く。バルカンは指揮型のコアを砕きつくした。そして、指揮型は沈黙。膨張するコアも、粉々になっており爆発もしない。


「死にたくない……だからァッ!」


 マキナは二機の指揮型をロックオンサイトに入れる。そして、再度ミサイルポッドを展開。細かな調整を行わず、ミサイルを放つ。ミサイルの残り弾数は0になった。ミサイルは指揮型の前にて爆発。紅煙によって視界が遮られたようだ。


 ねぇ、誰か……助けて。


 すかさず、マキナは指揮型の懐に入り込み、両腕のビーム刀で左右の翼を切り落とす。またしても噴き出る鮮血に対して、不愉快な気持ちを抑えられなくなった弥生は咆哮。


「くるなァァァァァッ! バケモノ!」


 頭部三十八ミリバルカン砲が零距離で指揮型のコアに炸裂。膨張して噴出す鮮血を振り払い、マキナは右隣にいる指揮型にビーム刀を突き立てる。そして、横に両断。蹴り飛ばして、マキナは再度突貫。ビーム刀は指揮型のコアを両断した。


「最後……これで最後……最後……もう大丈夫……大丈夫」


 弥生は左右ステップを交互に踏みつけて、サイドレバーを引く。マキナは左右に敵のレーザーを回避しながら突撃。指揮型の取り付いたところで、ビーム刀で指揮型を縦に両断。爆発。噴き出る鮮血。


「終わった……でも……頭が」


 浮かぶ鮮血の玉。弥生の瞳はそれを最後にフェードインした。次第に感覚もなくなっていき、自分の意識が無くなりそうだということに気がついたのは、暫くしてからだった。その頃には、既に意識は無くなりかけていたのだが。


 弥生が気を失ったのを確認すると、メインコンピューターはセミオートモードから、自動帰還モードに切り替えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ