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第5話 エターナル・アライヴ・ガールズ(3)

「マステマ展開ッ!」


 弥生は操縦桿を前方に倒してマキナに回避行動をさせる。それと同時にマステマが展開。ビットは蒼い流星をなり、射撃型を次々と撃墜させてゆく。マキナは脚部バーニアを前方に吹かして、後方から来るレーザーを回避。そして、左手のビーム刀を展開して、巨大な剣を一点集中的に発生させた粒子で形作り、後方にいた指揮型三十七機と射撃型百八十七機を衝撃波とともに宇宙の塵と化させた。


 マキナの前方には約十万体ものルスルがいる。この数なら、なんとかマキナ一機で相手できそうだ。脚部バーニアを吹かして、ルスルの赤い眼光で紅に染まった宇宙空間に突っ込んでいった。その向こう側に太陽……そして、アルカディアスがある。太陽から発せられたプロミネンスがマキナを覆う。一瞬だけ暑くなったコックピット。二千三百枚もの耐熱装甲板に覆われていても、これほど発熱するとは弥生も驚いた。しかし、今はそれどころではない。


 前方から迫ってくる無数の赤いレーザー。回避することは困難と見た弥生は、マキナの両手を展開させて粒子を一点に集めさせた。そして、密度を濃くした粒子を前方に展開。赤いレーザーはマキナの発生させた粒子の壁を通り抜けられずに、四散してゆく。


「よし……やっぱりできたんだ、フレアドライヴの応用技!」


 マキナは脚部ミサイルポッドを展開。ロックオンサイトに無数の敵を入れる。そして、放たれたミサイルは敵の大群に、炎の矢となり鮮やかな弾道を描きながら消えてゆく。暫くして、弥生の視界が紅蓮に染まった。それを見た弥生はマキナのバーニアを吹かして前進を始めた。


「今がエリアF……少なくともエリアHまでは道を開けないと! ……高速で接近する敵!? この姿は……マキナ?」


 マステマで周囲を一掃したマキナの前に、謎のルスルが現れた。それは人の形……機械的な外観をしながらも、マキナのようなスマートな体形をしていた。青く光る各部の関節。頭部の角は青いブレードとなっており、両手は機体の半分以上を占める巨大な剣となっている。胸部の突き出したデザインに脚部の鋭い形状。


 謎のルスルは周囲にいたルスルを振り払い、一機のみでマキナに迫ってきた。一対一の勝負を望んでいるようにも見えた。その姿、まるで騎士。騎士型と呼称することに、弥生は決めた。


挿絵(By みてみん)


「騎士らしい……そうなの? ……くるッ!」


 騎士型はマキナに接近し、両手の剣を振り上げた。弥生左足のバーニアを展開して、緊急回避するが、その分体勢が崩れてしまった。その隙を狙って、騎士型が突貫。瞬間的に間合いをつめられたマキナは、右手から拡散させたフレアドライヴの粒子を放出し、手の眼を潰したところで、騎士型を上から蹴り飛ばした。


「どうしたの!?」


 ヨムナから通信が入ってきた。弥生は切羽詰った様子で返答。


「新しいタイプのルスルですッ! おそらくマキナの性能を真似て造られた……いえ、発生したものだと思われます!」


「マキナと同じ形のルスル……」


「こいつを倒さないと先には進めません……やるしかないッ!」


 弥生は右ステップを踏み倒して、騎士型の剣を回避すると、展開させたマステマのビットを騎士型の顔面に突貫させる。しかし、寸前でビットは剣に斬られて爆散。黒い煙の中、もう二機のビットが騎士型に迫ってくる。騎士型は右から来るビットを斬ると、左腕を前に出した。そして、二時の方向から突貫してくるビットを受け止めた。騎士型の左腕に突き刺さったビットは、ゼロ距離で蒼い閃光を放つ。


 騎士型は爆発を始めた左腕を切り離して誘爆を防ぐと、切り離した左腕を右手でがっしりと掴み、マキナのいる方向へ投げつけた。切り離された騎士型の左腕は爆発。弥生の視界は黒煙に包まれた。


「レーダーが無効化されているッ!? ヨムナさん!」


「分からないわ……こっちでも敵の反応が……ッ!」


 その時、銃声が聞こえた。それは回線越しからでも十分、聞こえる大きさだった。そして、その瞬間、回線は何者かによって強制的に切られてしまう。


「え!? え? 何が……あッ!」


 騎士型の突進がマキナの胸部に炸裂した。弥生は体をシートに打ち付けられてしまう。額から流れ落ちる紅。コックピット内に鉄分の臭いが充満してしまった。その額から流れ出る鮮血を右手で拭うと弥生は視界を前方に向けた。


「まずは……ッ!」


 弥生の中で弾けた、何かが。騎士型は突進後、体勢を立て直すと剣を振り上げて、こちらに向かってきた。真空の中で聞こえるはずのない轟音が、弥生の耳に響く。サササ、と何かが飛んでくる。それは鳥か? それとも。


 蒼い刃先をマキナの脳天に振り下げようとする騎士型。しかし、騎士型の剣はマステマのビットに弾かれて、微かに脳天を外してしまった。マキナは前方に両脚部のバーニアを吹かして、後退しながらビットに指示を送った。ビットは反応し、騎士型に突っ込んでゼロ距離射撃を開始した。しかし、騎士型はすぐに剣でビットを破壊すると、頭部をマキナの方向へ回転させる。


 そして、突貫してくる、騎士型は。マキナは股関節後部に接続していたマステマの本体のバーニアを展開させて、瞬時に切り離す。マステマの本体は自動的に騎士型へと突貫する。騎士型の胸部に取り付いたマステマの本体。


「こいつッ! マステマの向こう側になんて!」


 弥生は咆哮。マキナは右手のビーム刀を展開させて、騎士型をマステマの本体ごと串刺しにした。騎士型は弱点であるコアを貫かれたようで、次第に体が膨張を始めていき、限界になると鮮血を付近に撒き散らしながら消滅する。


「はぁっ! はぁっ! はぁっ! ……フラガラッハ三号は!? 皐月はどうしたんですか!」


 弥生はフラガラッハ三号に回線を繋げようとするが、通信用電源が落とされているようで、ノイズすらも聞こえなかった。不安が広がってゆく弥生。右手を握り締め手汗を拭い、再び操縦桿を握り、弥生は呟いた。


「皐月……なにがあったの?」

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