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第5話 エターナル・アライヴ・ガールズ(2)

 金属音が鳴り響く格納庫。整備班は管制室から、その様子を見つめていた。マキナは格納庫展開した下部からカタパルトへと移動。そして、レッグをカタパルトに固定した。


 弥生はいつものように、システムの最終チェックをする。それが終わると、両手で操縦桿を握り、下を向いて深く深呼吸をした。落ち着かないと言うわけではなかったが、何もすることが無かったので、そうしていた。静寂ではないコックピット。金属音に電子音。だが、弥生はそれによって、逆に落ち着けることができた。この空間うちゅうでは、静寂こそ真の恐怖なのだ。


 ここで散っても、誰も棺桶に入れてくれない。いや、そういうことは高校生には関係ないのだろう、と弥生は少し開き直ってみせた。だが、怖いものは無数にあった。死ぬことより先に皐月や栄治が死ぬということが、頭の中に先行して現れるのが実に不気味だった。それでいいのか、とも考えるが、それしかない、と弥生はまた開き直る。


 操縦桿を握った両手は汗で滲んできた。滑るといけないので、近くにあった紙で手を拭いた。そして、また深く深呼吸をして操縦桿を握った。暫くすると、ブリッジから通信がきた。弥生はコックピットの回線を開く。


「どう、調子は?」とヨムナは回線越しに、尋ねてきた。


「……戦うことに支障はないようです。いえ、万全といえば、そうでないのかもしれません。ですが、気持ちは万全です。帰りましょう、地球へ」


「ええ、私も地球でやり残したことがあるから……」


「どんなことですか?」


「昔ね、人間が月に移住するという計画があったの。でも、ルスルとの戦争でお蔵入りになったわ。だから、私はルスルを倒して、人間が月に移住できるようにしたいの」


「いいですね、それ……私なんて」


「あなたにもあるじゃない! 栄治くんとかいう、男の子に告白するんでしょ?」


「な……ッ! なんで知ってるんですか!」


 弥生は顔を真っ赤にして叫んだ。


「もちろん、あなたの親友……からね。でもさ、恥ずかしがることじゃないわよ、人を好きになることは」


「うぅ……」


「じゃあ、皐月に変わるわね!」


 そう言うと画面は皐月に切り替わった。いつものように、皐月は弥生に笑顔を送った後、話し始めた。


「弥生……一緒に地球へ帰ろうね……」


「うん! そして、一緒にインターハイに出ようね……それが私たちの夢だから」


「ありがとな……私なんかのマネージャーをやってくれていて……」


「私、ずっと皐月に助けられていたでしょ? だから、少しでも皐月を支えたかったの。ただ、それだけ……」


「今となっちゃ、立場が逆だけどな」


「へへへ……うんん、これが終わったら、また元通りになるよ」


「元って、どんなものなのかな?」


「へ?」


「いや……ちょっと考えてみただけ。弥生……いってらっしゃい!」


「うん! ずっと一緒だよ、皐月。だから、私は皐月を守る! みんなも守る……そうしないと、自分が自分でない気がするもの。存在意義が……なくなる気がするから」


「弥生はそれだけじゃない! もっと存在意義があるよ!」


「なんだか、皐月が言うと説得力があるよね……」


「あったりまえだ! さ、いってこい!」


「……皐月……私、戦うよ」


 瞳を瞑った弥生は回線を閉じて、再び瞳を開けた。システムオールグリーン。酸素濃度、イオン濃度、ともに正常値をキープ。イージスシステム起動を確認。カタパルト射出のタイミングをデウス・エクス・マキナに譲渡。そして、弥生は呟いた。


「アイ・ハヴ・コントロール。デウス・エクス・マキナ……藤崎弥生……」


 弥生は呟き、大きく息を吸った。


「行きますッ!」


 マキナは轟音とともにカタパルトから射出。軌道に乗って、眼前のルスルの大群に向かって加速していった。その数、およそ七億。しかし、細かく分散しているため、七億が一斉に襲ってくるということはないようだ。


「マステマとのドッキングを開始……座標【X-29/Y-23/Z-287】に固定! 原子炉ともに正常……ドッキングッ!」


 マキナはマステマとドッキング。そして、ルスルへの攻撃を開始した。


「アルカディアスの中心部にあるコアを破壊すれば……すべて終わる! そのためには、フラガラッハ三号の道を作らなきゃ!」


 弥生は呟いた。


「核弾頭でアルカディアスを撃つまでは……フラガラッハ三号をやらせない!」




 同時刻、地球。極秘裏に行われた軍事会議。円形状の広いテーブルの周りに座っている各国の代表者たちは、静かにその報告を聞いていた。前ではNASAから来た富野秀樹とみのひできが報告書片手に話を始めた。


「現在、地球の大気圏外……月と地球の間にルスルの大群の反応をキャッチしました」


「そんなこと、見ればわかる! この空だ! 黒く覆われているので分かる!」


 苛立ちを爆発させた日本の代表者が立ち上がり叫んだ。それをものともせず、秀樹は報告を続ける。


「詳しい情報を言いますと。数は約二億……地球への到達時間は三時間後です。今までにないほどの大群です」


「なら、なぜ今まで気づかなかったのだ!」


「ルスルの発している強力な妨害電波のせいで、衛星による目視しかできなかったのです」


 アメリカの代表者は冷静になっており、呟くような暗い口調で言った。


「いずれにせよ……我々人類は彼らの攻撃を防ぐことはできないであろうな。千、万の単位ではない。億単位の敵と戦った経験など人間にはないのだから」


「予想ですと、五時間が限度だと思われます」


「今頃、太陽でフラガラッハ三号はアルカディアスの直接攻撃を行っているのだろうな……。あちらも億単位の敵と戦っているのだろうか?」


「いずれにせよ、我々は天に祈るしかないようだな」


 フランス代表があきらめた様子でそう言った。


「予定では三時間後にアルカディアスは核弾頭によって消滅します。ですが、すでにフラガラッハ三号との通信は途絶……いえ、反応が消えたということです。それが太陽フレアの影響か、それとも本当に沈んだのかは不明。ですが、希望はあります。彼らがアルカディアスのコアを破壊すれば、ルスルの活動は停止して、炭素の塊になります。それまでの辛抱……我々もできる精一杯のことを尽くしましょう」


 そう言うと秀樹は報告書を閉じた。あとは祈るばかり……だった、地球に住む人類は。

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