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クノテベス・サーガ  作者: 落花生
第一章 岩砂糖を入れた紅茶の味は苦い
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八話 馬車移動だよ。早く飛空艇に乗りたいな……


 次の日。まだ目的の街には着かない。

 アルベーデン辺境伯領のすぐ横のコヨグス男爵領で一泊した。

 そして、チミリート伯爵領行きの駅馬車に乗った。商人たちの馬車や郵便馬車と合同で進む。その為、速度は遅い。けれども、兵士や冒険者の護衛が大勢付くので安全度は上がる。この世界では盗賊や獣だけでなく魔物も出る。領地間の移動は非常に危険なのだ。


 私には自動車の記憶があるので、じれったく感じる。比べると馬車って遅いよね。時速10キロも出ていないと思う。

 この世界には魔法があるので、やろうと思えば馬車を自動車並みに走らせることもできる。ただし、馬への負担が大きく、使い潰すことになる。あと、その状態での運転も難しい。なので、国の法律で規制されている。一部の兵団のみ、緊急時の運用が許可されているそうだ。


 休憩時間になったので、馬車を降りる。

 体の痛みは無い。伯爵領から乗り換えた馬車は屋根もある上等なものだ。西部劇とかで見たことある。8人乗りで、四頭の馬が引いている。その上、整備された街道を走っている。乗り心地はとても良かった。


 御者が火を起こして、コーヒーを入れてくれた。高い料金の馬車に乗ったので、サービスらしい。

 カバンからビスケットを取り出し、2つほど食べる。

 私は収納魔法を施した袋を持っている。通称"アイテム袋"。ここにはお菓子がたっぷり入っている。しかし、この魔道具自体がレア物なので、うかつに人前で使う訳にはいかない。もどかしいけれど、我慢だ。

 

 他の乗客と話をする。初老の方ばかり。家族に会いに行ったり、帰りだったり。私の方は特に話が弾むわけもない。まったり返事をする。

 そして、休憩時間が終わり、また馬車が動き出す。




 しかし、退屈だ。

 そろそろ、ドラゴンとか仲間になってもいいはず。召喚獣に乗って、長距離移動とかしたい。


 先生から聞いた話だと、エルフの里には古代の飛空艇のありかを示す手掛かりがあるらしい。超司教様が探したらしいけれど、前提となるイベントが発生していなかった為、見つけることができなかったらしい。そして、メモを取っていなかったので、それらの条件を忘れてしまったと言うのだ。そんな訳で、手探りで飛空艇を探さないといけない。


 ゲームを遊んでいるときは、もっぱらフィールドを歩いていた。

 中盤から駅馬車システムが解放され、街のステーションから選択した街のステーションへと実質ワープすることができた。しかし、料金が高いという大きな欠点があった。遠距離になるほど、値は鬼のように上がる。気を付けないと、クエスト中の移動でうっかり破産してしまう。

 だから、歩く。

 しかしながら、歩くのも大変だったりする。フィールドに出現するモンスターはパーティの平均レベルに応じて選ばれる。そのため、レベルが80を超えた辺りから、村を出た瞬間にドラゴンに襲われるようになった。本当に酷い仕様だ。

 レベル1のキャラをパーティに混ぜれば、楽に進めたはず。しかし、私はソロプレイをしていたので、その策は取れない。

 一応、エンカウントを減らす料理や指輪もある。料理は素材の入手難易度が高いので論外。指輪は3つあるスロットがその効果で埋まっている。本来は3人のパーティメンバーの内の誰かが指輪を付けていればいい。しかし、私はソロプレイヤーだ。戦闘時に付け替えをしないといけない場面が多くあり、面倒だ。

 という訳で、よほど遠くでなければモンスターを薙ぎ倒しながら移動していた。それで稼いだお金で、遠距離は馬車を使う。作業のようなプレイを強いられ苦悶した。

 それもこれも飛空艇が手に入らなかったからだ。


 今生では必ず手に入れないといけない。

 移動のこともあるけれど、魔王の城へ進入するのに必要だ。城は空中要塞になっている。飛行艇が無ければ入れない。ドワーフ以外は。

 ドワーフの街に最終兵器を作っているイカれた鍛冶師がいた。正体は巨大な大砲だ。それに自キャラが砲弾として入り、魔王城に向けて発射された。イカれた鍛冶師がハリウッド映画みたいに「FIRE!!!!!」と叫んでいたのを覚えている。台詞スペースに出たとかじゃなくて、のぶとい声の効果音が入ってた。そして、自キャラは魔王城の城門を突き破り、城内へと侵攻した。

 このことを先生に話すと苦い顔をしていた。

 パーティにドワーフが入ると可能なのか、ドワーフでソロをしたときの限定イベントなのかは不明。超司教様も知らない、社員が内緒で仕込んだイベントもあるらしい。たぶん、その一つだったのだろう。




 停留所に着くと、そこで一泊した。

 次の日の朝、馬を変えて出発する。

 そして、夕方にチミリート伯爵領に到着する。立派な壁のある城塞都市だ。十メートルくらいある。

 疲れが溜まっていたので、明日の馬車を予約してすぐ、門の近くの宿屋に飛び込んだ。街の見物は今度来たときにしよう。

 馬車移動が辛い。ベッドの中で項垂れる。

 早く飛空艇に乗りたい……。


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