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クノテベス・サーガ  作者: 落花生
第ニ章 岩砂糖を入れた紅茶の味は苦い
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七十六話 もう一息


 冒険者ギルドに行く。

 ギルマスは奥の会議室に案内しようとしたが、先生がゴネて、酒場で会議をすることになった。元冒険者なので、こっちのが落ち着くらしい。


 "ワイルドビースト"の魔法使い、南門で一緒に戦ったクンツさん、他にも魔法が使える冒険者が集まっている。

 "ワイルドビースト"の魔法使いが岩砂糖の採掘場で詳細な記録を取っていた。"要石"があれば、半日で復元できるそうだ。


 先生は今から行こうと言う。高い椅子に座って、高級なお菓子を食べながら、足をパタパタさせている。子供がゴネているような光景だ。周りの冒険者は、どうしていいかわからないという顔をしている。


 ひとまず、人手を集めて、手順を説明する必要があるという事で、進行は明日になった。"ワイルドビースト"の魔法使いは貴族の家の出だったので、先生に臆することなくワイルドに接していた。お陰で、話がうまく纏まった。


 これで終わりかと思ったら、終わらなかった。

 

 ニワトリ頭の監査官が現れた。

 報告をすっかり忘れていた。

 今一、何があったのかも覚えていない。それどころではなかった。確か、孤児院で大道芸を披露していたら、彼が現れたのだ。


 彼は大声で文句を言い出した。トサカに来ている。

 トムさんが間に入ってくれる。

 話を聞く。孤児院には、私たちが街の防衛に参加する様に要請を出す為に行ったようだ。確か、トムさんが断ってくれたはず。トムさんも、その件は断ったと言う。

 ニワトリ頭の監査官は、義務があると言い返す。

 トムさんは私が未成年である為、従う義務はないと言う。

 ニワトリ頭の監査官は、今度はヘルミンさんのことを指摘した。私が護衛にBランクの冒険者を囲い込んでいる様に思われている。

 そして、私が指示をして、自分に暴行を加えたと主張した。全く、身に覚えがない。

 トムさんから、何があったのか聞かれた。

 思い出せない。ヘルミンさんに聞こう。

 すると、ヘルミンさんが輪っかを持って、ニワトリ頭の監査官の後ろから現れた。


「ヘルミンさん、ダメ!?」


 ニワトリ頭の監査官は小さく悲鳴を出して、その場を離れた。


「相手をすると面倒ですよ」

「そういう問題じゃないって!?」


 "ワイルドビースト"の人たちと知らない冒険者たちがヒソヒソと噂をしている。


「あの女に関わるな。例え賛同しても、ただでは済まない」


 完全に死神扱いだ。


 先生が呆れた顔でヘルミンさんを見ている。そして、輪っかに興味を持ったようだ。


「その輪っかだけど、ダンジョンのトラップのやつじゃない?」


 輪っかをはめると回転して気絶するトラップ。恐ろしい。


「面白かったので、持って帰ってきました。遊ぶのでしたら、お貸ししますよ」

「だから、子供じゃないって」


 ヘルミンさんは先生をどう認識しているのか、すごく不安だ。

 そして、ヘルミンさんにはお説教……は無かった。ギルマスはもう匙を投げたようだ。

 

 ひとまず、解散だ。

 可能なら、明日の午前中に岩砂糖の採掘場へと出発することになった。

 トムさんと採掘場にいたマリアンヌさんの部隊は、作戦会議に参加する為に兵団の本部へと向かう。

 この会議に、ニワトリ頭の監査官も参加するようだ。文句を言っていたけれど、私は目を合わせないようにしていた。



 屋敷に戻った。

 今日も慌ただしい一日だった。


 ヘルミンさんは夕食を食べたら、すぐに眠ってしまった。明日の為に英気を養うそうだ。昼間も眠そうだったので、大道芸で疲れたのかもしてない。

 先生が、私にも大人しく寝るように言う。


「行きませんよ」

「何で? 散々、暴れてたんだろ?」

「ようやく自重を覚えました」

「嘘つけー」


 夕食の後、この街に来て起きたことを話した。


 救助、救助、救助。

 カール、カール、カール。

 さらに、変なのが次々絡んでくる。

 降りかかる火の粉を避けるために組んだ上位冒険者が、次々と問題行動を起こす。


 先生は怪訝な顔をしている。

 先生と一緒に来た騎士たちは、話を聞いて固まってた。


「魔物と戦うんじゃなかったの? 本来の目的から外れ過ぎだよ」

「確か、"はじまりの森"を攻略しろって言われました」

「パーティスキルを磨けって言ったの」

「最初のパーティとは、きちんと連携してましたよ」


 ルーシーたちとダンジョンを進めたら、どれだけ良かったか。


「それで、バカ狼とは組んでみて、どうだったの?」

「ガゥ!」


 フェンフェンが得意げに返事をする。


「下僕にしっかり指示を出してやったぞ、だって」

「返す言葉もありません」

「あー、何かあったの?」

「出た魔物と状況のレベルが高過ぎて、フェンフェンの指示通り動くしかなかった訳です」

「それは仕方ないよね」

「ウォン!」


 先生に、食事代をはずむなら、お前も下僕にしてやると言い出した。

 私はギルドの酒場で一番高い肉を頼んだことを先生に教えた。


「暴れてもいたので、機嫌を取る為です」

「甘やかさない程度なら、良いけどさー」

「ガゥガゥ」


 フェンフェンが、カールに"黄金牛のTボーンステーキ"を食べられた話をした。


「貴族にあるまじき行為だね。ここの男爵家は、ホントに何やってんだか……。それで、次男は死んだんだっけ? 暴漢に襲われたと聞いたけれど」


 暴漢に襲われたのは、私の方だ。その隙を突いて、若い兵士の母親がカールを刺した。東門の事件の復讐として。


「……酷い話だね。もっと、どうにかならなかったの?」


 それは私も、何度も考えた。どこで選択肢を間違えたのか。むしろ、選択ができなかった。先生と一緒に男爵邸に乗り込むしか、解決方法は無かったのかもしれない。


「マリーの部隊も一緒に送るべきだったね。トムも色々と想定外だったみたいだし。そもそも、ドワーフが悪い」


 先生がモカシャック大公の悪口を言い出した。巻き込まないで欲しい。さっき、アッシュさんがいなかくて良かった。


 そうしていると、トムさんとマリアンヌさんたちが戻って来た。 

 報告を受ける。 

 ジマーリ男爵領とチミリート伯爵領の間に、再びワイバークロウが出現した。やはり、スタンピードのイベントを終わらせないと無限に湧いてくるみたい。 

 それで、採掘場の結界を張り直す戦力を計算した所、街の防衛が手薄になるという結果が出た。作業中に、ワイバークロウが街を襲えば、一巻の終わりだ。

 ひとまず、南方の雷雲は鳴り止んだそうだ。夜になるので偵察が送れない。採掘場に魔物が集まっているかは不明。それでも、明日、強行するべきという結論になった。

 トムさんの話によると、街の人たちは精神的に限界のようだ。兵士も住人も。これ以上は大規模なパニックが起きかねない。藁にも縋るつもりで、今回の作戦を支持した。

 先生は、ふむふむと頷いた。たぶん、面倒くさいとか考えている。

 そして、私に質問する。


「どうする? 帰る?」

「私が決めるんですか!?」

「あなたの冒険だからね。採掘場に行っても、戦力が足りなくて全滅する可能性もあるじゃない。だから、帰ってもいいの。余所の領地より、自分のとこ、優先」

「そんなこと言われても、行くしかないです。このままだと、すっきりしないです」


 精神的に限界なのは、私も同じだ。それでも、逃げる選択肢も選びたくない。

 先生は気付いているか、ニッコリ笑う。


「私たちも一緒に行くから、へーき、へーき」

 

 それから、トムさんから"無限観音像"のことで報告を受けた。

 私は、仏像のことをすっかり忘れていた。あの時に、投げられていたのかな。

 投げたかどうかはわからないけれど、仏像は兵団の方に回収されたそうだ。話は付いているので、後日、ギルドの受付で受け取るように言われた。


 先生には、二人きりになってから仏像の事を教えた。

 先生はコロコロと表情を変えて、最後は怒りの表情になった。男爵夫妻は檻に入れると言っている。勇者ロッキーとの冒険の思い出に関わることだから、不快なのだと思う。


 とりあえず、仏像問題は解決だ。

 男爵夫人を倒したことで、イベントが大きく進んだ。

 早い話、先生が一緒に街に来ればよかったのだ。もしくは、岩砂糖の採取を始める前に。

 政治的な事情に巻き込まれて、事態が悪化した。前世で、ドラマとかで見たことがあるけれど、自分が当事者になるなんて。それも、来世で異世界転生して。

 

 大変だけれど、もう一息だ。頑張ろう。


 監査官への対応が過剰だったので修正しました。


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