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クノテベス・サーガ  作者: 落花生
第ニ章 岩砂糖を入れた紅茶の味は苦い
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六十八話 迷宮騒動


 目が覚める。ここはテントの中。

 屋敷の清掃は済んでいた。私とヘルミンさんの縁で、ニンブル商会が人を手配してくた。

 けれども、私はテントで寝た。慣れている場所で寝たかったからだ。


 フェンフェンはまだ眠っていた。

 そして、マリアンヌさんがいる。屋敷で眠らなかったようだ。もしくは、私の隣にいてくれたのか。


 何か忘れている気がする。

 昨日、カールはマリアンヌさんを国王の双子の姉だと言った。

 その後、マリアンヌさんは会談に参加した人たちに、顔が似ていたという理由で噂になっただけだと説明した。迷宮騒動の時の話で、王家の評判を落とそうと流されたそうだ。

 男女の双子だと、普通の姉弟と変わらない。そっくりになる確率は低い。無理のある話だと思う。

 けれども、コンナトキー伯爵の動揺する姿から察するに本当の事だ。


 私は横で寝ているマリアンヌさんを見る。彼女と目が合った。


「どうしたの?」

「あ、いえ……」

「うん、うん、と呟いていたけれど?」

「えっ!?」


 そうなの……。

 でも、何か肝心なことがあった気がする。

 思い出した。ケビンおじさんの病室に行ったとき、冒険者の一人がその話をしようとした。


「もう、放置するしかないわ。下手に取り繕っても……ね」

「それで、その……」


 私は昨日初めて、この話を聞いた。怖いけれど、真偽を尋ねてみる。

 マリアンヌさんは周りを警戒した後、ゆっくりと話をしてくれた。


 国王の双子の姉というのは本当らしい。

 王族としての名前は、"ウユ=ジン・マリー・クノテベス・ル・ベータ"。甘そうな名前だと思った。


 そして、この国には双子を縁起が悪いと考える風習があった。


「イー=ラパツヨ超司教様は迷信だと仰ったわ。勇者ロッキーやミルちゃんと一緒に、あちこちで説いて悪習を止めさせようとしたの」


 転生者が頑張ったんだ。前世でも、江戸時代くらいまでは嫌う人がいたと聞いた。


「そこも問題なのよ。勇者パーティが正そうとした悪習を王室がやった。この話が広まれば、権威を落とすことになる訳だけど……。えっと、迷宮騒動の時、王位継承争いが起きたの。……知っているかしら?」

「知りません」


 悪い魔法使いの呪いで、当時の王様は体調を崩し、寝たきりになってしまった。

 そして、王子だった現在の国王が摂政を行った。その時は、国全体が混乱していた。誰がやっても無理ゲーだ。

 しかし、邪な連中は王家を批判し、ある公爵家の次男を次期国王として担ぎ出したと言う。

 迷宮騒動の最中に、人間同士の争いパートが始まってしまったのだ。ここ数日のこともあるので、私は精神的ダメージを受けた。


「私は、どこ吹く風としか思っていなかったわ。迷宮の攻略に夢中になっていたもの。あ、迷宮の話は聞いている? 大きなライオンの顔の石像の口の中に入るの」


 私は知っている。ゲームの中で見ていたのだ。

 王都に行くと、遠くに巨大なライオンの顔の石像が見える。城壁の上に自由に登れる物見台があって、そこにいる人たちに話しかけると迷宮の事を教えてくれる。

 この迷宮は、伝説のあのゲームが元ネタのはずだ。私は派生作品の"天空城の迷宮"で遊んでいた。キャラが可愛かったので、いくつかのシリーズを持っていた。


 それから、迷宮に関するイベントで強力な武器を貰えるものがあったらしい。私は気がつかなかった。下町でフラグを立てるそうだ。

 もちろん、超司教様はイベントを起こそうとした。しかし、あるはずの巨大ライオン石像が無かった。下町でも該当するNPCは見つからない。どうしようなく、諦めるしかなかった。


 十年前、騒動が起きたとき、先生は王都にいた。物見台に登ると、超司教様の言っていた通りの巨大なライオンの顔の石像が出現したそうだ。

 それから、自分で攻略しようとしたけれど、領主の立場という事で周りから止められた。マリアンヌさんたちが攻略に参加したので、大人しく手を引いた。

 そして、超司教様から聞いたあのゲームの情報を国と冒険者ギルドに教えた。出所は、人かエルフ古文書で読んだと誤魔化した。それで初期の混乱が収まって、犠牲を減らすことができた。


「今では観光名所よ。当時から一見さんはいたけれど……この街にもいたってことね」


 マリアンヌさんが王子に似ているという話は、王都に初めて来たときからあった。アルベーデン辺境伯領出身と聞くと、意味深に反応する連中がいた。

 貴族が隠し子をアルベーデン辺境伯領に送っている。そんな噂も会ったらしい。


「昨日のレイト一味も、私を貴族の隠し子だと勘違いしてました」

「……実際に多いのよ」

「そうなんですか!?」


 人口を増やすために、孤児を積極的に引き取った時期があったらしい。それが、知り合いの知り合いみたいな貴族から隠し子を押し付けられる事態に発展した。


「最低よね。しかも、内緒の話なのにペラペラと喋るから、他所の領地に行くと偏見の目で見られることがあったわ。ただ、自分がそうだとは思っていなかったの」


 先生は何も教えていなかったらしい。


「八層の攻略が大詰めという時に、国王から呼び出されたわ。迷宮の実情を冒険者から直接聞きたいということで、ミルちゃんの家を経由して頼まれたの」


 それで王都にある先生の屋敷に行くと、世話になっていた騎士から出生の秘密を教えられた。

 体の弱った国王が、娘にどうしても会いたいと言っている。断っていいものかどうか。先生は自分が責任を取るから逃げていいと言っていたと騎士が話した。

 悩んだ結果、会いに行った。

 そして、噂が本格的に広まり始めた。公爵家を始め、反王室派が動き出した。王都の中で内乱が起きるとも言われた。

 喧騒により乱れたマナは、呪いの力を大きくした。王都近郊に強力な魔物が出現するようになった。


 闇の軍勢が現れ、大戦になった。先生も参戦して、今の国王と一緒に戦ったそうだ。

 そして、マリアンヌさんのパーティが迷宮の最奥にいた悪の魔法使いを倒し、呪いの儀式を終わらせた。

 こうして、迷宮騒動は解決し、クノテベス王国は救われた。


「反王室派は岩石ワームにペチャンコされたわ。即位した国王は国民の信頼を得て、盤石な地位を築いた。そんな訳で、今更なのよ。蒸し返しても仕方のない話だわ」


 マリアンヌさんは語らなかったけれど、迷宮の攻略で仲間を失った。それで冒険者を辞めて、先生に仕える騎士になった。

 聞く所によると、王都の教会で司教になる道もあったらしい。そんな人に世話を焼いてもらえる私は贅沢者である。


 一つだけ、尋ねたいことがあった。今の国王の事だ。先生は私の事は内緒にしていると言う。もしもバレたら会いに行かないといけない。

 どんな風に思われるのだろうか?


 けれども、マリアンヌさんは殆ど会った事がないらしい。

 二十歳を過ぎて、急に姉弟だと言われた。立場も育った環境も違うので、仲良くできるとは限らない。

 当時のマリアンヌさんはガサツで大雑把だった。そして、弟である王子は、気弱な所はあるけれど次期国王としての気品に溢れていた。正反対の性格だけど、顔は瓜二つだったらしい。

 お互いに突然知らされた故に混乱気味で、儀礼的に言葉を交わしただけになってしまった。今でも、交流はないそうだ。


「ミルちゃんとは仲が良いから、平気よ」


 明日、チミリート伯爵領で大きな会議をするらしい。先生も参加するそうだ。先生が近くにいるなら安心だ。

 詳しくは、トムさんが後で教えてくれる。昨日は、夜遅くに帰ってきたそうだ。


 話をしていると、外が明るくなった。

 朝ごはんの支度を手伝おうとしたら止められた。昨日、近所の料理店から朝ごはんを頂いて、アイテム袋に入れてあるらしい。街の防衛を担ってくれていることへの感謝だそうだ。


 私はゆっくり身支度をすることにした。

 

「そうだ。"あいつ"が来たわ。屋敷の部屋で寝ているはずよ」

 

 ニュアンスから察するにヘルミンさんだ。

 追いかけて来たの?

 昨日のことを考えると組むのが怖い。


 はたして、今日は何が起きるのだろう?


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