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クノテベス・サーガ  作者: 落花生
第ニ章 岩砂糖を入れた紅茶の味は苦い
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五十一話 東門の戦い その3


 生き残った前線のゴブリンたちが起き上がる。後ろのゴブリンたちと合流して、隊列を整えようとしている。


 ドンドン♪ドロドロ♪

 ドンドン♪ドロドロ♪


 不気味な太鼓が響く。

 ヘルミンさんがどうなったかは分からない。チャンピオンゴブリンたちが振り向いて後ろを見ている。後方にいるみたい。


 次は私たちの番だ。

 しかし、またカールが邪魔をする。


「何してんだよ!? 速く撃てよ!?」


 射程外だよ。静かにして欲しい。

 カールは今度は街の方を向いて、下にいる人たちに叫ぶ。


「全員、ここに来い! やばいんだぞ! 何でそこにいるんだよ!?」


 曹長と兵士が取り押さえる。

 確かに、もっと人数がいてもいいと思うけれど、そこは都合もあるのだろう。


 すると、また誰かが階段を上ってきた。その人たちは外の光景を見て、悲鳴を上げた。

 兵士が五人ほど。若い兵士だ。

 その後ろに、冒険者が続く。見覚えがある。三人とも新人だ。 

 私はその中の女の子の名前を憶えている。ロレッタだったはず。フェンフェンを抱いていた。Fランクで、ツノウサギが倒せるくらいの実力だ。

 三人とも怯えている。どういう経緯で呼ばれたのか。深刻な人手不足みたい。


「左右の空いている所に入れ!」


 混乱気味に兵士たちが動く。

 ロレッタたちはナディアとカリーナに相談していた。彼女たちから、すでに配置についていた兵士さんに声をかけてもらう。三人は北側の端に向かって行った。


 ドンドン♪ドロドロ♪

 ドンドン♪ドロドロ♪


 ゆっくりとゴブリンの塊が動き出す。前世で津波の動画を視聴したときに似た光景を見た。ヘドロのようなものがのっそり近づいてくる。どっちも飲み込まれたら死ぬという共通点がある。


「来るぞ!? 撃ち方よーい!」


 私は魔石を消費して、"ファイヤーボール"をチャージする。

 いよいよだ。ワクワクする。

 すると、フェンフェンに注意された。頭を出すな? 分かってるよ。


「「「ゴブブブ!!!」」」


「撃て!」


 ドン!ドン!ドン!


 バァァァァァン!!


「「「ゴ、ゴ、アアア!?」」」


 地面が爆発する。衝撃でゴブリンたちが吹き飛ばされる。

 しかし、後ろから次々と走ってくる。怯まない。


 城壁の上から無数の矢が放たれる。曹長さんは弾幕と言っていた。狙いを付けずに、手当たり次第に連射している。

 私も続けて"ファイヤーボール"をチャージする。魔石を使って、ディレイカットしている。


 二撃目。ゴブリンたちが大勢いる所へ撃つ、命中。ゴブリンが派手に吹き飛ぶ。

 これは楽しい。この迫力を出すには、私の給料分のパソコンを買っても無理だ。

 

「ウォン!」


 フェンフェンがしゃがめと言って、私に体当たりする。


 ドゴオオオ!


 私の前の壁が爆発した。

 おそらく、ゴブリンメイジの魔法だ。


「ウオオルルル!」


 撃ったら、すぐに身を隠せと怒られた。申し訳ない。

 曹長さんたちが心配してくれた。

 そして、何故かギルマスもいる。 


「無茶をするな! ここから避難しろ!」

「いえ、ヘルミンさんも戦っているので、そういう訳にはいきません」


 そういえば、ヘルミンさんは無事かな?

 森の辺りを見ると、チャンピオンゴブリンたちが飛び跳ねていた。木の揺れ方もおかしい。地面がトランポリンになっている。あんなふざけたマネができるのはヘルミンさんだけだ。彼女は無事で戦っている。

 ギルマスも曹長さんも驚いている。


「勝ち目ありそうなので、もう少し頑張ります」

「そうか、俺はカールを連れて下に行く」

「待て、俺も戦うんだ」


 カールがへたり込みながら威勢を張っている。


 私は無視して、魔石を取り出して、"ファイヤーボール"をチャージする。

 "魔力探知"で索敵しながら、"ストームバレット"で精密射撃することもできる。ただ、今の私の技量では一発一発に時間が掛かる。おそらく、"ファイヤーボール"を連射した方が良いはず。


 城壁からほんの少し顔を出して、ゴブリンの多そうなところに、ド~ン!

 そして、引っ込める。

 怖い。でも、楽しい。


「ショックウェーブ!」


 曹長さんが指示を出す。

 錬金術の爆弾。"ショックウェーブ弾"を使う。爆発の衝撃波で魔物をスタンさせる。

 自分たちにも多少の被害が出るので、直前に耳を塞ぐ必要がある。そして、目をつむって、口を開ける。


 ギルマスがカールに対策を教えている。

 いや、まだいたの……。

 カールはよく分かっていないようだ。


 ふとフェンフェンのことが気になった。手が短いので自分で塞げない。

 見ると、耳がペタンと折れて、耳穴を塞いでいた。ドヤ顔でこっちを見ている。おのれ!


 バアアアアアン!


「うわああああああ」


 ゴブリンよりもカールの悲鳴が聞こえてきた。

 どうやら、耳を塞がなかったらしい。


「あああ、助けてくれええええ」


 もがくカールをギルマスが取り押さえる。


「この距離なら、大してダメージはないはずだ」


 そうなの。もう気絶してよ。


 兵士たちが再び弓や魔法を撃つ。私も大急ぎで混ざる。

 顔を出すと、ジャイアントゴブリンが見えた。

 撃つ。

 すぐに身を隠す。

 戦果を確認できないのは、もどかしい。でも、非常時だ。ドンドン撃つ。


「ウォン!」

「"ヘビーゴブリン"!?」


 重騎士並みに鎧を着こんだゴブリンだ。Cランク。

 覗くと、門へ突進してくる。


 ズン!ズン!


 私は"ファイヤーボール"を撃つ。止まらない。

 フェンフェンや他の魔法使いも狙う。矢も降り注ぐ。それでも止まらない。


 ドオン!


 門に体当たりされた。こちらにも揺れが伝わる。


「ショックウェーブ!」


 兵士が"ショックウェーブ弾"を真下に投下した。


 バアアアアアン!


 やったか!?


 城壁から顔を出した兵士が叫ぶ。


「まずい、ゴブリンウォーリアが!?」


 皆が攻撃を再開する。

 どうなったのだろう?

 下から門を叩く音がする。嫌な予感。


 ズガアアアッ!


 門が破られた!?


 街の側から悲鳴が聞こえる。野次馬はまだ逃げていなかったの?

 下にいる兵士たちが戦闘を始めた。何人くらいるのだろう?


 曹長が指示を出す。弓兵の内の何人かを街の側に回した。

 指示が無いので、私は引き続き弾幕を張る。

 できるだけ上位種に当てたい。そして、雑魚ゴブリンを巻き添えにしたい。顔を出した一瞬で判断するしかない。

 とにかく、ゴブリンの塊に"ファイヤーボール"を撃つ。続けて撃っているからか疲れが出てきた。

 私はMP回復ポーションを飲む。力尽きるまで、"ファイヤーボール"を撃つ。それしかできない。

 

 すると、カリーナの声がした。


「サンドラ! まだ矢はある?」


 もう撃ち尽くしたの?

 異世界の兵士だし、撃つのも速いのかも。

 私は千本の矢を出した。


 運ぶのは、ロレッタたちも一緒だ。配達係に回ったみたい。


 ドオオオ!


 何かが崩れる音。


「うわああ、階段があああ!?」


 カールの声?

 カリーナが状況を教えてくれた。 


「階段からゴブリンが上ってきたの。ギルマスたちが戦っていたけれど、数が多くて……それで、曹長さんが階段を壊すように言ったの」

「仕方ないか。逃げるときは、城壁の上を走ればいいのかな?」

「どっちの方角も途中で崩れているから無理らしいよ」

「うーん、退路が無くなったか……」

「……どうなると思う?」


 カリーナの声が重い。自分たちはここで死ぬのか。希望は無いのか。

 私は森の方を見る。

 大きな横に広い竜巻ができて、ゴブリンたちがぐるぐると回っている。

 ヘルミンさんらしき人影が見えた。ゴブリンたちと一緒に回っている。例のカードか、広範囲の自爆スキルみたいなのを使っているのかも。

 勝てるのかな?


 ひとまず、街の中にゴブリンが入って行ったことで、城門の上への攻撃が減った。慎重に行動していれば、私たちは生き残れると思う。

 はたして、そうかな?

 だんだんと冷静になってきた。


 ダン!


 隣にいた魔法使いに矢が当たった。苦しそうに倒れる。

 カリーナが呼ばれ、治療の手伝いに行く。


 私はその光景をぼんやりと眺めた。

 街の方から悲鳴がたくさん聴こえる。

 ゲーム脳から覚めてきた。

 もしかして、もうダメなのかな?


「ウォン!」


 フェンフェンにここで休むように言われた。

 私は頑張ると返す。空元気だ。


「ウォァッ!」

「え?」

「ウォォォン!」

 

 突然、フェンフェンに叫べと言われた。


「南から何かくるぞおおおお!!!」


 恥ずかしいけれど、精一杯叫んだ。

 酸欠になりそうだ。クラクラする。

 曹長さんとギルマスが駆け寄ってくる。


「ウォン!」


 フェンフェンが走る。


 南から何がくるの?

 見ると、モーガンとナディアが負傷者の手当てをしていた。

 その向こうから声がする。


「あっ!? ゴブリンが登ってきた!?」


 この高い城壁を!?


「ゴブリンアサシンだ!? 三匹もいるぞ!」


 "隠れ身"のスキルを使って、気づかれずに上ってきたみたい。


「ウォン!」

 

 フェンフェンが私に援護しろと言う。 

 やるさ! 私にとっては因縁の相手だ。


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