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クノテベス・サーガ  作者: 落花生
第ニ章 岩砂糖を入れた紅茶の味は苦い
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十八話 救助隊


 結局、三回目も出動した。

 さっきの男子二人がもう一度付いてきてくれた。魔物が出なかったので、楽に"救助"できた。


 負傷した三組のパーティを連れて森を出る。ここからは他の冒険者も手伝ってくれた。負傷者を担いだり、背負ったりして、大勢で歩く。門の周りにいた人たちがビックリしていた。


 街の中に入ってからも注目の的になっていた。心配する声もあれば、嘲る声もある。

 歩きながら、負傷した冒険者の一人が呟いた。


「呪いの受付は避けたのに、どうしてこんな目に……」

 

 ヘルミンさんの事かな?

 運気以前に、彼らは準備不足だと思うけれど。


 ちなみに、今朝の私たちは別の受付で依頼を受けた。

 変態したルーシーのことが気がかりで、呪いのことは頭から抜けていた。

 朝の混んでる時間は受付が5つある。ヘルミンさんは左から二番目にいた。私たちは一組分空いていた一番左の列に並んだ。

 そこにいたのは、隣で驚いていた受付さんだ。名前は、ステラさん。ウェーブの赤髪で、背が高い。




 ギルドに入って、医務室へ向かう。受付と酒場の間を歩いて奥へと行くので視線が痛い。受付を見ると、ステラさんがいた。ヘルミンさんはいないみたい。


 他にも負傷者がいたらしく、医務室は満杯になってしまった。

 早々に書類を貰い、私たちは退散する。 

 "救助"には報酬が出る。手伝ってくれた人たちに分配を相談する。手伝いを申し出ただけあって、善良な面々だ。揉めることも無く、話は纏まった。


 ギルドの受付に向かう。


「あ、サンドラさ~ん」


 ヘルミンさんだ。さっきはいなかったのに。

 挨拶だけして、ステラさんの所に行こうかな。ステラさんと目が合うと、ドキッと体を反らす。この人、いつも驚いているなぁ。

 後ろを見ると、他のパーティが微妙な顔をしている。昼間は冒険者が少ないからか、受付にはヘルミンさんとステラさんの二人しかいない。私が避ければ、自分が"呪いの受付嬢"に当たることを恐れているのだろうか?

 仕方が無いので、私が行く。


「今日も"救助"ですか?」

「そうです。三組を"救助"しました」

「三組も!? それは大変でしたね。こうして積んだ徳は、風の神様が気流に乗せて飛ばしてくれます。いずれ、知らないどこかで芽をつけますよ」


 たんぽぽですか?


「それで、手伝ってくれた方々にも報酬を分けることになりました。えっと……」


 報酬を分配するのは始めてだ。どうやるのだろう?

 ミレイが説明してくれる。


「報酬を分ける場合、同じ受付で処理をすることになる」


 それを聞いた冒険者たちがビクビクと狼狽え始める。

 噂でしょう。そんなに怖がらなくても……。


「大勢いますね」

「14人で、パーティは5組います」


 順番に冒険者証、書類、依頼書、採取した品を出していく。

 うねるヘルミンさん。

 ステラさんが横から手伝ってくれた。彼女のサポートで順々に処理をしていく。


「終わりましたよ、ふぅー」


 ヘルミンさんは椅子にへたり込んだ。途中から、何度も書き間違えていた。見てる方もヒヤヒヤした。

 ステラさんも疲れた表情をしている。

 他の冒険者たちも安堵の表情を浮かべていた。

 そんな中、ヘルミンさんがジッと私を見つめてくる。


「あー、サンドラさん、疑ってますね。ふふん。負傷したパーティの中に、私の担当した子たちはいませんでしたよ」

 

 ドヤッとした顔でこっちを見る。


「私は信じてませんよ」


 ただ、アクが強いところが苦手なので避けようとはしていたけれど……。




 他の冒険者たちとは軽く雑談をして別れた。 

 ひとまず、私たちは帰る前に酒場で休憩することにした。


「疲れたよー」

「うん。疲れた……」 


 きちんと昼ご飯を食べられなかったので、大きめのパイを頼んだ。ちょっとずつ食べながら、ぼんやりする。だんだんと冒険者が戻ってきた。受付が込み始める。


 項垂れていると、ロバートさんたちがやってきた。昨日、ディーノさんたちが打合せしていた南方への大規模探索。彼らも臨時で参加することになったらしい。

 私からは三回の"救助"を行ったことを話す。

 ルーシーが満面の笑顔で勝どきを上げる。


「我ら、サンドラ救助たーい!」


 そうなのかな?

 ボブさんがルーシーの装備が一新されていることに気が付いた。彼女が慌てて説明する。私たちは今日の彼女の活躍を大袈裟に語る。

 ボブさん曰く、ルーシーはやればできるがやらない子らしい。

 ロバートさんたちも苦笑いしている。


「これでルーシーも一人前になったのかな?」


 ロバートさんも彼女のことを昔から知っているらしく、色々と話してくれた。


「あー、その話は駄目、なしなしー」


 ルーシーは悶えるように照れる。


 しばらくすると、ディーノさんやアッシュさんも酒場に集まってきた。今日も飲み会かなと思いきや、明日の朝に出発するから控えるそうだ。あくまで、一杯だけ。ドワーフのアッシュさんは三杯いくらしい。

 今日のことを労って、私たちに皆の分も飲むように勧められた。奢りだそうだ。


「わーい」


 はしゃぐルーシーをボブさんが嗜める。

 ミレイはお礼を言って、エールを注文した。

 私とカレンはお酒は飲めないからと断る。そうしたら、変わりに食事を御馳走してもらった。


 私は明日の冒険はお休みにして、みんなの見送りに行くことを提案する。


「じゃあ、たくさん飲むよー」

「こら」


 ルーシーはグイグイとエールを飲んでいた。

 ミレイはやや遠慮しがちだ。でも、勧められるままに飲んでいる。獣人だからか、食べ物の欲求に勝てないみたい。

 ほどなくして、二人は酔い潰れてしまった。


「疲れていたのかな?」

「"救助"は神経使うからなあ」

「普通に飲みすぎじゃないかな?」


 ルーシーはボブさんがお姫様抱っこで運んで行った。カレンも一緒に帰った。

 ミレイは何とか歩けたので、肩を貸した。アイラさんが反対側を支えてくれる。ロバートさんも念のために宿まで付いて来てくれるらしい。リッカルドはディーノさんに首根っこを掴まれていた。




 次の日の朝、ミレイはまだ調子が悪そうだ。

 食堂に二人分の白湯を貰いに行く。

 すると、アッシュさんのパーティが全員揃って朝ごはんを食べていた。私たちが帰った後、まだ飲んでいたはずなのに起きるのが早い。


「冒険者だぞ。起きるときは起きるさ」


 アッシュさんたちはガッハッハと笑う。




 予定より遅い時間になって、宿を出た。

 ミレイはふらふらと歩いている。


「大丈夫?」

「少し辛い……」

「肩を貸そうか?」

「……平気」


 苦しそうに返事をする、ネコミミが前に垂れている。

 でも、弱気な姿を見せてくれるくらい信頼関係ができたのだと思う。


 探索チームは南門から出発する。そこへ続く大通りにカレンの家のお店がある。ギルドには向かわず、私たちはカレンのお店で合流する予定だ。

 お店の前にカレンがいた。


「ルーシーはちょっと無理かも……」


 お店の中を覗くと、ソファーにルーシーが倒れていた。


「お、は、よ……」


 朝起きて二日酔いに苦しんでいる所に、父親からの雷が落ちたらしい。もうダメみたいだ。


「行、く、よ……」


 ゾンビを二体連れて、南門へと歩く。

 途中からルーシーに、カレンと一緒に肩を貸した。


 南門が見えてくる。前世で住んでいた四階建てのマンションより、少し大きいくらい。


 門の周りには人だかりができていた。冒険者以外にも、街の住人が大勢集まっている。

 丁度、アッシュさんたちが馬車に乗り込んでいた。頑丈な馬車だ。大男たちが乗り込んでもビクともしない。

 周りにはギルドの職員に、ギルマスもいる。

 見送りできる場所を探す。門の近くが空いていた。


「もうちょっと歩くよ」

「う……」

「ん……」


 向かう途中で、冒険者かと聞かれた。そうですと答えると、籠に入った紙吹雪を渡された。


 プオオオオオオオオ!!! 


 ラッパが鳴った。出発の時間だ。

 馬車が何台も動き出す。私はルーシーから離れて、紙吹雪をまく。ロバートさんやディーノさんたちも見つけた。手を振ってくれた。苦い表情をしていたのは、ゾンビを見たからだろう。 

 

 馬車が通り過ぎると、すぐに門が閉められた。魔物を警戒しているのだろう。

 街の住人たちは帰っていく。若い冒険者たちが掃除に取り掛かる。

 私たちも帰ることにする。

 歩いていると、ギルマスが話しかけてきた。

 "救助"の話を聞いたらしい。四回も行った上、自身の遭難騒動も起こしていれば目立つよね。あの時のお礼も言っておく。

 他所の街から来る新人が多すぎて、ギルマスもお手上げ状態らしい。無理のない範囲で手を貸してあげて欲しい。理不尽なことを言う輩がいたら、すぐにギルドに通報してくれとのことだ。

 私は曖昧に返事をして、ギルマスと別れた。


「このまま救助隊になるのかな?」


 カレンに聞く。


「どうなんだろう」

 

 明日、二人が正気に戻ったら、もう一度相談することにする。

 私も三日続けて森に入っているから休憩したい。

 ルーシーとカレンと別れて、宿へ戻った。ミレイをベッドに送り届ける。そして、私もひと眠りすることにした。

 おやすみ。

 

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