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クノテベス・サーガ  作者: 落花生
第ニ章 岩砂糖を入れた紅茶の味は苦い
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十七話 二度あることは三度ある

 

 朝。起きて、食堂に向かう。

 ミレイを起こす約束はしていない。少し待って、一緒に朝ごはんを食べようと思う。

 白湯を飲みながらぼんやりしていると、彼女が起きてきた。気だるい雰囲気をしている。朝は弱いのか、返事も曖昧だ。


 今日のメニューはローストポークのサンドイッチだ。冒険者は、朝からガッツリ肉を食べるのだ。


 昨日のお店で、豚肉の供給が増えていると聞いた。猟師が冒険者に続いて南方へ狩りにい行くようになった。"赤羽ボア"というイノシシがよく獲れると言っていた。赤い毛が生えていて、耳が羽のようになっている。


 この世界では猪肉が豚肉として扱われている。味は普通の豚肉だと思う。前世で猪肉を食べたのは一度だけなので、はっきりとは言えないけれど。

 家畜としての豚はいない。養鶏はあるけれど、豚などの肉は野生のものを狩ってこないといけない。稀に、ドロップアイテムとして、魔物から豚肉が落ちたりもする。

 超司教様は鶏以外の牧場を作った覚えがないと言っていたそうだ。私もプレイ中に見かけなかったと思う。だから、こんな面倒なことになってしまった。




 冒険者ギルドに着く。

 受付には大勢並んでいる。依頼の掲示板にも人だかりがある。

 私たちは入口の近くのソファーに座って、ルーシーとカレンを待つことにした。


 受付にヘルミンさんの姿が見える。見つからなければ、避けてもいい。

 ミレイに相談すると、どちらでもいいと言った。彼女は占いとか、あまり気にしないらしい。 


 依頼を受けた人たちがギルドを出ていく。

 二人が遅い。寝坊かな?


 すると、カレンがギルドに入ってきた。手を振って、こちらの居場所を知らせる。

 気付いたカレンが軽く手を振り、こっちへ向かってくる。そして、その後ろからレザーアーマーを着た兵隊さんが歩いてくる。

 何か問題でも起きたのかな。


「おはよう」

「おっはよー」


 聞き覚えのある緩い声がする。


「あれ? ルーシー?」

「そうだよー」

 

 彼女は兜を脱いで顔を見せる。


「その恰好は……どうしたの?」


きっちり防具を纏っていて、全体的に茶色だ。

 冒険者はラフな格好をすることが多い。実用性よりもビジュアルを重視する。

 現に、ルーシーの装いはギルドの中でも浮いている。


「それが二人のことを話したら、父さんにちゃんとしろって言われてねー。いやはや、夕飯の後、装備を買いに行ったんだよ。あー、それで、これぜーんぶ、父さんが買ってくれた訳」


 どういう訳?

 ミレイがそわそわしている。


「やっぱり、昨日のこと、気にしてた?」


 昨日のお店で不満を漏らしたことを、ミレイは気に病んでいた。夜になって、二人に不快に思われたのではと相談された。


「あー、全然気にしてないよ。そうじゃなくて、ミレイのいたクランね。"嘆きのスコール"っての。凄い有名らしいね。だから、恥ずかしくないようにって」


 父親から聞いた話を始まる。本当に立派なクランみたい。私はこれっぽちもそんなこと考えていなかった。ネコミミと尻尾に夢中だった。


「それとサンドラの先生の……、えっと、アゲベーコンHELL漂白様だっけ?」

 

 カレンが慌てて訂正する。


「父さんは人間とエルフの戦争を止めた偉い人だって言ってた。それで、サンドラも凄い魔法を使ってたって話したらさ。足を引っ張らないように真面目にやるか、冒険者辞めろって。日頃の行いもあって、色々と叱られたよー」

「えっと、私たちが原因じゃ?」

「いやいや、私が悪いよ」


 ルーシーは後ろ向きになる。背中に鉄の盾を背負っていた。


「あと、盾も使うことにしたよ。これでスパイクボアが出ても大丈夫だよー」


 スパイクボアは"始まりの森"のボスみたいなもの。森の奥の泉の近くで、ごく稀に出現する。一体なら、Dランクのパーティでも何とか倒せる難易度だ。

 そして、ドロップアイテムの肉は高い値が付く。


「それじゃあ、冒険に行こー」

 

 腑に落ちない点もあるけれど、出発することにした。




 始まりの森へと向かう。

 森の入り口付近では、今日も大勢の冒険者が採取をしていた。

 私たちは先へと進む。


 少し歩いて、二体の一角ウサギと遭遇した。

 ルーシーは最小限の動きで相手を押さえ込むように戦う。隙を見て、ミレイが槍で突き、一体を仕留めた。残りの一体が逃げ腰になった所に、ルーシーが剣を振るう。二回斬りつけて倒した。


「昨日より断然良い」


 ミレイが褒める。


「ありがとー」


 私の方を見たので返事をする。


「私も、こっちの方が頼もしい」


 前衛が固いと、安定感が増す。後衛としては大歓迎だ。

 ルーシーが笑顔になる。


「良かったー。じゃあ、次は魔法を打ってみてー」


 私たちは魔物を探して、さらに先へと進む。

 すると、遠くから女の子の声が聞こえた。


「誰か、助けてください!」


 ミレイが私たちを見る。


「私にも聞こえたよー」


 ルーシーとカレンにも聞こえていた。

 "魔力探知"の範囲外なので状況はわからない。

 私はみんなに尋ねる。


「行く?」


 聞こえなかったことにして、スルーしてもいい。他にも冒険者はいる。入り口付近に戻って、助けを呼んでくればいい。

 ルーシーがカレンの方を見る。


「はっきり聞いちゃったしー」


 カレンもうなずく。


「誰かいませんかー!!!」


 見境なく叫んでいる。これでは魔物を呼び寄せてしまう。危険だ。

 ミレイが動き出す。


「早く行こう」


 私たちも後を追う。

 おそらく、素人冒険者だろう。また、嫌な予感がする。それでも、死なれるのは嫌だ。体の奥がムズムズする。

 ゲームだったら、こんな事態を気にすることはなかったのに……。


 


 到着すると、四人の冒険者がいた。

 声を上げていたのは、戦士の女の子。持っている槍の先には、暴ウルフがいた。抑え付けて、動きを封じている。

 ミレイが暴ウルフに鋭い突きを放つ。おそらく、"バッシュ"のスキルを使った。暴ウルフは灰になった。

 女の子は緊張の糸が切れたのか、その場に腰を落とす。

 

 周りを見ると、他の三人はケガをして倒れていた。

 戦士らしき男と魔法使いの女。そして、レンジャーらしき男。

 全員、軽装だ。防具の無いところを嚙まれたり、爪で引っ掛かれている。昨日と同じだ。

 私とカレンの二人で治療をする。


 回復した彼らと森の入り口へ向かう。

 魔法使いの女の子には、カレンが肩を貸した。




 魔物と遭遇することもなく、無事に戻ってこれた。

 他の冒険者たちが手を止めて、こっちを見ている。

 どうしたのだろう?

 レンジャーらしき女の子が話しかけてきた。森の中に、負傷した仲間がいる。助けに行って欲しいそうだ。

 他の冒険者は誰も行かないの? 

 周りを見ると、装備の揃っていない新人ばかりだ。魔物に遭遇すれば、二次遭難を起こすだろう。

 三人と相談して受けることにした。周りの目もあるから、断れない。

 正義感の強そうな二人の男子が手伝いを申し出た。彼らには負傷者を背負ってもらうことにする。

 今しがた"救助"したパーティは、ここで待っていると言う。一休みしたいらしい。無事だった槍の女の子も精神的に参っているみたい。

 そんな訳で、七人で森の中に入って行った。




 ゴブリンが四体ほど出てくる。

 ルーシーとミレイが牽制する。私が"アースボール"、カレンが"ファイヤーボール"を放ち、一体ずつ倒した。

 残りは二体。前衛の二人が通常攻撃を繰り返すと、灰になって消えた。


 次に、三体の一角ウサギに遭遇した。

 前衛だけで簡単に倒せた。二人の息が合ってきたみたい。 


 進んでいると"魔力探知"に反応があった。

 三人の人間に、三体の暴ウルフだ。

 人間の内、二人は動いていない。助けを呼びに来た子の話では、二人が負傷し、一人が護衛に残ったそうだ。おそらく、目的のパーティが襲われているのだろう。この魔法のことは知られたくないけれど、このまま黙っていれば死者が出る。

 ミレイが飛び出した。音で察したようだ。


「まずい、急いで!」


 ルーシーも走り出す。私たちも続く。

 私は走りながら石に魔力を込める。


 到着すると、先に着いたミレイが暴ウルフと戦っていた。他に、三人の冒険者が倒れている。戦っていた男は腕を抑えてうずくまっている。

 私は"ストーンバレット"を発動する。しかし、場所が狭くて、三発同時には撃てない。

 ひとまず、一体だけ倒しておく。直撃した暴ウルフは灰になって消えた。


 残り二体。

 ミレイとルーシーは別れて、一対一の勝負に出る。

 ルーシーは盾で攻撃を防ぎ、剣でカウンターを入れる。そして、暴ウルフがよろけた隙をついて、"バッシュ"のスキルを決めた。暴ウルフは灰になって消えた。

 昨日とは打って変わって、堅実な戦い方だ。同年代でも強い方だと思う。父親が叱るのも納得だ。

 

 ミレイの方はあっさり終わっていた。二年目のDランクだから余裕がある。


 負傷した三人は命に別状はないようだ。

 付いてきた二人も治療を手伝ってくれた。 




 森の入り口に戻ると、また視線が突き刺さる。


「助けてください!」


 今日、三度目だよ!?


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