表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クノテベス・サーガ  作者: 落花生
第ニ章 岩砂糖を入れた紅茶の味は苦い
14/87

十四話 旅立ちの泉へ


 私の旅の目標は、レベルを上げて魔王をフルボッコにすることだ。

 それは話せないので、純粋に冒険したいという気持ちを語る。世界を観て回りたい、とか。


 あと、先生のことも教える。

 三人とも驚いていた。そんな大したものではないと誤魔化す。


 ディーノさんが私に、南方に行くつもりなのか確認する。彼はミレイの戦闘を何度か見たことがあるそうだ。実力はあるから足を引っ張ることはないと言う。


「えっと、その前に"始まりの森"を攻略しておきたいです」

「"旅立ちの泉"に行くのかい?」


 昨日の飲み会で新しい情報を仕入れた。森の奥に綺麗な泉がある。そこに辿り着けると、一人前の冒険者として認められるそうだ。この街の冒険者の風習みたいなもの。

 そして、これを契機に他のレベルの高い街に旅立つそうだ。ゆえに、付けられた名前が"旅立ちの泉"だ。

 新しいギルマスが赴任して、"始まりの森"は正式名称になった。けれども、こっちは不採用だった。泉に行った後、街に残った人も結構いる。その過程で、自分の限界を知るそうだ。


「この街の出身者としては、そうしてくれると嬉しいねぇ。ミレイ君もどうだい? 南方に行く前の腕試しだ。僕としても慎重に行ってくれると嬉しい。もしものことがあったら、スコールや君のお姉さんに合わす顔が無い」

「ミレイさんは南方の攻略に来たのですか?」

「そのつもりだ。しかし、実力を示す上で、泉に挑戦するのも悪くない」


 一緒に行ってくれるみたい。


「私も南方に行きたいんだよねー」


 ルーシーさんはノリが軽い。ボブさんが嗜める。

 聞けば、ルーシーさんとカレンさんに南方に行きの許可を出すのに、泉の攻略を条件にしているそうだ。かつて、ボブさんとロバートさんも街を出る前に"旅立ちの泉"を攻略した。だから、後輩のルーシーさんたちに同じ道を続いて欲しいみたい。


 目的が一致したので、ひとまず四人で組んでみることになった。

 さあ、冒険に行こう。




 適当な採集の依頼の張り紙を取り、受付カウンターに向かう。


「そこ、空いてるよー」


 ルーシーさんが指差す。

 人が並んでる場所もあるのに、そこだけ空いている。

 まさか……。

 

「サンドラさん。おはようございます」


 ヘルミンさんだ。

 噂が原因か、他の冒険者から避けられている。

 冒険者は意外とゲンを担ぐ。常に死と隣り合わせだからこそ、敏感になるのだろう。


「おはようございます」

「およ、知り合いなの?」

「そうかな……」


 一緒に濃いイベントを起こしてるとは思う。ということは、知り合いだよね。


「私の所に来てくれたのは三度目ですね」


 ヘルミンさんは胸の前でグッと拳を握って、得意げな顔をする。

 

「そうですね」


 愛想笑いで返す。

 実は私もヘルミンさんを避けようと思っていたのは内緒だ。


「そちらの方々は?」

「彼女たちとパーティを組むことになりました」

「わあ! それは良かったですね。ということは、パーティ結成の申請も必要ですね」


 彼女は引き出しから書類を取り出す。


「リーダーは……サンドラさんですか?」

「えっと……」


 皆を見る。ちょっと相談して、私がリーダーになった。お試しパーティだ。ひとまず、適当に決めておこう。


「パーティ名はいかがなさいますか?」

「とりあえず……パーティAとかでいいですか?」


 皆、うなずく。

 会ったばかり面々では、すぐに決められないよ。


「では、"サンドラのパーティ"で登録しておきますね」

「私の名前ですか!?」

「リーダーの名前が一番無難ですよ」


 活動二年目のミレイさんに聞くと、どうもそうらしい。ディーノさんやロバートさんの所も、二人の名前をパーティ名にしているそうだ。

 そう言えば、彼女の所属していたクランの名前は"嘆きのスコール"と聞いた。ディーノさんの口ぶりだと、リーダーの名前はスコールのはず。

 人を束ねられる実力のある人なら、当然目立つだろう。だから、この方が判りやすいのかな?


「では、それでお願います」


 最後に、全員の冒険者証を確認する。パーティ欄に記載をして、登録完了だ。


「手続きが完了しました。おめでとうございます。そうだ、サンドラさん。昨日の男子たち、全員亡くなったようです」


 ちょっと待って。そんな急に。心の準備をさせて欲しい。

 魔法を使って逃走した私にも責任があるのかな、と考えていたけれど。

 全員、死んだの!?


「まあ、仕方が無いことです。彼らの自己責任ですので、気持ちを切り替えていきましょう」


 またグッと拳を握って、笑顔で励ましてくれる。

 この世界、死生観が軽い。

 それでも、彼女は頭のネジが緩んでいると思う。


「パーティを組んだからと安心してはいけませんよ。結成したばかりのパーティだと、上手く連携が取れず、お互いに足を引っ張ってしまうケースもあります。まずは森の入り口の辺り、なるべく開けた場所で戦うようにしてください。昨日も注意しましたが、くれぐれも奥には行かないように」

「わかっています。じっくり態勢を整えてから、森の奥の泉を目指すつもりです」

「"あの世行きの泉"ですね」

「違います」




 私たちは冒険者ギルドを出て、北門へと向かった。

 ルーシーさんが先ほどの話を訪ねてくる。あまり話したくない。

 ガラの悪い男子たちに絡まれたこと。森の奥に走って逃げたことを誤解のないように説明する。


「四人いたのに、一角ウサギに負けたの? 確かに、この時期は痩せて動きが早くなってるけどさ」


 有力な情報だ。ヘルミンさんも教えてくれたら良かったのに。


「でも、去年の私でも勝てたんだよ」

「うーん。チャラチャラして、素人みたいだったから。ルーシーさんみたいに、戦い方を習っていなかったんだと思う」


 彼女は呼び捨てで良いと言ってくれた。カレンさんも。

 年長のミレイさんもそう言って、話に加わってきた。


「街の中で生まれ育って、魔物を見たことない人は結構いる。それで、冒険者の自慢話や噂を聞いている内に勘違いする。みんな、大袈裟に喋るでしょ?」

「あー、年中、ホラばかり吹いてる人を知ってるよー」


 リッカルドさんのことかな? 飲み会のときに、ドラゴンと死闘を演じた話をしていた。


「それで軽い気持ちで挑んで、返り討ちに合う人間は大勢いる。だから、サンドラも気に病む必要は無い」


 ミレイが慰めてくれる。

 走ったお前が悪い、と言われるかもしれない。なんて身構えていたけれど、杞憂だった。

 このまま仲良くできるといいな。幸先悪いけど、頑張ろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ