十三話 盾役
これは修業時代の話。
先生に勇者パーティのことを訪ねたことがある。構成とか、連携とか。
「そういう細かいことは一切考えなかったよ」
先生は得意気な顔で言い切った。
「どういう風に戦っていたとか、あるじゃないですか?」
「うーん、みんな、アタッカーだったよ。一斉に突撃して、早い者勝ちみたいな。馬が合うって言うの? 何となく、相手がこう動くってのが判ったんだよね。フレンドリーファイアーとか、そういうのは無かったよ」
とんでもない人たちだ。
私の聞いた英雄譚だと、仲間の絆とか色々と語っていたのだけれども。
折角なので、詳しい戦闘スタイルとかも聞いてみた。
勇者ロッキーは私とは真逆のタイプだった。近接戦闘が大の得意で、魔法が致命的に苦手。
それでも、回復スキルは使えたらしい。回復スキルは神に仕えるものが起こす奇跡とも言われている。しかし、若い頃の彼は信心の薄い人物だった。
勇者は自然界のエネルギー"マナ"を操ることができる。彼や私が回復スキルを使えるのは、その"マナ"のお陰だ。
メイン武器はバスタードソードを使っていた。そして、あらゆる武器を使いこなしたと伝承にある。これは勇者職の特性で、スキルを全て覚えられたからみたいだ。私が4属性の魔法を使えるのと同じ。
元は奔放な少年だったらしい。先生と超司教様に振り回されて、常識的な青年に成長したとか。
先生は成人してすぐに里を出たらしい。当時は自分と人間の考えた方が大きくズレていた。面倒事を起こしては、ロッキーが一緒に誤ってくれた。懐かしそうに先生は語った。
先生は双剣を使う魔法剣士。とにかく素早い。さらに、蛇のような動きが得意だ。突然、視界から消えてしまう。ハンデを貰い、何度も手合わせをしたけれど、まるで相手にならなかった。
種族の特性で、エルフはスピード型だ。斧やハンマーを持ったエルフは全くいなかった。例外として、シスター・ハルだけパワー型だった。
魔法は風と火の属性を使う。さらに、2つ属性を複合させて、雷属性の魔法を発動できる。剣士の腕も凄いけれど、魔法使いとしても熟達している。
精霊祈祷師でもあり、回復スキルも使える。精霊の力を借りて、"マナ"を操っているらしい。
イー・ラパツヨ超司教様。当時は神官。この世界だと女性でも慣れる。
彼女は身体能力ガチャでSSRを引いた。素手で魔物を殴り倒していたらしい。モンクだ。でも、ゲームで選択できる職業の中には無かったよ。
お酒も大好きだったそうだ。完全に破壊僧である。
他にも何人かと組んだけれども、長続きしなかったそうだ。
ゲーム内で戦闘に参加できるパーティーメンバーは3人までだ。このことが関係している、と超司教様は考察した。
「私にも適応されるのでしょうか?」
「そうだね。私とサンドラで、あと一人か」
「へ?」
「え?」
「先生は領主の仕事があるでしょ?」
「50年くらいやったし、飽きたー!」
ラスボスを倒さないと気が済まないとも言われた。それは私も同じなので納得だ。
「代官を任命したり、引継ぎしたり、面倒だよー」
貴族自体は辞めないで、代官に統治を任せるらしい。ただ、その代官を決めるのが大変だ。
候補に上がったのは、勇者ロッキーの子孫の青年だ。一度会ったけれど、苦労人の雰囲気があった。子供の頃は先祖のロッキーに憧れて冒険者になろうとしていた。しかし、貴族の生まれだったので許しが出なかった。それで、少しでもロッキーに近づきたいと、先生の仕事を手伝うことにしたそうだ。
まだ学校を出たばかりで経験が浅いから、すぐに交代とはいかないらしい。あと、ニ、三年はかかるとか。
だから、私は先に冒険に出ることにした。終盤に加入する強キャラ枠が先生には丁度いいと思う。
「サンドラは接近戦できないんだから、盾役は必須だよ」
「それなら、ドワーフの仲間が良いです。最強装備の取り方を覚えています」
「却下。ドワーフだけは駄目」
「えー」
異世界転生って、前世知識で無双するものだよね?
縛りプレイで、それを活さないスタイルもあるのかな?
そして、現在、ジマーリ男爵領に来て三日目の朝。
身支度をして、朝食を食べる。
アッシュさんたちは今日も起きてこない。一人で宿を出る。
冒険者ギルドで盾役を探してみようか? Dランク以上でメンバー募集の張り紙を出してみる。
ドワーフ以外とか書いたら、アッシュさんに怒られそう。先生にそう言われた訳だけれど、これをドワーフの大公に報告されたら、かなり不味い。戦争の引き金にでもなったら大変だ。
女性のみ、と入れておこうか。この世界には、鎧を着こんで走り回れる女性が結構いるらしい。うまく出会えるといいけれど。
そんな訳で、ゆっくりと冒険者ギルドに向かうことにする。依頼を獲り合う必要も無いので、空いている時間がいい。
ギルドの近くの武器屋が開いていた。早朝から冒険者相手に商売をしていたみたい。入ってみよう。
店内には何組か冒険者がいた。飲み会で知り合ったと思われる人がいたので、軽く会釈する。向こうも手を振ってくれる。
どういう訳か、盾のコーナーに来てしまった。かっこいい鉄の盾がいっぱい飾ってある。筋力足りなくて、どれも持てそうにない。
同じ盾が雑に積み重なってる。値段も安い。南方のドロップアイテムだろうか?
この世界のモンスターは倒されると灰になる。そうして、魔石といくつかのアイテムを残していく。猫くらいのサイズのモンスターから、巨大なフルプレートが出現したりもする。物理法則もあったのものではない。
ゲームの中だと、常に同じ金額で売れたけれど、こっちだと値崩れを起こすみたい。
冒険者ギルドに入る。匂いには慣れた。
パーティ関連の掲示板へと向かう。
すると、後ろから呼び止められた。
二人に。
一人はボブさん。
もう一人は……この人も飲み会で挨拶したはずだ。そうだ、Bランクの冒険者だ。この街の出身でBランクに上がったのは、アッシュさんと彼の二人だけ。彼はこの街を中心に活動していて、ここの冒険者たちのリーダー的存在だ。
まずい、名前が出てこない。前世は営業職だ。けれども、そんなに人の顔と名前を覚えられる方では無かった。今回のは、お得先の社長の名前を忘れるようなものだ。まずい、思い出せ。
「ディーノだ。来たばっかりだ。構わないよ」
助かった。
新人に優しい人は良い人だ。
ボブさんは先にディーノさんが要件を話すように譲った。ディーノさんは時間がかかるからと、ボブさんに譲る。ボブさんも時間がかかると譲り返す。
ざっと要件を聞いてみると、二人は私にパーティメンバーを紹介したいらしい。
酒場の方で詳しく話を聞くことにする。
人だかりがあった。みんな、私を見てる。
原因はミレイという獣人の少女だ。薄い緑の髪に、茶色いネコミミ。そして、可愛い耳とは反対にクールな顔だちだ。
16歳で、冒険者ランクはD。
彼女はチミリート伯爵領で活動しているクランに属していた。クランというのはパーティをさらに大きくした冒険者の集まりだ。依頼内容や各自のレベルに合わせて、複数のパーティに分かれて動いたりもする。
聞いてみると、自由に冒険がしたくなって、ここに来たらしい。私と同じだ。それで心配したクランのリーダーが、面倒を見て欲しいとディーノさんに手紙を出したそうだ。
有名なクランだから、興味本位で野次馬もいるみたい。
ボブさんが紹介してくれた子は、何と彼の姪っ子さんだ。
ルーシーという無邪気そうな赤髪の女の子。
15歳で、ランクはE。
そして、もう一人、彼女の幼馴染のカレン。対照的に、おとなしそうな女の子だ。
彼女も15歳。Eランク。
はてさて、最大3人のパーティには一人多い。でも、今、そこは気にしなくてもいいかな。実のところ、先生たちが濃い面子だから馴染めなかっただけだと思うし。
みんなの戦闘スタイル。
ミレイは弓と槍のスイッチ型。
ルーシーは剣士。片手剣を使う。
カレンは魔法使いで錬金術も使える。
三人とも軽装で、盾も持っていない。
どうしようか?
登場人物が増えました。迷ったら、登場人物紹介を読んでください。
https://ncode.syosetu.com/n2650ip/27/




