幸運の子猫
翌日。
ふと白玉入りのたい焼きが食べたくなったのでショッピングモールへ。ここに来れば大体何でもあるから便利だ。
目当てのたい焼き屋へ。列が出来ていたので並んでいると、
「あっ、タカナシちゃんのお兄さん」
後ろから声をかけてきたのは以前出会った女の子だった。
たい焼きを購入し帰るつもりだったが流れで一緒に食べることになりフードコートに移動する。
「アリス•ガーネットです」
「高梨優です」
改めて自己紹介をする。
アリスは今年から日本に留学してきて従姉妹の家で世話になっているそうだ。
「そういえば猫ちゃんと同じ名前なんですね」
「あー、それなんだけど」
写真の猫は実在しないゲーム内のキャラクターだと説明する。
「ガーネットさん、勘違いさせてごめん」
「いえ問題ありません。素敵な猫ちゃんには変わりありませんので。あと私のことはアリスと呼んでください」
「わかったよアリス」
「それで優くん、このユグフロ?ってゲームをやれば私もタカナシちゃんみたいになれるんですか?」
「あー、今のところケット・シーとかのレア種族はそれぞれ一人しかいないから多分難しいかな」
「そうですか残念です」
「ちなみに俺がいる所は他のプレイヤーがまだ来れない場所だから、ゲーム内で一緒に遊ぶのも出来そうにないな」
「そうですか…」
しゅんとするアリス。
「見るだけで良かったら俺のプレイ動画見る?」
そう提案すると、
「いいんですか!」
花が咲いたような笑顔を見せるアリス。
他の人には広めないことを伝え連絡先を交換する。
「ありがとうございます優くん。帰ったら早速見ますね」
上機嫌なアリスと別れ帰宅する。
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ログインする。起きると白玉とあんこの姿はなかった。
地下を出ると2匹はひなたぼっこしていた。気持ち良さそうに転がっている。
「にゃあ」「なー」
タカナシに気付いた2匹がやってくる。
改めて2匹のステータスを確認する。
2匹共種族はケット・シー、スキルは白玉が光魔法、あんこは闇魔法を所持していた。
どちらもタカナシが持っていない属性だ。これで各属性一通り手に入ったことになる。
他には幸運というスキルを2匹共所持していた。
説明文はないが大体想像はつく。アイテムドロップやクリティカルが上がるといった効果だろう。
2匹がどれだけ戦えるか確認するため拠点を出る。
近くを散歩がてら探索する。
少し歩くと島ウサギが一匹現れる。
見た目通りただのウサギだ。角は生えていない。
「白玉、攻撃だ」
「にゃあ」
白玉が光の球を放つ。島ウサギは一撃で消滅し肉と毛皮がドロップする。
島ウサギは一応モンスター扱いだが魔石はドロップしない。カテゴリとしては魚や貝などの食材に近い感じだ。
攻撃してこないので魔法の練習にはもってこいの相手だ。
次はあんこの番、同じく島ウサギが相手だ。
「なー」
黒い球が島ウサギに直撃する。当然一撃だ。肉と毛皮がドロップする。
タカナシが以前戦闘した時は片方しかドロップせず、2つ一緒に出たことはなかったはず。これが幸運の効果なのだろうか。
ちなみに島ウサギとの遭遇率は低く連続で出会うことは今までなかった。
白玉とあんこの魔法はタカナシの使う魔法とあまり変わりはないようだ。光と闇の効果はいまいちわからなかったが、まだ序盤だし気にしなくてもいいだろう。
拠点に戻り早速手に入った肉を調理する。と言ってもただ焼くだけだが。
木の枝を集め火魔法で火を付ける。ナイフで串を作りそれに肉を刺して焼く。
調理場もその内作りたいと思いつつ焼けた肉を大きな葉にのせる。
白玉とあんこがドロップした分に合わせタカナシが元々持っていた分があったのでケンカせず分けることができた。
皆で仲良く肉を食べる。
ただ焼いただけなのに美味しい。あんこはそのままかぶりつき夢中で食べている。白玉は一口一口味わいながら食べていた。
塩かコショウがあればいいのだが探せば見つかるだろうか。今後は調理に使えそうな素材も気にして集めていきたい。
デザートに切り分けたリンゴを仲良く食べると、あんこはそのまま寝てしまった。
確認したいことは終わったし、やることもないのでこのままログアウトすることに。
あんこを抱きかかえ白玉と一緒に地下へ移動し寝ることにした。
手に入った毛皮を敷いてあんこをその上にゆっくり乗せる。白玉の分も同様に用意する。
タカナシは地べたにそのまま寝転がる。毛皮はウサギサイズなのでタカナシが使うには小さ過ぎた。
白玉は申し訳無さそうにしているが、気にしないでいいと頭を撫で遠慮しないよう伝える。
あんこが能天気だからか白玉は少々気にしいなところがあるようだ。
眷属だからといって厳しく縛るつもりはない。戦闘以外なら多少羽目を外しても構わないと思っている。
その辺りも含め2匹には話しておいた方がいいのかもしれない。
そんなことを考えながらログアウトする。