幻の猫の島
お待たせしました。
公式からケット・シーへの種族変更が発表されて以降、続々と他の人外種族も追加されていくようになった。
タカナシが掲示板にあげた話を参考に他の人外種族プレイヤーたちが行動を起こした結果だ。
タカナシにとって幸いだったのは新たに生まれたケット・シープレイヤーたちが一般プレイヤーたち同様初期地点からのスタートだったこと。
これは他に開放された人外種族も同じ。
おそらくリセマラガチャをしたプレイヤーたちとの差別化を図る為だと思われる。
タカナシのように初期地点に自分の拠点を持つプレイヤーは多くトラブルを避けるためというのもあるだろう。
そんなことがあったりしたがタカナシには特に影響はないので今日も無人島でのんびりと過ごす。
無人島は相変わらず猫で溢れている。どこを歩いても猫、猫、猫。第2のケット・シーの国状態となっていた。
「みゃあ」
王様もほぼ毎日やってきていた。仕事はどうしたと言いたいところだがその問題は解決している。
ケット・シーの国の玉座には今、不在の王様に代わり木彫りの招き猫が置かれていた。
「にゃあにゃあ」
『なるほど、そうなんですね』
木彫りの招き猫と猫が会話している。木彫りの招き猫からはアリスの声が聞こえる。
南エリアから見つかった宝箱から出てきた人型の木の像。
細かい説明はなく使い方がわからず持て余していたものだったのだが、王様に渡したところ、形を変え木彫りの招き猫の姿となった。
どうやらこれは御神体のようなものらしく特に使い道のないタカナシは王様にそのままプレゼントしたのだが、いつの間にかアリスとの通話機になっていた。
アリスに話を聞くと運営からテスターの打診がありこのような形になったらしい。
アリスはゲーム外から人外NPCと意思疎通できる存在として以前から注目されていたという。
既にケット・シーとしてゲームに参加できるようになっていたが、アリスは今の視聴スタイルに満足しており今までと変わらないスタイルでならと引き受けたという。
いつの間にかケット・シーの国のご意見番となっていたアリスだが、タカナシの無人島の視聴も変わらずに続けている。
現在無人島は海か空から来るしかない。ケット・シーの国からのルートは一般プレイヤーたちには開放されていないからだ。
その上無人島の周囲にはケット・シーたちによる結界で隔離され、他のプレイヤーがたどり着くのは実質不可能となっていた。
ゲーム的にどうなのかと思われるが、現在タカナシはアリス同様テスターとしてゲームに参加している状態なので問題なかった。
仕事内容は実装予定のスキルやアイテムの検証を行ったりする以外は普段通り過ごしていいので楽なものだ。
テスターは無人島から出ない、他のプレイヤーとの接触禁止などの条件があったが、タカナシにとってはむしろメリットだったので二つ返事で引き受けた。
ある時を境に三毛猫ケット・シーことタカナシの情報は表からは途絶える事になるがその代わりにとある噂が流れるようになった。
NPCケット・シーのみが入ることが許されている猫の島。
そこはテーマパークのような場所で1日中いても退屈しない場所。
人が立ち入れない幻の猫の島ことタカナシの無人島。
タカナシはこれからも普段と変わらず白玉たちとのんびり過ごすことになるだろう。