精霊剣
泉に落とされたタカナシ。
水面に上がろうと手足をバタつかせるが、どんどん下に沈んでいく。
パニックになりそうになるが冷静に風魔法を使い空気の層を頭の周りに覆う。
光が届かない深い場所まで沈んでいくが、足掻いても仕方ないので流れに身を任せるタカナシ。
泉の底に着く。周囲は真っ暗で何も見えない。体の自由は効くようになったが、頭上は透明な壁のようなものに阻まれ上には戻れない。
目を凝らし周囲を見渡す。遠くに僅かに光るものが見えた。
光の元へと向かうタカナシ。
そこにあったのは錆びた剣。形はレイピアでタカナシが持つのにちょうど良さそうなサイズだ。
剣と手に取るとその瞬間、視界が揺らぐ。
「にゃあ」「なー」
気付くと泉の底から地上。白玉とあんこが迎えてくれた。
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『その剣使えるようになりそうですか?』
「全然ダメだな」
剣を拾ってから数日、タカナシは剣の錆び落しに奮闘していた。
錆び落しの道具など当然無いので使えそうなものを代用している。
剣に塩とレモンをかけ放置し、目の荒い木の皮を使いひたすらこする。
毎日やっているが錆は一向に落ちる気配がない。
白玉はタカナシの様子をのんびり眺めていて、あんこは余った木の皮で爪とぎをしていた。
『他の方法は試してみたんですよね?』
「ああ、色んな属性の魔力を込めてみたんだがダメだった」
『それってタカナシくんだけですよね?白玉ちゃんとあんこちゃんは試しましたか?』
「どういうこと?」
『あくまで予想なんですけど全部の属性が必要なんじゃないかなって』
アリスの話を聞いたタカナシは白玉とあんこを呼び早速試してみることにした。
「それじゃあ白玉、あんこ。この剣に魔力を込めてくれ」
「にゃあ」「なー」
白玉とあんこが剣に手をかざし魔力を込める。
すると剣に変化が起こる。
剣は光り、周りについていた錆はパラパラと落ちる。
姿を現したのは銀色に輝くレイピア。
タカナシはそれを手に取り鑑定すると、精霊剣と表示される。
わかったのは名前だけで効果など詳細は不明だ。
それはおいおい確認するとして、ついに念願の武器が手に入った。
「おお、やった!成功した。アリスありがとう!」
『ふふっ、どういたしまして』
「にゃっにゃあー」「ななー」
珍しくテンションが上がり剣を掲げてクルクル回るタカナシ。
タカナシも男の子。剣が使えるようになったのは嬉しかったようだ。
そんなタカナシの周りを一緒に踊る白玉とあんこ。
タカナシたちはしばらくの間踊り、アリスはその様子を微笑ましく見守っていた。
「恥ずかしい所を見せちゃったな」
『いえいえ、眼福でしたありがとうございます』
「やっぱ剣はいいな。持ってるだけでこう強くなった気がする」
剣を構えポーズを決めるタカナシ。
『帽子とマントもあるともっと良くなります』
「あと長靴かな」
『です!』
「エリアボス倒したら装備落ちないかなぁ」
その後はアリスのリクエストで様々なポーズをとるタカナシ。
念願の武器を手に入れテンションが上がっていた為、普段しないようなことまでしていた。
あとあと思い出し恥ずかしくなったが後の祭り。
アリスには画像を他の人には見せないようお願いしたが動画は制限し忘れた為、それを見た拓海にそのことをしばらくイジられた。