草食い猫と玉遊び猫
『こんにちはタカナシくん』
「いらっしゃいアリス」
アリスがやってきた。
『白玉ちゃんとあんこちゃんもこんにちは』
「にゃ」「な」
白玉とあんこは一言挨拶を返すとすぐにボール遊びに戻る。
「ごめんアリス。白玉とあんこずっとあの調子なんだ」
白玉とあんこが遊んでいるのはタカナシが魔法の練習で作った泥団子。
作業は全て魔法で行っていて、普通に作るよりピカピカで強度もある自信作だ。
使い道は特になかったので試しに2匹に見せた所、気に入ったらしく暇さえあればずっと遊んでいる。
『今日も魔法の練習ですか?』
「ああ、試験近いしあんまり出歩きたくないからね」
草を噛みながら答える。
平日というのもあるが近々試験があるので遠出はせず拠点内でできることをしていた。
『その草って魔力が回復するんですよね?あんまり美味しくなさそうですね』
「ああ、調理スキルや錬金スキルがあればマシになるらしいけど俺はスキル持ってないからな。不味いけど仕方ない」
渋い顔をさせて答える。
先日散策した際に見つけた魔力草。その名の通り魔力を回復させる効果がある。
加工すれば味や効果が良くなるがタカナシにはその手段がない。たとえ不味くてもそのまま食べるしかないのだ。
ちなみに白玉とあんこは魔力草には全く手を付けていない。
不味いのは嫌というのはもちろんだが、2匹はタカナシよりも魔力量が多いらしい。
その上魔法を使うセンスはタカナシよりも上手く、特にあんこは練習などしなくてもいつの間にか新しい魔法を習得していたりする。
現在タカナシは魔法の練習をしているので、普段よりも魔力の消費が激しく、一人だけこの不味い魔力草を食べ続ける羽目になっていた。
『まだエリアボスと戦うのは難しそうなんですか?』
「全然勝てるビジョンが浮かばないな」
エリアボスのタイラントベアとアーマードボア。
現在のタカナシたちでは火力が足りず真正面から攻めても勝てそうになかった。
別案として罠や毒などの搦め手を考えたこともあるが、どちらも頑丈で体力が多そうなのでどれだけ時間がかかるか未知数。
こちらが根負けする可能性の方が高かった。
現状手詰まり感は否めないが、他にいい案が思いつかないのでとりあえず魔法の技術を磨いている。
白玉とあんこはそんなタカナシを余所に無邪気に玉遊びに夢中だった。
『あのもし良かったらなんですが一緒に勉強会しませんか?』
アリスから提案される。
話を聞くと学校は違うが大体同じ試験範囲のようだ。
ここ数日は試験勉強とひたすら草を食べながら魔法の練習。少し気が滅入っていた。
いい気分転換にもなりそうだし了承する。
『では週末よろしくお願いします』
「ああ、こちらこそよろしく」
週末に勉強会を開くことになった。