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感情FEVER 学園編  作者: きんたろ
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8.『赤いビーム』

 学校の昼休み。3年4組の教室内は、今日も賑やかだ。昼食が終わっても男女それぞれウマの合うグループ毎に集まり、わいわいガヤガヤしている。次の授業のテストについておしゃべりをする女子生徒もいれば、プロレス技のかけ合いをする男子生徒達も居て、偶に奇声も聞こえてくる。至って普通の、学校の教室の賑やかな様子。

 教室に入ってきた心は、レナのいる席へ歩いてきた。


「何してんの?」


 レナの前の席が空いていたので横向きに椅子に座り、足をぷらぷらさせながら頭だけレナの方を向いて尋ねる心。


「あぁ……心……えっと次の……世界史の小テストの勉強……してる……」

「ふぅーん」


 ぷらぷらさせていた片方の右足を、床とほぼ平行になった時に止めてみる。


「ヤバい……!全然覚えられないぞ!!」

「もう駄目じゃん?あはは」


 笑いながら再び両足をぷらぷらさせる心。


「煩いな、あぁ! 全然頭に入らん! うぅ……」

「いい事教えてあげよっかー」


 心はまた両足をぷらぷらさせたあと、今度は左足を床とほぼ平行になった時に止めてそう言った。


「え?何を……」

「教えちゃおっかなぁ……? まぁ教えてあげてもいっかぁ……。」


 今度はぷらぷらを速くさせながら、少し得意げになっている心。


「だから何をだよ……うぅ、焦って全然頭に入らねー!」

「うんとねー、がんばって今更勉強してるようだけど、今日テスト、無い!世界史の沼田先生、今日、休み!さっきうちのクラスでも世界史の授業の時間あったけど、先生いないから小テストも無かった!」


「うそ!!まじ?!」


 教科書とにらめっこしていたレナが心の方にやっと顔を向けたのはその時だった。


「まじ!!」


 レナの顔に自分の顔を近づけて満面の笑みで答える心。


「なぁんだよぉおぉぉおぉぉおぉ!ラッキーーーーーーーーーーー!!ってかだったらもったいぶらずに早く言ってくれよ!もう!」

「いや、レナが焦ってるのをみて面白かったからつい、ね。」

「つい、ね、じゃねーよぉ!なんだよぉぉー。もう!……まぁいいや!!あぁ……良かった良かった。」


 レナが安心しながら世界史の教科書を閉じ、机の中にしまったその時、教室内に


「わぁ~!」

「きゃ~!!」

「かわいぃ~!!!」


 という黄色い歓声がどよめいた。二人はその対象に目をやる。二人の女子生徒が教室に入ってきた。学年の人気者、茜とケイトがやってきたのだ。


「どうしたの!?いつもすぐ居なくなっちゃうのに!」

「こんな時間に他のクラスにやってくるなんて!」

「ケイトさん!お元気?!」

「茜もどうしたの?4組に入ってくるなんて珍しい」

「茜!今日も髪型決まってるぅぅ!!」

「ケイトの髪の色真似したいんだけど、その色どこで買えるの?教えてよ~」

「茜!」

「ケイト!」

「茜さん!」

「ケイトちゃん!」

「茜!」

「ケイト!」

「まいったな……」

「はは……」


 入ってくるなり、取り囲まれるように話しかけられる。あまり知らない人が見ても、すぐにこの二人が人気者である事がわかるような、あっぱれと言ったモテっぷりだ。


「おいおい、あの二人って、あんなにモテるんだ……。知らなかった。」

「わたしも……。」


 その二人が心達の元へやってこようとすると、周りの生徒達も男女入り混じって一緒にやってくるのでまるで大きな塊がやってくるようであった。


「おっつ~!お二人さん!」

「こんにちは。心、レナ。」


 二人が心とレナに挨拶すると、周りのギャラリーも喋りだす。


「え!?え!?お二人はこのお二人と仲良いのですかー!?」

「凄い組み合わせ~!」

「でもなんかかっこいいグループじゃん!!」

「知らなかった!」

「知らなかった!」


 以降、心・レナと茜・ケイトが学校で会うようになったのは、『昨日の出来事』があった、この日からだ。一緒に戦い、4人で奇跡に遭遇し、また4人で美しい月を心の家で見た。いつか思い出すであろう美しかった昨日の光景。昨日のこの時間にはまだ、自分達が1つのグループになるとは思ってもいなかった4人組。他の生徒達は知る由もなかった。


「や、やぁ……お二人さん、なんか凄い人気だな……はは……」

「こんちはぁ……って……びっくりするよ……」

「きゃー」

「挨拶してるぅ!!」


 呆れた笑顔でレナと心も返事をした。


「ちょっと、移動しない……?」


 提案する茜。


「そうだな。行こう!」

「ええ!」

「うん!」


--


 上から見るとカタカナの【エ】の文字を少し湾曲させた形に見えるその校舎の屋上は、ドアを開けると二角目の縦線の真ん中に出る。西を向けば【エ】の一画目の横線、逆に東を向けば【エ】の三画目の横線のエリアに分かれる。勿論、落ちないように屋上の周りは全体がぐるりと金網で覆われていて、【東エリア】は一般的な学校の校舎と同じように殆ど何も無いが、西エリアは花壇があり、ベンチもある。その屋上は放課後生徒達が帰る頃には出口の内側からドアの鍵が掛けられ出られないようになっているが、

それまでは自由に出ることができ、昼の休み時間はいつもそれなりに賑やかだ。それでも先程の教室よりかはマシだったので茜はこの場所を提案したのだった。


 4人が屋上に出ると、西エリアのベンチ付近や花壇近くには既に先客が居たので、

なんとなく静かそうな方がいいと思った茜は三人を先導し東エリアに向かった。


「ここなら、まぁ普通に話せるね!」


 茜は振り向き様そう言うと、金網を背もたれにして寄りかかった。


「うん」


 心は答えると金網を両手で掴み、左足も金網の向こうにつま先を指した。


「しかし、本当、君ら!モテるねぇ!!なんでそんなにモテるの?」


 レナがからかうように言う。


「さぁ?」

「あはははは」

「ははははは」

「ふふふ」


二人分の「さぁ」という返答が同時に返ってきて偶然綺麗なハーモニーを生んだ。それが可笑しかったのか、返事した茜のジェスチャーが面白かったのか、茜が笑うとみんなも笑った。


「あぁ、茜は、たぶん【それ】だな!」

「うん!」

「え?何が?」


 心もレナの言葉に賛同し、茜は不思議がった。レナは続いて答えた。


「モテる理由!それだ。笑顔。私が常日頃思っている事だけど、人はやっぱりさぁ、笑っている時の笑顔が一番だ!茜の場合、それがとても綺麗に見える。普通に綺麗だからかな?それが自分に向けられたものだと思うと、なんか勇気が湧いてくる!」


 ケイトは、思えば確かに今までこの笑顔を見せてくれて勇気を貰っていた事を思い起こした。砂場で助けてくれた時……。あの悪ガキ四人組がまたやってきた時も救ってくれた時……。学校の帰り道夕立になってコンビニで雨宿りしていたら、土砂降りの中自分が濡れてもわざわざ傘を家から持ってきてくれた時……。【輩】にナンパされた時……。いつも自分を守ってくれ、この笑顔も見せてくれた事を。その思いを含む言葉はこれだった。

 

「本当にそう思う。」

「そ、そんなこと言われたの初めてだよ。なんか恥ずかしいな。っていうかよくそんなことさらっといえるなぁ……」


 茜は恥ずかしそうに言うとレナはずばりといった。


「あぁ!わたしは思ったことずばりいうからね!」


 それを聞いて笑顔になり屋上から見える景色を見ていた心がふいに東北の方角に目をやると、異様なものが見えた。この江茂志四校から遠く離れた東北には湾があるのだが、その手前で山で隔てられている。心が見ているのはその丁度山の頂上付近だった。


「あれは……何……?」


 なにかレーザービームのように見えるものが天高く真っ直ぐ上に伸びてるように見えたので、その疑問をみんなに投げかけた。


「ん?なんだあれ……」

「あの赤い線……」

「赤いビーム……」


 そこにいた4人が思い出したのは、昨日見た、ケイトの光る手から発せられたレーザービームのようなものの事だった。色こそ違うのだがそれにとても似ている気がした。


「ケイト…?」


 皆がケイトの方に振り向き、名前を呼んだ。


「違う!違うよ!私じゃない!私、何もしていない……!」


 考えてみれば、昨日ケイトが放ったと思しきレーザービームは、ケイトの手の光から発せられたものだった。今起こっているあれは遠くの出来事だし、ここらから見える位だから、規模が違う。ケイトは関係なかったのに、ケイトが何かやってしまったのではないかと少しでも疑念を持ってしまった事に三人は自分達に反省した。


「ごめん……。だけどアレはなんなんだ!?」

「上に向かって一直線に伸びているようだけれど、他には何も起こる気配はないねぇ。」


 レナが言うと茜が言った。


「あそこに行けば、ケイトの事と関係してるのかとか、何かわかるかも……?」

「放課後……。行ってみよう!」

「あぁ!」

「おっけー」

「えぇ。」


 最後の心の声で全員の意見が一致した。






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