37.惑星アグダラの起源
暫くすると、心たち4人を連れてきた少年は喋り始めた。
「ここで行き止まりだ。」
心たちは思わず息を呑んだ。そこは大広間だった。——天井から地面へ、青い光が静かにグラデーションを描いている。その青い光は水に反射し、うっすらと青の灯りを生み出していた。天井から冷たそうに滴る雫は地面を濡らし、長い歳月により形成されたであろう溝は、水の通り道となっている。奥には祭壇のようなものがあり、花瓶を少し潰したような形状の台座が設置されていて、その上に『水晶』が置かれている。
「それで……、あんたは一体何者なんだ? なぜ、こんなところにいる? ここに住んでいるのか? なぜ呼んだ? 外で光っていたあの青いビームは何なんだ? そしてなぜブラモンと一緒にいるんだ!?」
心がそれまで疑問に思っていたことをぶつけた。少年は、心を睨んで言った。
「お前、せっかちだろ! うるせーよ? それをこれから教えてやるっていうのに」
「心!みんなもちょっと…」
レナが心、ケイト、茜を呼び、小さな声で相談した。
「(一応さ、『あの子』に対しての質問は、あの子の話を一通り聞いてからにしよう……。)」
「そうね!」
「うん」
ケイトが返答し茜も頷く。そして心もしようがなく、頷いた。再び心が少年に言った。
「わ、わかった!ごめんな!!で!教えて頂戴!」
心の他三人は、苦笑いしてから言った。
「お、お願い…します」
心たち四人がちょっと内心ひっかかっていたのは、相手が4,5歳に見えるにもかかわらず、自分達に対し、偉そうに話すことだった。
「まず、言っとく。これから話すことは、お前らがBRFで聴いた事柄よりも、とても非現実的なことだ!心して聴けよ?」
「ん?BRF?」
4人は、少年がBRFの事を知っていることに驚いた。(関係者なのか?)と。しかし『とりあえず話を聞いてみる』という方針にしたのだからまずは聞いてみようと思い、四人は順に頷いた。
「ふむ…。まずこんな『物語』がある。それは、遠い…遠い…惑星の歴史」
「アグダラか〜!!」
ポカン!
その時心の頭を拳で叩いたのはレナであった。
「(ち・ゃ・ん・と・き・い・て・か・らっ・て・言っ・た・よ・な・!!)」
「いってぇ〜〜……」
少年に謝るレナ。
「ごめんなさい!!続けて下さい!!」
「……。」
少しの間、呆れて2人を見たが、少年は天井を仰ぎながら、話を続けた。
「生命なるものの存在なく、水で満たされ『恒星』の恩恵を受けた星があった。往古来今の中で、『隕石衝突』はその星にも起こり偶然の『産物』を生んだ。隕石中に含まれた有機物は水に溶け込み、衝突時のエネルギーは、星の核を刺激し、クレーターの歪みは造山運動を引き起こし、いくつかの大陸が形成され、そこには、『緑』が生成された。」
真剣な顔つきになった心たちの方に顔を向け、話を続ける少年。
「ある時、異変が起きた。空間に『無数の点』が発生した。各『点』は『膨張』し、大小様々な広い楕円の『影』となり、そこから『黒く動くもの』が降っては、地面に落ち、潰れた。長い年月の間それが続くと、『黒の地層』となり地面が影の高さに近づくにつれ、黒く動くものは、潰れずに、着地出来るようになった。それは、後に『ヒト』が現れるまで、その世を君臨し続けた、生物の誕生だった…。」
少年は考察する余裕を与えるためか、ゆっくりと話したあと、心たちの反応を伺う。
(黒く動くもの…ブラモンのことを…いっている?)
(惑星アグダラの歴史か……)
(ヒトがいない時の話…ブラモンがアグダラの原住民ってことか?)
(だけどなぜこいつはそんな歴史を知ってるんだ?)
「まだ続きがある。」
そう言うと少年は、また天井を仰ぎ、話を続けた。
「『光』あれば『闇』あり……。時代もしかり。『暴力』によって支配された『闇の世界』があった。『民』は、その自分達のいる闇の世界を『ブラック・フィールド』と呼んだ。『光の時代』の再来を待ち望む、一部の民は『告発』されるとすぐに、次々と命を剥奪されてきた。ブラックフィールドが150年ほど続いた時代があった。以下に、BF歴750年(F通歴1100年)からの主な出来事を示す。」
心はその部分を聞いて、(うわ……難しそう……)と頭の中で唸り、レナとケイトは、(なんだってこんな話をし始めるのか?)そして茜は、考察することが大好きなのでいつの間にか話に没頭して続きを期待した。
「続きだ。」
そういうと少年はそれ以降の歴史をつぎつぎと挙げていった。
「BF750年、皇帝『ゲイム・ジェン・ヨハン3世』即位。これまでにない『悪政』が始まった。BF752年、『ミラ』という女戦士をリーダーとする、逆賊『EVE』が、『非武装地区』にアジトを置き、武力をつけ始めた。BF755年、ミラ、『非武装地区』を占拠。ミラ城を建設。同年、『世界の浄化』を宣布。BF756年、ミラ軍、都市『A地区、B地区、C地区』を皇帝軍から解放。しかし!同年皇帝は、ミラの城を『見せしめ』として半壊!ミラ城周辺とA地区、B地区、C地区を砂漠化。軍に関与した全ての民を虐殺。BF757年 『ミラ』の公開絞首刑が決定。こうして人々希望はまたひとつ消えた…。そしてそのBRF757年が現在なんだ。つまりアグダラは、今は悲惨なことが続いてる闇の時代ってことだ」
重々しい静寂の中、つららから水滴が滴り落ちる反響だけが残った。




