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感情FEVER 学園編  作者: きんたろ
35/49

35.金色のブラックモンスターと少年

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 江茂志市の夜空には、いつもと変わらず星々が瞬いていた。卓越感情を持たない『普通の人々』にとって、その夜もまた、何一つ変わらない日常の延長に過ぎない。住宅街ではテレビの音が漏れ、帰宅途中の人々は足早に夜道を行き交い、誰一人として空を見上げる理由を持たなかった。しかし――。

 心たちがかつて向かったクレッシェンド山と対をなす、もうひとつの山、ヤマンバ山。その山頂から、天へと突き刺さるように、禍々しいまでの『青い光の柱』が、確かに立ち昇っていた。それは、夜の闇を切り裂く鋭利な刃のように、一直線に空を貫いている。山全体は青い燐光に包まれ、不気味な影となって浮かび上がっていた。

 だが、その異様な光景に気づく者はほとんどいない。卓越感情を持たない人々の視界には、その青い光の柱は存在していないかのように映り、彼らは変わらぬ夜を、何事もなく過ごしていた。

--


 心たち四人が一斉にオミナスベイパーを体験した翌週の日曜日の朝、心たちの元にBRFの咲から緊急の指示があった。BRFの会議室にて。咲は部屋に入るとスタスタと皆の前まで歩いてきて、少し緊迫感を帯びた口調で『指示』を告げた。


「わざわざ来てもらってすまないが、定期的にお前たちの状態を見る必要があるのだ。どうやら身体の異常は無いようでなによりだ。そして至急!ヤマンバ山へ向かえ! ヤマンバ山の異常はお前たちも気づいているとおりだ。そして一昨日『青いビーム』が確認された地域にて、『ある存在』が確認された!そこへいってその正体をつきとめるのだ!」


 ドアを通り抜けると同時に身体に異常が無いかをチェックするシステムが整えられているBRF施設。そして任務中の咲の口調は、普段の咲とレナがおしゃべりする時とは違い、ほぼ命令口調だ。咲の言葉は短く、しかし重かった。その命令を聞いた四人の胸には、オミナスベイパーによって“現実が揺らいだ”あの光景が焼き付いていた。特に、あの赤いビームの記憶が鮮明な心は、この新たな『異変』の予感に胸騒ぎを覚えていた。


---


 指示通り、青いビームの発生源に着いた心たち。ビームが天に向かって脈打つように輝くその発生源は、小さな岩が山のように積まれていたものだった。周りは木々に囲まれているが、断層の壁にはひっそりと口を開けた『洞窟』が見える。ふと岩の山の向こう側に動くものが見えた気がしてそちら側に回り込んでみると、目に飛び込んできたのは、実に驚くべき光景だった。色こそ違えど、あの『神隠し事件』の張本人である『ブラックモンスター』(ブラモン)が岩を積んでいた。その色は金色に輝いていた。


「フゥ……今日は……これくらいでいいか……」


「お、おい、あれは……!」

「ブラックモンスター!!」

「日本語をしゃべったぞ!」

「しかし、全然黒くないな……近くに穴も見当たらない……」


 吃驚しながらも、どこか神秘的な姿に思えた。しかし心には関係ない。心にとってブラックモンスターはナオトを連れ去った敵。己の衝動に負け、その金色に輝く生命体に『突撃ハイキック』をお見舞いしようとする。


「このやろおーっ!!」


 心が走ってブラックモンスターに近づいていたその時、それを止めるように


「うるっさいなぁ……」


 その声と同時に青いビームが石の山に吸い込まれるように消えてゆくその向こう側に、ひっそりと口を開けた『洞窟』の奥から、小さな人影が現れた。歳は五つか六つだろうか。男の子のようだ。神秘的で重々しい雰囲気を放つ『青い法衣』のような服を身につけ、その大きな瞳には、まだ年端のいかない少年には不相応な、深い悲しみと諦めを思わせる暗い光が宿っていた。その『少年』は、両腕を後ろにまわした姿勢で、可愛いアニメキャラクターが走ってくるようにスタスタとした足取りで金色に輝くブラックモンスターの横に走ってきた。


「ぴょん。っと!」


 心は、拍子抜けした声で、


「えっと……、あなた……誰……?」

「よう。お前らは、クレッシェンド山で赤いビームを見たな? そしてその波長を模倣して俺が作ったここの青いビームも……。だからここへ来た。それは、卓越感情を持つ者だけが認識できる『シーク波長』だ。ふふ。お前たちを呼んだのは俺だ。そしてお前!そのブラモンは俺の友人だから手をだすんじゃねーぞ!」

「ブラモンが、友人……だと……?」


 見た目5歳位に見えるその少年は、少し乱暴な口調で偉そうに答えた。そして満足そうな笑みでこう言った。


「お前たち、こっちおいで……」

「?」


『少年』はそういうともと来た洞窟の中へと入っていった。


(敵、ではないのか?ついて行って大丈夫かな……)


心たち4人は、警戒しながら少し距離をとって、とりあえず話を聞いてみることにした。





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