33.251の星
江茂志市最南端。整備された緑地公園の一角に、『川添博物館』がある。
そこには、とある絵画が展示されていた。
そのタイトルは『251』。それを描いたのは、最近脚光を浴びている『柳亮太』という名の画家だった。
「とても不思議な絵ですね。もしや、また新しい道を開拓されてしまったのでは?」
見に来た団体客の老婦人の1人が挨拶回りしていた柳亮太に訪ねた。
「ありがとうございます。もっと感想頂けたら励みになるのですが、この作品を見てどこか気になるところとかありましたか?」
「いやいや、私は絵を描けませんし、いいと思ったらいいと言うだけです。感想なんて恐れ多くて…ごめんなさい。あ、でも強いて言うならこの『赤い線』が鮮やかで好きです。」
風景画を得意としている柳亮太がこの絵を描いたのは、『無から絵を生み出したい』という自身に対する1つの挑戦からだった。
「赤い線!よくぞそこに気づいてくれました!私のこの作品を描いたときの気持ちを聞いていただけますか?」
「おお、作者から直々に。ありがとうございます。」
「とりあえず2次元で考えてください。ここに何らかの計算によって導くことが出来る『曲線』がありますね。この時どんな方向でもいいから、そこに曲線と交わらない軸となる直線を引いて、それに沿って折り曲げ、曲線に沿ってマジックペンでなぞったなら、対象の位置に元の曲線とは『対象』のものが描かれる。当たり前のことなのですが、それがこの作品の『テーマ』です。今まで『想像すら出来なかったものの存在』が、『赤い線』に沿って折り曲げることによって、『お互い』にとって重要で身近な存在になる。『2つで1つ』の事柄。」
「ふむふむ。」
「ノートの切れ端でも出来る、極単純な事ですが、この絵はそれを神秘的に『宇宙』に置き換えたものです。この曲線は地球の軌道で、そして新たにできた曲線はもう1つの星の軌道。その星の名は『アグダラ』。」
「少しSFチックな話になってきましたね。私は嫌いじゃありません。ただ、そのアグダラという星、本当に存在するのでしょうか?」
老婦人の質問に柳亮太は重々しく答える。
「これを私が『無』から描いたと言っても、『私がそれまで経験したこと』は勝手に表現の中に出てしまっているのかもしれません。アグダラ…。存在自体はしているのだと思います。しかし今の技術では『光ではたちうち出来ない距離』の弱点を賄える、このような『折り返し』を宇宙という広大なキャンバスに実現することは出来ない…。逆にそれが出来たなら、いろんな遠い惑星に行けますね。これを実現するのはブラックホールなどを日夜研究しているような天才科学者たちなのでしょう…。」




