30.共鳴
あれから一週間。BRFの会議室で明かされた『予兆』は、四人の少女達の日常に、まるでゆっくりと広がるインクの染みのように、じわりじわりと浸食していく。
アグダラ星……、一年後の地球の危機……、そして謎の生命体「ブラック・モンスター」。BRFより知り得たそれらの事柄は、あまりに現実離れしたことの数々で、夜空に浮かぶ星々のように『遠かった』。だが、その『距離』は今、少しずつ不気味に縮まりつつあるのだ。
その夜、心は、深い闇の中にいた。
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それは夢とは違う体験だった。確かに体はベッドの上にあるはずなのに、意識だけが、底のない水の中に『落ちて』いく感覚。周囲の無数の小さな光の点は、まるで遥か遠くで瞬く星々のよう。それらが、遠い昔に聞いたことのある、微かな声の集合体のように、心の意識に語りかけてきた。
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「ここへ来て……」
「見つけて……」
「希望を……」
その声は『心地よい感覚』だった。声の集合体は、心の『悲しみ』の卓越感情を揺さぶり、共鳴を起こす。泣かないと決めてから決して流すことの無かった涙が勝手に溢れていた。 眼は無意識にその光の点を追っていく。すると光は一つに収束し、ぼんやりと人の形を形成していく。それは、心の脳裏に焼き付いている、大切な少年の姿と同じ形。
「ナオト君……」
口は動いた気はするが、実際に声が出たのかは、心は自分でもわからなかった。投げかけたはずの声に対する返事はなく、闇に溶けた。するとその人の形をした白い影は、さらにはっきりとした形へと姿を変えてゆく。少年は、まるで深い眠りについているかのように目を閉じていたが穏やかな顔で、両腕を広げ伸ばした姿勢で宙に浮いていた。心には『こっちへおいで』といっているように思えた。しかし、はっきりは見えてはいるのに、その体は半透明で、ところどころが黒い靄に侵食されているように見え隠れしている。それは心が実際に昔に見た『ブラック・モンスター』や、『漆黒の穴』の『黒』だった。
「心!心!起きろ!ご飯だぞ!!」
「あぁ……じっちゃん。ごめん、今行くよ……」
それはオミナスベイパーによる体験。心にとってとても不思議な体験だった。




