21.水先案内人
「そしてこれからが本題である!」
勘吉がそういうと同時に会議室のドアが開く。スタスタと歩いてきて皆に一礼し、勘吉の横に座る、20代前半と思しき女性。薄紫色のお団子ヘア、眼鏡の奥の神経質そうな瞳。先程フロアで見てきた他のBRF従業員と同じ『青いスーツ』を着こなし、その胸のIDカードには、『捜査部長』の役職とその氏名が英字で印字されている。
「彼女は西条咲だ。先程の映像内で少し出てきたが、お前達の『これからの人生の水先案内人』となる。」
「西条咲です。よろしく!」
映像の中の始めの頃の西条咲とは雰囲気が違っていて、規律正しい姿勢且つ真剣な眼差しと確固たる声で挨拶する。しかし挨拶された心たちは、先程勘吉が言ったこれからの「本題」とともに漂う、少し重くなった空気の中でどう挨拶したら良いかわからなくなっていた。レナに至っては、幼少の頃より、稽古時間以外にいつも遊んでくれ、相談相手になってくれた自分にとって『おねえさん的存在』の西条咲が、自分達にとって『これからの人生の水先案内人』になると父に言わしめる程の重要な人物であったことに、吃驚していた。
「これからの水先案内人?どういうことだ……」
腑に落ちない心に対し勘吉が言う。
「先程の映像の中で、14年前に地球に降り注いだ宇宙線がその1年後の神隠し事件を引き起こしたという事実、それは後に多方面からの調査により判明している。」
「どのように?」
3人は皆同じ気持ちだったが、特に顔をしかめたレナが皆に変わって質問した。
「とりあえず、科学的につっこんだ話はあえて省かせてもらっている。この点に関して疑問等あらば、個別に俺のところへ来てくれ。だが言っておくが、各々が『天才』と言われるような科学者達が数年かけて証明した事だからな。それを簡単にお前らに理解しろというのが難しい。だがお前たちにとっても、これからそのうち常識的な事柄となるはずだから安心してくれ。」
「あ? なんだ? よく分からないな。それをすんなり信じろと……?いきなり今まで平凡な生活を生きてきた人間に、こういうことだから受け入れろと?」
「なんだレナ、うるせえな。だからそのうち勝手に常識になるから構えなくても良いんだよ!とにかく、14年前の出来事がきっかけで13年前の事件を引き起こしたんだ」
「ふーん……」
レナはしっくりこない様子のままだった。
「そしてこれが私が皆に伝えたいことだ!結論を言おう。実はこの地球に住むすべての人々、否、すべての命あるものにとっての危機が、この江茂志市を始めとして訪れようとしている……。いや、すでに起きているのだ。今も!この瞬間も!」
「へ……!?」
「はぁ……!?」
「どういうことですか!?」
「おいおい……!」
4人とも突然の勘吉の言葉に全く理解が出来ず、ただ聞く専門にまわっていたケイトも茜も思わず声を出した。
「咲……説明してやってくれ。」
「はい……」
片腕を支えにしてひょいとテーブル間の中央側に飛び越えた咲は一言発する……。その言葉は今度は4人を驚嘆と疑惑の念の渦に巻き込んだ。
「それは貴女たちが見た赤いビーム、そして朝比奈ケイト、貴女が最近得た『能力』にも関係がある!!」
「おい待て……何故……そのことを知っているんだ……」
ケイトがたじろぎ、他の三人も驚いたが、思わず声を発したのはレナだった。




