20.黒い生命体
続けて勘吉がボタンを押すと、画面上の咲が喋りだす。
「BRFは、14年前に宇宙線がかすめた地域と、13年前の事件がその地域にのみ点在して起こったという共通点から、『2つの出来事は関係あるのでは?』という仮説を立てた。そしてさらなる調査の為、事件が集中的に起こった地域全8箇所に支部を建てた。その一つがこの建物。江茂志市の『BRF日本支部』。」
「宇宙線がかすめた地域……」
4人は興味深く聴いていた。ナレーションは続ける。
「BRF! part2 黒い生命体!」
黒い生命体…その言葉が発せられた途端、心の目つきが変わるのも無理もなかった。今からこのビデオはあの得体の知れない、ナオト君をさらって行った憎き敵の事を言おうとしているのだから……。
(早く話せ!)
「われわれはこれから提示する生命体を『ブラックモンスター』、通称『ブラモン』と呼称している。黒い怪物。見たまんまの呼称。見たものは皆そんな名前をつけるんじゃないのかな。」
「ブラモン…!!」
その途端、ケイトの目つきが変わった。ケイトは『ブラモン』という言葉に敏感だった。何しろそれは自分自身が『能力』を授かった時に叫んだ言葉の中の一つであったからだ。叫んだときは意味がわからなかったが、発したことだけは覚えているからだった。画面が切り替わり、BRF施設内に入ってきた時にみた、あの『オブジェ』がスクリーンの左側に表示され、その身体の各部位に線がひっぱられスクリーン右側に対応する部分の説明のテキストがふわっと表示された。
・『head』……頭部。緑色に輝く脳をもつ。
・『body』……腹部にあたる部分も緑色の光沢。
・『limb』……四肢をもつ。各関節に当たる部分が緑色。
・『arms』……爪有り。緑色。
・『legs』……爪有り。緑色。
「これは、13年前のその事件である娘がいなくなったあとに、BRFの調査により『壁に描かれていた落書き』から情報を得たもの。また警察は信じなかったようだが『運良く逃げることができた幼子』から得た情報から作り上げたイメージだ。尚、実際にこの生命体を見た『大人』はいない。ある素養があるものを除いて……」
これを聞いて、心は
(わかっていることはそれだけなのか?)
と少しがっかりした。レナにとっても新しい発見は無い。しかし茜・ケイトの2人の気持ちは少し違っていた。心から話は聞いた、写真も見せて貰っている。しかし今日知ったこの巨大な組織、BRFによって明かされるその数々は、2人をさらなる『現実味』に触れさせたのだった。これによって、より心と同じ気持ちに近づいたことは確かだった。
そのオブジェがスクリーン中央に移動すると、360度、ゆっくりと回転させ、おおよその外観を、見る者の脳裏に焼き付かせた。少し経つとその姿形はまたフッと消え、画面は切り替わる。
「これは偶然とらえた唯一残るカメラ映像である。どのように消えるのか良く見ておくように…。尚、このことはご家族に伝えてある。」
そこに映し出されたのは、『エメラルドグリーンの髪』の色をした、桃色のシャツ、薄い黄色いスカートを履いた幼女がマンホール大の暗闇に落ちる様子だった。
(可哀想に……)
そう思ったのは心を除く三人だった。心はこの独特な髪の色の女の子を知っている。否、あくまでも憶測だが、それはクレッシェンド山でみたあの『ビジョン』の中の、そのブラック・モンスターと剣で戦う女性の髪と色が同じであることと、この女の子がその女性の13年前だとすると年も大体その位かと合点がいく。心は黙っていたが、少し強引かも知れないが、それが同一人物であることを期待した。
(きっとこの子は生きている!!そしてナオト君も!!行き方は!?行き方は!?)
しかしその後のナレーションは心が期待する内容ではなかった。
「これがBRFが知りうる、13年前に関するおおよその内容である。そして我々BRF……」
ブチッ……
「どうだ?大体の事はこれで説明された筈。なんとなく、わかっただろう?」
会議室の明りを点け、映像停止を確認した勘吉が言った。




