19.背景
「まず……これをみて欲しい」
そう言うと勘吉は、手にしていたリモコンを再度受信機に向けてボタンを押した。会議室がフッと暗くなるとスクリーンに大きく『BRF』の文字が表示され、軽快な音楽をバックにナレーションの音声が字幕付きで流れた。
「BRF! part1……What is the BRF!?」
3人は眉を上げて画面を見つめた。心は机の上に置いた両手を拳にして縦に並べ、その上に顎を載せた。レナはただ腕組みをし、ケイトは手を膝に載せたまま。茜は組んだ膝の上に肘を置き、人差し指と親指で顎を摘んでいた。
「はぁぃ!皆さんこんにちは。|私は西条咲。このビデオの中では皆さんの水先案内人です。よろしくお願いしますね!では、BRFとはなんぞや?っていうところから解説しまーす!」
「うぉ!咲さんだ!……あ、ごめん。」
吃驚したレナが言った。思わず名前を呼んでしまい皆の視聴の邪魔をしてしまったのだ。
(あぁ、知ってる人なんだ)
それを聞いて茜とケイトが横目でレナを見て微笑む。心はそれを気にすることなく黙って映像を見続けた。画面は映画などでよく見るスタイル。すなわち背景として広大な宇宙の中地球の半分を大きく映し出し、その手前に黒い太文字のフォントで『earth』という文字が大きな文字で表示された。
「ちょっとこれをみてね!」
画面内で、見切りの外から咲が再び出現し、咲の横にモニターが表示された。ナレーションの音像定位がそのモニターからの音声のように切り替わったかと思うと、モニターが画面一杯に拡大表示された。
「これから伝える事は、全て実際に起こった事実である!」
唐突に変わる咲の口調。顔をしかめる心とレナ。ケイトと茜は表情を変えず黙って聴き続ける。
「これはある天文学者の研究でわかったこと。今から『14年前』に、何の前触れもなく、とても興味深い現象が起こった。ある特殊な波長の『宇宙線』が地球に近い宇宙空間で発生し、地球の北半球をかすめた。その宇宙線は、多くの記録データを残した。宇宙線は北緯30度より北にすむ全ての生物の体を通過した。」
「そしてその一年後。ある事件がこの江茂志市に起こった……」
「神隠し事件……」
茜が呟き、ケイトも頷いた。その事は江茂志市ではわりと有名な話であったから知っていたのだ。
映像内の咲は続ける。
「『江茂志市神隠し事件』。それは幼い少年少女達がある日忽然といなくなる事件だったが容疑者は見当もつかず、全て未解決のまま……」
脳裏にあの時のナオト君の様子が蘇った心は、姿勢を変え前のめりになった。心の心情を察するとレナは目を瞑った。ケイトと茜はただ真剣に聞いていた。
「勿論警察も自治体も動き、そのような事件が再発しないように『監視カメラ』の数もかなり増えた。しかし、それも虚しく同じ事件は立て続けに起こったが、突き止めることは出来なかった」
「あれで警察とかが動いてたとは思えないけどな!」
ナレーションの後、当時の警察のダメ出しをいれたのは心だった。心は13年前、警察にありのままの出来事を伝えたが、全く信じて貰えなく、その時に頼るのをやめたのだ。
「そして日本だけでなく北半球の八箇所の地域で似た事件が多発した。被害の大きさで言うと最大の被害を受けたのはアメリカのミシシッピ州、次いでエジプト、インドなど。そして4番目がここ。日本の江茂志市だ。」
「BRFというこの団体は、最初は事件の被害者の親たちが興したものだ。その他有志の方々や大企業の力を借りることにより巨大な組織になった。各国政府とも密接な関係・連携もある、要所要所の地域に支部を持つ、世界規模でありながら特別な秘密機関なのだ」
そこで勘吉がビデオを停止する。心が思わず声をあげる。
「え~、BRFってそんなに凄かったんだ!?……あ、ごめん。」
しかしついでに疑問を投げた。
「でもなんでこんな所に?」
「こんなところで悪かったな!だから、言ってるだろうが。特別な秘密機関だと…」
心が素朴な疑問を投げると、勘吉はそう答えた。




