18.207会議室
「レナがふたりいるー!!」
「いや、妻のジェイダだ!」
心が言うと勘吉が突っ込む。
「瓜二つ……」
「わぁ……」
茜もケイトも吃驚した表情だった。そこにジェイダが話しかける。
「うふふ。こんにちは!初めまして。えーと、貴女は心ちゃん、|貴女はー、ケイトちゃん。そして貴女は茜ちゃんでしょう!よろしくね!」
「まぁ……そういうことなのでよろしくー。」
勘吉の横に、先程とは違うアンドロイドがやってきて勘吉に話しかける。
「支部長、207会議室が空いていますのでそちらへどうぞ。」
「あぁ、わかった。あ、そうだ、すまんがサキも呼んできてくれ。」
「かしこまりました。」
そういうとアンドロイドはファッションモデルのように振り向くと静かに元来た方向へと去っていった。
「みんな、会議室で話したいのでついて来てくれ」
勘吉に先導され会議室へと向かう。心、ケイト、茜の3人はこの施設内の雰囲気を楽しみながら後をついて行った。
パワーが切れたのか、誰かを呼ぶように手をあげたままの姿勢と笑顔のまま、まるで時を止められたように止まっているアンドロイド、デスクで頭を掻きむしりながら作成した資料に赤で斜線を引いていく、先程口喧嘩をしていた男。その横で、どうみてもゲームしながら仕事をさぼっている別のアンドロイド。その向こう側にはガラスで一面仕切られた『部屋』で人間の子供とアンドロイドの子供達が一緒にブロック遊びをしている。
ケイトはその子供達の様子を見て、ケイトの家にも同じようなAIロボットがいるからか、ふと『アンドロイドに子を持つ事が許されたのはいつからだったか…』と考える。もっとも、アンドロイドに人間と同じ権利を与えるきっかけになったのは実のところ、朝比奈グループ傘下の会社の功績からだった。
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この十数年で、ロボット工学三原則に適合していることを条件に、かなり自由な権利がアンドロイドに与えられてきた。その経過を知るこの世界に生きる人々は『平和共存への13年間』と呼んだ。
『ロボット工学三原則』。それはーーー
一、『人間への安全性:人間に危害を及ぼすな』。
二、『命令への服従:人間にあたえられた命令に服従しろ』。
三、『自己防衛:前述の二つに反するおそれのない限り、自己を守らなければならない』。
というものだ。ルール・原則・鉄則・規則…それが作られる時、それぞれの立場で『違和感』が生ずる。この場合は、作った側である人間のためのルールがアンドロイドに違和感を与えた。モノに自我・意識が芽生え、違和感が『疑惑』や『理不尽』に変わる時、そこで起こるのは規模の大小はあれど、『紛争』である。そしてそれが戦争であった場合、それに勝利したものが正義となってしまう。コンピュータ技術が戦争に利用されるようになって久しいが、時代がかわり、発展していったそれらの技術をAIも利用するようになった。AIがAIを駆使する時代。こうなったら人間は勝てないとわかってしまっているのは既に万人の知るところであった。そうならないようにルールを第一に設けたのだが……。
AIが発達していくにしたがって、その三原則とは別のルールも存在するようになった。それは一見『対等』な関係を生む。平和共存への13年間の成果だ。その暫定結果が、先程垣間見えたアンドロイドと男の口喧嘩なのであった。そんな世界線の地球で心たちは生きている。
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2分ほど勘吉についていくと、先程のアンドロイドがいっていた207号会議室に辿り着いた。内側の胸ポケットから出した認証カードをドアの横の装置にスキャンさせる勘吉。ドアが開くと勝手に中の部屋は明るくなった。会議室は他の一般の部屋の2倍程の広さで、そこにはざっと30人分程の青い一人がけチェアとミーティングテーブルが用意されていた。
「まぁ、適当に座ってくれ。」
そう言いながら奥の椅子に座る勘吉。ジェイダも隣に座る。レナが先導し、勘吉達の対面にあたる手前の列に心たちを促し座らせた。勘吉は何かの「リモコン」を部屋の正面上部にある装置へ向け、ボタンを押した。
「解説用のデータはもう共有してある……」
「ふむ」
勘吉がいうとジェイダが頷いた。すると
ウィーーーーーン…。
80インチ程のスクリーンがゆっくりと垂れ下がってきた。




