17.ヒトとAIロボット
「しかしBRFなんて聞いたことないぞ……」
「だから『極秘』だといっているだろう」
「じゃぁレナや勘吉はなんでそんなところに私達をつれてきたんだ?」
「それもこれからわかるよ」
「ふーん」
心達の会話。その近くのデスクでやり取りする二人が居た。正しくは、人間の男性一人と、女性型のAIロボット一体だった。女性型のロボットはズボンを履いていたが、髪型と顔立ちで女性だとわかる。その『二人』の話し声が聞こえてくる。
「あれ?せっかく纏めて置いといた資料が消えてる!!どこ?」
「だから私じゃないってば。」
「さっきからここに居たのは俺とお前だけだ!!俺は捨ててないし。」
「無くなったのを私のせいにしようというの?」
「だからお前しかここに居なかったんだよ!」
「そもそも、無くなった場合の事、考えてなかったの?コピーしとく、とか」
「そんなこと考える訳無ぇだろうが。時間がない!」
男性が探している資料と思しきそれを、AIロボットはズボンの後ろのポケットに突っ込んでいた。
「あ……」
それを見つけた茜がちょっとニヤけると同時にケイトもそれに気づき、口に手をあてた。
「あら……」
AIロボットがこの男の『言葉使い』に耐えきれなくなったのが理由かはわからないが、男性が言うその『纏めた資料』とやらをAIロボットが意地悪して隠しているようだ。AIロボットは言う。
「物事のケースは、幾重にも分岐する。つまり、貴方が席を空けた時に『纏めた資料がそのまま置いてあるケース』と『無くなってしまうケース』。後者のようなことが起こらないよう、これからはしっかりと保管する事ね!はい!これ。それから、いい加減にそのAIロボットを見下すような言葉使い、やめてよ!タメ語ならいいわよ。」
AIロボットは隠し持っていた資料を男に手渡した。
「あ~!こんの野郎!!やっぱりおめえじゃねーか!!」
茜はAIロボットと人間の会話を聴いて、どこかで聞いた事のある話だなと思った。何かの本だったか、物事の『case』は考えられるだけの分岐があることを考えるきっかけとなった。茜は考える。(たとえば私達は、四人とも女子高校生だけれども、『ひょんなきっかけ』で、自分達は女性として生まれた。でも何かが違えば逆であったかも知れない。そして自分で進路を決めて江茂志四高に通っているが、『ひょんなきっかけ』があれば三高の生徒の人生であったかも知れないし、黒高生徒の人生だったかもしれない。人の人生は枝分かれの連続。これはただの一つのケース、ひとつの世界線……。)そんな事を考えるとAIロボットのきまぐれなイタズラが、少し感慨深くも思えた。
「おい、お前らうるさいぞ。」
向こうから戻ってきた勘吉が二人を注意した。
「あ、支部長。すみません……」
AIロボットとその男の重なった声が勘吉に謝罪すると、その二人はいそいそと去っていった。
「いやぁ、すまんすまん!お前ら待たせたな。とりあえず、これが妻のジェイダだ!」
やや前屈みの姿勢で顎に右手の人差し指と中指を添え、流し目で心・ケイト・茜の3人を順に観ていくその瞳と髪の色は、レナのそれと同じ色をしていた。




