16.青い空間
暗い非常階段の踊り場を4回程降りたところに、大きく頑丈そうな『シャッター』があった。そこには大きな太字のフォントで「BRF」の文字が記されていた。
「最先端へようこそ!」
そういうと勘吉はシャッターを開けた。レナは、心を横目で見ていた。
心、ケイト、茜はその空間の広さとこれまで見てきた神宮寺家とは全く異なるこの空間の雰囲気に驚いた。奥の突き当たりまでおよそ百メートル。高さも五十メートルほどはある。全体を覆うのは、近代的としか言いようのない、澄んだ青色の広大な空間。いたるところでLEDが点灯、点滅し、その空間では動く『モノ』も多い。コンピュータデスが至る所にあり、向こう側には機械室もある。恐らくサーバーラックのある部屋となっているのだろう。
心達のいるフロアでは、人間にアンドロイドだと認識させる為の色のIDカードをぶら下げたそれらアンドロイド達と、従業員らしき人間達がそれぞれの仕事をこなしているような風景が見える。ざっとみてその数は200…いや300。そしてさらに3人を驚かせたのは、若干暗めな入り口付近にある、直径七十センチメートル位の鉄柱の前で、移動はしないが、動いている『それ』が目に入ったからだった。
高さおよそ一・五メートルの『黒い物体』。2つに尖った先端をもつ頭部、四肢があり、右、左と首を動かし、あたりを伺っている様子に見えるのは、頭部の脳に位置する部分と関節の部分が緑の蛍光色で光を放っていたからであった。謎の生命体――そう呼ぶしかない存在だった。床には、真っ黒に塗りつぶされたような楕円があった。生命体はまるでその楕円から出てきたように見える感じで立っていた。それが鎖で隔たれ、高さ20センチ程の長方形のステージ上に『展示』されていた。
「こいつは……!」
それに一番衝撃を受けたのは心だった。咄嗟に攻撃体制に入り、飛びかかろうとする。それはナオト君を引きずり込んだあの黒い生命体と瓜二つだったからだ。レナは勿論、茜にもケイトにも写真で見せた、あの生命体に……!
「待て心!」
心の動きを予想していたレナが心を後ろから羽交い締めにして止める。その物体の頭部を狙って蹴ろうとし何度も何度も空振りする心に対し、レナは言い聞かせる。
「待て……!心……!落ち着け!これは、ただのオブジェだ。」
「え……」
「少し観てればわかる。単純な動きしかしていないことに。10秒ほどで同じ動作に戻る。これは単純な動きをしているオブジェなんだ。生きているようにリアルだけれど。」
「…………。う、うん。でもどうして……?」
「何故これがここに展示されているのかはあとで話すから。」
「…………。わかった。」
その様子を見ていた勘吉がいう。
「すまんな心、吃驚させて。ところでちょっと皆、ここで少し待っててくれ。妻のジェイダを連れてくる。」
勘吉はそういうと、通路の奥へと歩いていった。
レナが説明した。
「アメリカを主軸とする、『Black Research Foundation』という極秘の巨大組織がある。通称『BRF』だ。ここはその日本支部の施設なんだ。そしてこのオブジェ。これはそのBRFが『ブラックモンスター』と呼び、研究している生命体なんだ。」
「なんだって……」
「まぁ……」
「話がでかくなってきたな……」
心、ケイト、茜に、不安と期待の感情が交差した。




