11.告白
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二人で河原で夜空を眺めていた時、レナは一際輝く星をみながら言った。
「心は、どうしてそんなに強さを求めるんだ?」
「自分が正しいと思う行動をする時、強さが伴っていないと駄目な時があると思ってるから」
レナが真剣な声だったので心も真剣に応えた。
「いつか、その時が来るからってこと?」
「うん」
「それは、いつなんだ?」
「わからない……」
「えっと…誰かを助けようとでもしているのか?」
心は徐ろにスマホを取り出し、スマホとスマホケースの間から、茶封筒を取り出した。
「それは……?」
「中には、線香花火が入ってる。いつも持ってるんだ」
「ふむ……。」
「小さい頃よく一緒に遊んでいた一つ歳上の幼なじみが自分のお小遣いで買ってプレゼントしてくれたものなの」
「ほう……。」
「その幼なじみの名前はナオトくん。小さい頃いじめっ子にいじめられていた時、いつも助けてくれたんだ。とても強い男の子だった。」
「初めて聞く名前だな。幼なじみ?私会ったことないよね」
「うん。もういないからね。」
「引っ越しちゃったの?」
「ちがう。10年以上前のことだけど、【神隠し事件】が多発してたの、知ってる?」
「知ってる。それはこの街じゃ有名な話だからな。」
「ナオトくんは、その犠牲者なんだ」
「え?!」
「ナオトくんが連れ去られた時、私はすぐそばに居たんだ。遊んだ後の帰り道の事だったから。警察には事件のことを話したけれど、信じてもらえなかったから諦めた。」
「え?何があったんだ?」
心は立ち、大きな木の手前にある【杭】が打ち込められている所へ歩いた。
「二人でこの木の下でしゃがんでいたんだ。」
「え!?そこで!?」
「そう。丁度ここ。」
「で!?」
「地面に直径10センチくらいの真っ黒な穴を見つけたんだ。表現が難しいのだけど、真っ暗というより、本当に真っ黒だったの。だからどうなっているのかとどうしても気になって、手を入れてみようかと、私が手を伸ばしたんだ。」
「う、うん」
「そしたら10センチ位だった小さな穴が一瞬で膨張したんだ。それで私が中に落ちそうになった時、ナオトくんが体当りして私を突き飛ばしてくれたの」
「うん」
レナは夢中になって聞いていた。
「でも突き飛ばされ転んだ後に振り向くと、ナオトくんを捕まえている黒い生き物が見えたの。」
「黒い生き物?」
「ナオトくんを助けたかったけれど、震えて何も出来なかった。ナオトくんは、【来るな】と……。」
「ナオトくんとその生き物が穴に吸い込まれる様に消えると、その膨張していた穴が今度は一瞬で収縮して消えたの。ナオトくんは、私のせいで何処かに消えてしまったんだ。」
「えぇ……!?」
「でもどこかで生きてる気がするんだ。いつかチャンスが出来たら、助け出そうと思っている。だから、私は強くならなくちゃいけないんだ。涙はその時に枯れたから、もう出ないんだ。」
「そんなこと……とても信じられないな……いや、信じたいよ……ただ、現実離れすぎていて……」
「その時、ナオトくんが施設に置いてあった使い捨てカメラを私が持っていたんだ。そこの木、二箇所、横線が縦にならんでいるでしょう?ナオトくんが誕生日だったからお互いの背の高さにあわせて木に線を引いて、記念に写真撮ろうって」
「ん!? あ、これ!? 本当だ、たしかに横線が引いてある!」
「そう。そしてその使い捨てカメラでその瞬間を撮っていたんだ。警察にも見せて、起こった出来事を伝えたけれど、写真がピンボケしてるしって全然相手にしてもらえなかった。これを見て……」
心はレナに問題の写真を何枚か見せた。幼き頃の心が木の前で写っていて、男の子がこちらに向かって微笑んでいる写真。二人の背丈の高さのとおりに木に横線の目印をつけた写真。森の中を意味もなく撮られたような写真。そして、十センチ程の黒い穴の写真と直径1メートルほどの黒い穴の写真。最後の写真は、レナが今まで見た事のない生物の頭部と思しき物が、こちらをみているように見える写真だった。
そのように見えるのは心が説明してくれたからだが、それを疑いなしに信じることができるのは、先程から親友の心が話している時から伝わってくる真剣さからくるものだと思った。
「まじかよ……」
「吃驚でしょう?」
「あぁ、でも信じたわ。今の技術なら簡単にアプリでこのような写真を綺麗に作る事はできると思うから、警察はいたずらだと思ったのかもな。私は、その前に心はそういう事自体するほどスマホいじってなさそうだし、仮に出来るとしてもしない奴だとわかっている。だから信じる。しかしなんなんだこの、生物は……みたことがない。真っ黒で、目や爪の部分が緑色に光ってるな……」
「うん……、レナはやっぱり親友だ。信じてくれてありがとう。これがね、私が強くなりたい理由なんだ」
「なるほどな。あぁ、そして、だからよく、学校からの帰り道わざわざここにきて一回休憩するのか。やっとわかったよ」
「そう。」
一際輝く星を見ながら二人は少しのあいだ沈黙した。レナは、信じがたい事実ってあるもんなんだな、と思った。心は、だれにも言ったことがないナオトくんの事、レナには言って良かったなと思った。
その時、
「あ……流れ星……!!見た?」
「うん!見た」
「いつか、会えるといいな。そのナオトくんに。」
「うん。」
それは中3の夏の事だった。
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