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49.土精《2》

 落下しながら振り下ろしたフラガラッハでノームを斬り、うまく着地をしてから返す刀でもう一度ノームを斬った。


 その後はノームから距離を取り、インテリジェンス・シールドを召喚してノームの反撃に備える。


「痛いなぁ……」


 ノームはフラガラッハに斬られて血が(したた)る自分の右腕を見ながら、そう呟いた。


「お前、ノームだろ」


 俺がノームにそう問いかけると、ノームは心外だと言わんばかりの表情で反論をする。


「失礼だね、君は。私はノームではなくノーミーデスなんだけど?」


 あん? ノーミーデス? じゃあこいつはノームじゃねぇってことか?


「ノーミーデスはノームの女性形だ」


 するとちょうど俺の横に降り立ったクロウが、ノーミーデスについて教えてくれた。


 なるほど、ノーミーデスはノームの女性形なのか。言われてみると目の前にいるノーム──否、ノーミーデス──は女らしい顔立ちをしていた。


 ショートヘアだったから気付かなかったな。こうして見ると、意外と可愛い顔しているじゃないか。


「まあ性別は関係ない。さっさと倒してアイテムをドロップさせるぞ」


 俺がそう言ってフラガラッハの剣先をノーミーデスに向けたら、彼女はクロウに話し掛ける。


「うわぁ……出会い頭に剣先を向けるなんて、私達なんかより人間の方がよっぽどモンスターじゃないか。そこの八咫烏もそう思わないかい?」


「む、我に聞いておるのか? ふぅむ、確かに人間はちと傲慢(ごうまん)(おご)っているな。それは否定せぬよ」


「だろう?」


「しかし、だ。全ての人間が等しく傲慢というわけではない。そこにいる矮小なる人間の小僧も悪人ではない。まあ、こやつは殺人を犯している故に、人によってはこやつを悪人と定義するかもしれぬがな。少なくとも、我はそこな小僧を嫌ってはおらぬ」


 クロウの俺に対しての評価を初めて聞いたが……案外と高評価だった。


「そうかい? というか、モンスターである君が何で人間に協力しているのさ?」


「小僧の異能(スキル)によって従っている。だが、別に嫌々従ってはいないので安心してほしい」


「ふーん、そんなスキルを人間が持っていたのか」


 ノーミーデスとクロウが悠長に会話をしている。う~ん、普通に話しているノーミーデスを攻撃するのは罪悪感がすごいことになるんだが。


 知能が高いCランク以上のモンスターは、こちらの会話に応じてくれる場合も多い。ただそのような場合でも最終的には、会話に応じてくれたモンスターがこちらを攻撃する。


 なぜなのか気になってクロウに尋ねたら、何とモンスターは生まれた時から人間を殺すことを本能に刻み込まれているらしい。


 だからモンスターが会話に応じても、結局友好的な関係の構築は不可能だ。


 ただし何事にも例外がある。俺の異能によってカードから召喚されたモンスターは、人間を殺したいとは思わなくなるらしい。


 俺の異能が破格の性能すぎるんだが!?


「さて。そろそろ戦闘を始めようか」


 そうノーミーデスが言うと、クロウと会話を続けていた彼女の纏う雰囲気が突如として一変した。


 お、やっと戦闘再開かよ。


「そんじゃあ、先制攻撃だ!」


 『神木の加護』によって何倍にも増した脚力で地面を蹴って一瞬でノーミーデスとの距離を詰めて、ノーミーデスに向かってフラガラッハを突き出した。


 しかしあともう少しで頭に突き刺さるというところで、ノーミーデスは後退してフラガラッハによる突きを避ける。


「『母なる大地よ、大地を司る大精霊たる私に力を貸し給え。大地よ震えろ。大地よ揺れろ。大地よ震動せよ』!」


 俺の攻撃を避けてすぐ、ノーミーデスは手のひらを俺に向けながら呪文を(とな)え始めやがった!


「やべぇ! ノーミーデスから離れるぞ!」


 慌てながら俺はクロウに飛び乗り、ノーミーデスから離れていく。


「──『アースクエイク』!」


 ノーミーデスが魔法名を唱えた瞬間、周辺一帯の地面が激しく震動する。それはまさしく天変地異だった。


 地面は荒波のように激しく揺れ、ゴゴゴゴッという地鳴りの鈍い音が天へと轟く。


 無論これは、普通(ただ)の地震なんかではない。ノーミーデスのスキルによって引き起こされた現象だ。そのスキルの名は『地魔法』。


 そう、そうなのだ。ノーミーデスは今現在、魔法を行使している。


 クロウいわく魔法とは普通のスキルより汎用性が高いため、今みたいに局所的な大地震を引き起こすことだって可能だ。


 やっぱり魔法はすげぇな。何としてでもノーミーデスのカードが欲しいぜ。


 ドワーフから逃げたあの日から今日までの二ヶ月の内にノームを数十体は倒しているんだが、まだ一度もカードがドロップしねぇんだよ。


「いくらノーミーデスがCランク上位相当のモンスターだとしても、局所的とはいえ東日本大震災レベルの大地震を引き起こせるとか凶悪すぎだろ……」


 周囲を見回してみると、建ち並ぶビル群が先ほどの地震によって軒並み崩れて瓦礫と化していた。


「うへぇ。今のは震度どれくらいだ?」


「マスター! 意識をノーミーデスへ集中させろ! 戦闘中によそ見すれば、最悪の場合は死ぬぞ!」


 クロウに注意されてノーミーデスに目を向けると、彼女の立っている地面だけが先ほど魔法によって引き起こされた地震によって崩れていなかった。


「魔法はあんな細かい調整まで出来るのかよ!」


 汎用性が高いだけはあるじゃねぇか。


 ここ二ヶ月の内に何十回もノームと戦ってきたから知っているが、ノームと戦う際には地面に足を付けてはならない。


 理由はすでに察しているかもしれないが、ノームの持つスキル『地魔法』は大地を思い通り動かすことが出来るのだ。


 そして魔法は汎用性が高い。つまり当然ながら、『地魔法』によって大地を動かせる範囲はかなり広い。そう、自由度が高いということだ。


 要するに『地魔法』はさっきみたいに大地震を引き起こすことも出来れば、一瞬にして峡谷(きょうこく)のような地割れを起こすことも可能。


 まさに万能という言葉に相応しいのが『地魔法』、ひいては魔法全般だ。


 地面に足を付けながらノーミーデスと戦闘することは論外なので、こうなってしまうとクロウの背中から遠距離攻撃をするしか攻撃手段はない。


 俺が持つ遠距離攻撃と言えばグリモワールと──




「───これだよな!!」


 ポケットから蔦の切れ端を取り出し、『神木の加護』の力によってその蔦を成長させる。そして成長して長くなった幾本もの蔦を束ねて、それを操る。


 俺は『神木の加護』の植物を操る力を、モンスターや人を拘束するために使ってきた。だが、それ以外の使い道もちゃんとある。


 例えば、こう!


「来たれ、ウッドゴーレムよ!」


 蔦を成長させながら操り、自分の体に纏わせる。これぞアーマーモード、もといウッドゴーレムモードだ。


「のぅマスターよ。重いのだが」


「あ、すまん」


 クロウの背中に乗っていることを忘れていたようだ。


 クロウの背中から飛び降り、地面に着地する。自分の体に蔦を纏わせるウッドゴーレムの状態であれば、地面に足を付けても問題ない。俺の本体が地面から離れているからだ。


 つっても、ウッドゴーレムの耐久力はDランク上位のモンスターと同等くらいだ。なので、ノーミーデスの『地魔法』を防ぐことは出来ない。


 まあでも、ないよりはあった方がいいだろ。


「クロウ、フラガラッハ! 全力でノーミーデスを袋叩きにするぞ!」


「わかっておるわ!」


「わかりました!」


 幸いにも、魔石を消費して作ったポーションが大量にある。『ポーションのボトル』の魔導具を使い、二ヶ月間コツコツと地道に作ってきたものだ。


 なので瀕死の重傷を負っても、ポーションがあるから死にはしない。Cランクモンスターの魔石を消費して作ったポーションならば多少の部位欠損すら回復可能だし。


 こうして俺達は、大地を司る大精霊・ノーミーデスとの本格的な戦闘へと突入したのだった。



 三日連続ですみません。


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