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24.三日後

 河童の襲撃を受けてマイホームにヒビが入ってから三日後の朝。俺の手には古い日本家屋のイラストが描かれたカードが握られている。


 そう。このカードこそDランクモンスターの中でも、否、Cランクモンスターを含めても最強の防御力を誇るマヨヒガである。


 このカードはつい先ほど、日課となりつつあったマヨヒガ狩りの際にドロップした。


 これでやっと拠点の計画を本格化に進められるな。


「おめでとうございます、マスター!」


「いや、フラガラッハのお陰だよ。フラガラッハの『破壊斬撃』のスキルがなければ、こんな効率的にマヨヒガは狩れなかったし」


 マヨヒガ狩りにおけるフラガラッハの活躍は(いちじる)しい。以前一度だけ『破壊斬撃』を使わずにマヨヒガと戦ってみたが、本当にDランクモンスターかってぐらい強かった。


 ……ぶっちゃけ、河童より苦戦したよ。まあ河童もマヨヒガもモンスターとしては特殊だから、他と比べるのが間違っているのだが。


「これで安全な拠点が手に入るのぅ。それで、マヨヒガを召喚する場所は決めたのか?」


「あの時のゴルフ場にしようかなって思ってるよ」


 関所を設けていて俺に壊滅させられたヤクザの本部が近くにあったゴルフ場だ。あのゴルフ場は愛知県の名古屋にあり、東京から離れているので戦いに巻き込まれることはないだろう。


 ゴルフ場だから至るところにトレントを配置しても違和感はないし、防衛もしやすそうだ。それにゴルフ場にある池に河童を潜ませるってのも面白そう。


「マヨヒガの性能はいかほどだ?」


「こんな感じ」


 俺はマヨヒガのカードに書かれているステータスをフラガラッハや八咫烏に見えるように(かか)げた。




種族:マヨヒガ

ランク:D

攻撃力:60

防御力:320

【スキル】

●門兵召喚:最大二体の眷属を召喚可能で、殺されても何度も召喚出来る。

●意思ある屋敷:害意や悪意を持つ者、もしくは許可を得ていない者が敷地内に侵入すると眷属が絶大に強化される。

●屋敷改変:屋敷の内観や外観をある程度自由に改変することが出来る。

●隠形:発動すると生物に認識されにくくなる。




 マヨヒガの持つ『門兵召喚』のスキルによって召喚されるのが眷属だ。そしてこの眷属が『意思ある屋敷』のスキルの効果で強化され、Cランクモンスター並みの強さになる。


 それと、『屋敷改変』のスキルによって屋敷の内観と外観をいじれるらしい。自分好みの屋敷にしてやろう。


 ちなみに、マヨヒガが召喚する二体の眷属のステータスも見ることが出来た。




種族:マヨヒガの門兵

ランク:D

攻撃力:75

防御力:335




 眷属がマヨヒガより攻撃力が高いのは笑えるな。マヨヒガは防御にリソースを割きすぎているから、本体は決して強いわけじゃない。


 んでスキルが表示されてないけど、そもそも強化前のマヨヒガの眷属はスキルを持っていないらしい。クソ弱いじゃん。


 見た目は人型だけど、人間というか鎧を着たマネキンみたいな感じになっている。


 そして次に『意思ある屋敷』スキルによって強化された門兵のステータス。




種族:マヨヒガの門兵

ランク:C

攻撃力:1000

防御力:1300

【スキル】

●自爆:体を爆発させ、自身を中心に半径10メートルの範囲内にいる敵にダメージを与える。

●武術:一通りの武術が達人のように繰り出せるようになる。




 強すぎる! 攻撃力が75から1000に、防御力が335から1300になるとか強化率がおかしい!


 スキルの『自爆』もかなり凶悪だ。以前マヨヒガに『破壊斬撃』を使わず挑んだ時もこの『自爆』のスキルが厄介だった。


 『自爆』スキルを発動すると眷属は死ぬのだが、その代わりに周囲にいる敵にかなりのダメージを与えるのだ。


 この敵に与えるダメージというのが、八咫烏いわくトレント程度なら一撃で死ぬレベルらしい。なので俺は全力で避けたよ。


 門兵が自爆してもまた湧いてきて自爆するっていうループが繰り返された時は泣きたくなった……。


 効果を見ればそれほどでもないじゃんと思うかもしれないが、『武術』もすごく強力なスキルだ。


 門兵は強化されると腕が六本に増える。その増えた六本の手にはそれぞれ異なる武器が握られていて、『武術』スキルにより六本の手からどれも達人級の技が繰り出されるのだ。


 どうだ、悪夢みたいだろ? 剣やら槍やら斧やらハンマーやら手裏剣やらが絶え間なく迫ってくる。しかも手裏剣は投げてもブーメランのように手に戻ってくる機能付き。


 加えて最後の一本の手は盾を握っており、こちらの攻撃をその盾で巧みに受け止める。


 そんな化け物を同時に二体も相手しなくてはいけない上に、倒したとしもまた湧いてくる。マジでDランクかよこいつ。


 それに門兵を倒してもマヨヒガは痛くも(かゆ)くもないときた。そりゃCランクモンスターでも相手したくないよな。マヨヒガに侵入さえしなければ強化もされないんだから。


「改めてステータスを見ても強いのぅ」


「だよな、こんなの反則だよ」


 フラガラッハの『破壊斬撃』を使わずにマヨヒガと戦った際は、門兵を八咫烏に足止めしてもらって本体を倒すために屋敷を一時間も探し回った。


 マヨヒガ本体は『隠形』のスキルによって常時生物に認識されにくくなっているので、腐肉喰いを総動員しても見つからなかったのだ。


 最終的に屋敷の壁や床を全部ぶち破ってみたら、マヨヒガ本体が隅で隠れているのを見つけたのでフラガラッハで切った。戦闘を開始してから倒すまでに計三時間ほど要した。


「でもそんな反則級のマヨヒガが味方になるって考えると、ものすごく心強いよな」


「うむ、確かに」


 まずはマヨヒガのカードがドロップしたことを南原さんに伝えよう。マヨヒガのカードが手に入ったので近々拠点を移すわけだし、そのことも言っておくか。


「フラガラッハ、八咫烏! 帰るぞ!」


「わかった」


「わかりました!」


 俺はヒッポグリフを召喚して跨がり、館山に戻るように指示をする。


 なぜ無人島ではなく館山に行くのかと言うと、南原さんは今先輩のところに預けているからだ。南原さんのメンタルケアを先輩に頼んだからである。


 男の俺より同性の先輩の方が悩み事を相談しやすいだろう。


 ちゃんと安全のために、先輩の家の周辺にトレントを五体ほど配置した。


 別にこの三日間何もしていなかったわけではない。河童にトレントを殺されてしまったため、トレントのカードを集めていたりもした。


 それによってトレントのカードが六枚手に入って、その内の五体のトレントを召喚して南原さんと先輩の護衛として置いてきた。


 他に三日間でやったことといえば『河童の皿』についても調べてみて、いろいろとわかったことがある。


 『河童の皿』によって召喚した河童が死んでも、Cランクモンスターの魔石を皿の上に載せて捧げたら生き返るのだ。


 だから『墜ちし水神の意地』を発動してから死んでも、Cランクモンスターの魔石を消費すれば復活する。


 ただ『墜ちし水神の意地』を発動して強化しても『仮初めの肉体』のスキルがあるので、オリジナルの二分の一の力しか発揮出来ていなかったが。


 それでもCランクモンスターを捨て駒として使えるようになることの意味は大きい。Cランクモンスターの魔石も貴重といえば貴重だが、その程度で河童が復活出来るなら費用対効果は見合っている。


 これが河童のカードにはない、『河童の皿』のメリットだと思う。


 もし『河童の皿』によって召喚した河童が復活出来ないようになる場合があるとしたら、皿が割れたりした時かな。皿を割って試してみたいが、河童が召喚出来なくなったら嫌なのでしないけどね。


「おーい、俊也!」


 下から俺を呼ぶ声が聞こえてきたので見下ろすと、先輩と南原さんが家から出てきて俺に向かって手を振っていた。


 どうやら先輩の家に到着したらしい。八咫烏より飛ぶスピードの遅いヒッポグリフであるが、新幹線とかより断然速い。だから何か考え事をしていると、いつの間にか目的地に到着していることが多々ある。


 今回もまさにそれで、いつの間にか先輩の家の上空にいた。


「ヒッポグリフ、下に降りてくれ」


「グルルルルルルッ!」


 ヒッポグリフは俺の指示にうなずいて鳴きながら高度を下げていき、地面に着地した。


「どうして先輩と南原さんが外に?」


「ちょうど外に出て(すず)んでいたところだったんだよ。そしたら、空からバサバサって音が聞こえたからね」


 今は電気とか使えないので扇風(せんぷう)機とかエアコンも動かないから、涼むなら団扇(うちわ)(あお)ぐか外に出るしかない。


 それで涼んでいたら、ヒッポグリフに乗った俺がいたってことか。


「あ、それで報告が。マヨヒガのカードがドロップしました」


「何?」


「本当ですか!!」


 先輩と南原さんには俺の異能などを伝えていて、マヨヒガがどんなモンスターなのかも知っている。


「ついに島から拠点を移すんですね!」


「ええ。マヨヒガを召喚する場所は決めていますので、今から行きましょうか」


「どこを拠点にするんだい?」


 先輩が尋ねてきた。先輩はマヨヒガを中心に国を造ることを知っているので、どこかわくわくしたような表情だった。


「愛知県名古屋市にあるゴルフ場にしようと思っています」


「なるほどな。ゴルフ場ならば河童やトレントを配置出来るし、敷地が広大だからマヨヒガを召喚しやすいな」


 日本家屋だけでなく、庭や塀を含めて一体のマヨヒガと扱われている。なのでマヨヒガを召喚するにはかなりの空白スペースが必要となる。


 ゴルフ場なら広いので、自由なところに召喚することが出来るのだ。


「私の荷物は家にたくさんあるから、荷造りは時間掛かるぞ」


「なら、先輩にこれを渡しておきます」


 何も入れていない収納カードを何枚か取り出し、それを先輩に渡した。使い方は以前教えてあるので大丈夫なはずだ。


「なるほど、これなら荷物をすぐに纏められるな」


「収納カードなら準備はすぐに終わりますし、これからすぐに館山を離れて拠点に移りましょうか」


 一旦無人島に戻って家を収納カードに収納する必要があるが、そんなのはすぐに終わる。まだ今日は昼前なので、これからすぐに拠点に移り住むのもありだな。


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