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18.関所

 しばらくドラゴンモドキを狩っていると、かなり大きな群れだったが壊滅した。数匹逃がしたが、追いかけて狩るほど実入りは良くないから無視する。


「ほれ」


 八咫烏がクチバシを開けると、ジャラジャラとドラゴンモドキのドロップアイテムの魔石が落ちてくる。それを受け止めてから袋に一纏めにして収納カードに入れた。


「なあ、ドラゴンモドキのブレスってやっぱり……」


「うむ、お主の考えている通りで相違ないはずだ」


 そう言いながら、八咫烏はドラゴンモドキのカードを俺に渡してきた。どうやらカードもドロップしたようだな。




種族:ドラゴンモドキ

ランク:D

攻撃力:90

防御力:340

【スキル】

●恐怖の息吹:口からブレスを放つ。このブレスの当たった対象には『恐怖』の状態異常が付与される。ただし格上には通用しない。




 スキル『恐怖の息吹』。これか、さっきドラゴンモドキが放ったブレスは。んで俺にこのブレスが当たって『恐怖』の状態異常が付与されたから、急に怖くなったのか。


 ドラゴンモドキも恐怖で逃げ出していたが、インテリジェンス・シールドの『反射』のスキルでブレスが弾き返されたからだろう。


 スキルの説明欄には格上には通用しないとあるけど、格ってのはランクのことなのかな。


 ドラゴンモドキからしたら(ランク)上である八咫烏にはブレスが通じていないみたいだし。


 対してDランクのインテリジェンス・シールドは恐怖で震えていたから、ドラゴンモドキのブレスは(ランク)上には通用しないが同(ランク)には通用するってことか。


 ヒッポグリフの『先祖の威光』は(ランク)下の相手にしか通用しないのに……。なんかヒッポグリフが可哀想じゃん。あいつは移動手段として優秀だけどさぁ。


「八咫烏はドラゴンモドキのこのスキルを知っていたんだよな? 何で言ってくれなかったんだ?」


「お主は最近油断しているからだ。昨日言っただろう? Cランク上位のモンスターは攻撃力によるゴリ押しはせず、厄介なスキルを使うと。厄介なスキルがどのようなものか体験させるため、あえてドラゴンモドキのスキルは伏せた」


 ……そういうことかよ。ぶっつけ本番で厄介なスキルを体験するよりは、攻撃を食らっても死ぬことがないDランクモンスターを相手に厄介なスキルが体験出来たから今回は良しとするが。


 いや、ちょっと待て。そういえば俺って一応『神木の加護』で強化されているのに、格上には通じないはずの『恐怖の息吹』が効いていたんだけど!?


「何だ、気付くのが遅いのぅ。事前にトレントのエルダー種に加護を外すように頼んでおいたのだ」


「マジかよ!?」


 じゃあまだエルダートレントには祝福されていないのか。植物を操れるか試してなかったから気付かなかったな。


 八咫烏は俺に厄介なスキルを体験させたいがための善意でやったことだろうけど、そのせいでこの後無人島に帰ってエルダートレントに再度祝福してもらう羽目になったよ。


 それからまた日本の本土に戻って来て、もう一度腐肉喰いを八咫烏の背に召喚してマヨヒガ探しを再開させた。


「キュウッ!」


 マヨヒガの気配を察知した腐肉喰いの指し示す方向に進んでみると、マンションの屋上に日本家屋と塀などが建てられていた。


 マンションの屋上に日本家屋……。


「すごい違和感があるから間違いないと思うけど、あの日本家屋がマヨヒガってことでいいのか?」


「魔力が流れておるし、間違いあるまい」


「じゃあフラガラッハ、『覚醒』を発動しろ!」


「はいっ!」


 付喪神にランクアップしていることを確認してヒッポグリフから飛び降り、『破壊斬撃』のスキルで日本家屋をぶった切って消滅させた。


 日本家屋が跡形もなく消滅するとマヨヒガ本体が露出したので、続けざまに振り回したフラガラッハで切り裂く。


「ドロップは……魔石か」


 ドロップアイテムがカードではなかったことに落胆を隠せずに肩を落としつつ、マヨヒガの魔石を拾ってからヒッポグリフを呼び寄せて背に飛び乗る。


「この後は何をするのだ?」


 八咫烏も残念そうな顔をしているが、同時にやはりかという表情をしていた。まあ早々にカードがドロップしたら苦労ないよね。


「拠点の候補地を探す。上空からだけじゃなくて地上からも探してみようかなと思っている」


 鎌倉の地形は拠点にするには最適なんだけど、出来るだけ東京から離れた場所を拠点にしたい。争いに巻き込まれたくはないんだよ。


 いつもは上空から探しているだけだけど、今日は視点を変えて地上を歩きながら探し回ってみるのも良いかもしれないと考えている。


 さすがにずっと歩き回るわけじゃない。上空で気になる場所を見つけたら、そこらを歩いて地形を調べてみるってだけだ。


 理想の地形はどんなのだろうか。トレントなどを有効活用したいから、トレントを配置しても目立たないように森や山が近くにあると良いな。必須ではないが。


 それか、戦国時代とかに建てられた城を利用するって名案なんじゃないか? うん、それも良いかもしれない。


 次に本屋行く時は日本の城を纏めた本とか探してみるか。あんま人気ありそうじゃないし、荒らされてはいないと思うからな。


 ヒッポグリフには適当に飛んでくれと指示しておいた。拠点に適した場所を上空から探すためだ。


 いつもよりゆっくりと飛ぶヒッポグリフから地上を見下ろし、防衛に適していそうな場所を見極めながら進んでいく。


「あそこなんてどうだ?」


 キョロキョロと見回して探していると、背後から八咫烏の声が聞こえたので振り返る。


「どこのことだ?」


「あそこだ。少し小高くなっておろう」


 クチバシが指す方向を睨むように見ると、丘のように小高くなっている場所があった。しかもおあつらえ向きにちらほらと木が生えている。


 元はどんな場所だったのか、何となくわかる。どっかのゴルフ場だろうな。確かにゴルフ場内は自然があるからトレントを配置しても違和感はない。


「良いじゃん」


「であろう?」


 誇らしげに八咫烏が言う。案外子供っぽいのな、お前。


 ここも拠点の候補地にしておこうかな。地図を取り出して、赤いペンでゴルフ場がある場所を囲うように丸を書き込んだ。


 ゴルフ場周辺の地形を調べておくか。


 ヒッポグリフに降りるように言うと地上に降下していき、衝撃を緩和(かんわ)するためにふわりと翼を一度だけ上下に振ってから着地した。


 目立つといけないで八咫烏とヒッポグリフをカードに送還し、念のために植物が操れるかどうか確かめてから歩き始める。


 ゴルフ場周辺の地形を調べながら歩いていくが、周辺は住宅街のようで地形はほぼ平らだ。坂などもあるが(ゆる)やかで、あってないようなものである。


「マスター、近くに人間の気配がします」


 地図を見ながら考え事をしていたら、フラガラッハが近くに人間がいると言うではないか。あまり驚きはしないがな。


「何人だ? 距離は? 覚醒者か?」


「およそ五人、距離はここから直線で100メートルほど先、おそらく五人の内二人は覚醒者でしょう。また、五人ともに火器を所持して武装しています」


「火器? 銃の(たぐ)いを持って武装してるってことか。物騒だな」


 ……モンスターが存在する時点で、この世界はすでに物騒だけどね。


 銃は警察署などから盗んだのか? それとも米軍基地や自衛隊の駐屯(ちゅうとん)地からか? いや、武装した五人が米軍や自衛隊に所属している人間の可能性もあるか。


 どちらにせよ接触する必要がある。ここは拠点の候補地だ。もし敵になり得る勢力がいるなら確認するのが先決。


 俺はリビングアーマーとフラガラッハをカードに送還し、収納カードからリュックサックを取り出す。そのリュックサックに食料や地図などを詰め、もし荷物を(あらた)められても怪しまれないようにした。


 今の俺には『神木の加護』があるため、フラガラッハやリビングアーマーの『装備者強化』のスキルがなくても生身で覚醒者とも普通に戦える。


 瞬時に植物を操って五人同時に拘束することも可能だ。


 あとは服や顔などに泥を付けたりして見窄(みすぼ)らしくし、いかにも必死でモンスターから逃げましたという感じの姿にする。


 これで大丈夫だ。あとは息を切らせるふりをしながら、五人の武装集団の元に近づいていく。


「───止まれっ!」


 俺の姿が見えると五人が一斉にこちらに銃口を向け、代表として一人の男が止まるように大声を出す。


 五人ともに男で、筋肉質で強そうな外見だ。覚醒者だった場合は細身でもそれなりに強いので外見は当てにならないが、以前の俺なら見かけ倒しの筋肉達磨(だるま)にすら手も足を出ないだろうな。


 五人が持っている銃は全て猟銃だ。多分、銃の専門店みたいなところから盗んだものだと思う。偏見(へんけん)だが猟師っぽくないし。


 俺は怯えてビクビクする演技をしながら両手を上げて、出来るだけ恐怖に顔が歪むように意識する。


「ひいいいぃぃぃぃっ!? う、撃たないでください!?」


 我ながら(たく)みな演技だ。自分の口から間抜けな声が出てしまうので、つい笑いたくなってしまうが我慢する。


「ここは関所だ。通りたければ魔石か、もしくは食料を渡せ」


「わ、渡せば撃ちませんか!?」


「ああ、撃たない、大人しく渡してくれるならばな」


「わかりましたっ!!」


 慌ててリュックサックを地面に降ろし、中にあるものを取り出すような動作をした。


 五人とも俺を(あなど)っているようなので、その隙に地面から生える植物の芽に手を当てて急速に成長させつつ、それを操って五人を拘束する。


 何が関所だよ。お前らなんかに魔石や食料を渡すわけないだろーが。馬鹿め。


「何だ!?」


「おい、これはお前の仕業か!?」


「うわああぁぁぁ!!」


 うるせぇ。だが他に仲間がいるかどうかも聞き出さないといけないからな。もしこいつらが所属しているのがかなり大きな勢力ならば、即刻壊滅させねば。


「まずはそうだな……他に仲間はいるか?」


「誰に指図してんだよ!?」


 五人全員が怒りで顔を真っ赤にして俺を睨んでいる。まだ自分の立場を理解していないようだ。


 俺はこいつらを拘束している植物がもっと締め付けるようにイメージをする。そうしたら五人とも苦しそうな声が漏れ、血流が止まって今度は顔が青くなる。


「コロコロ顔色が変わるな? 体調でも悪いのか?」


「テメェ…………!!」


 煽り耐性がまったくないな。もし仲間がいるとしても、こいつらは下っ端の構成員がいいところだろうな。


 でもどうしよう。拷問って得意じゃないんだよね。見せしめに何人か殺すことくらいしか思いつかん。指でも切り落とそうかね?


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