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11.第三避難所壊滅

 三日後の昼、俺は初老の男性の姿に変装して館山第三避難所の中にいた。誰にも違和感を持たれないような精巧な変装をしているわけだけど、実はこれモンスターのスキルで変装してるんだよね。


 そのモンスターの名前はレイス。霧に顔が張り付いたような死霊系モンスターだ。たまに見掛けるけど、フラガラッハのお陰で雑魚敵と化している。


 んで、レイスは霧状のモンスターなわけだ。つまり自分の姿をある程度変化させることが可能ってこと。


 だから初老の男性の姿に変化したレイスに、俺の上から(おお)(かぶ)さってもらうと、あら不思議。俺が初老の男性の見た目になるという寸法だ。


 それで、何で俺が変装して第三避難所の中にいるかというと、有り体に言えば復讐のためだ。


 今まで見下してしたクソどもを一カ所に集め、そこで復讐をする。


 八咫烏が言っていた、避難所内にいる奴らを一カ所に集めるのに適したスキルを持つモンスター。それは、『誘引』というスキルを持つCランクのトレントだ。


 お察しの通り、空白の三日間はトレントと連戦をしていたのだ。トレントはCランクの中でも下位のモンスターだったのでそこまで苦戦はしなかったが、さすがCランクと言うべきか。かなり疲れたよ。


 トレントは木のような見た目をしたモンスターで、普通の人では本物の木と見分けはつかない。木とトレントが見分けられるのは、魔力を視認出来る覚醒者くらいだ。


 だが、モンスターならば当然のように木とトレントを見分けられる。なので上空から八咫烏やヒッポグリフに探させ、地上では腐肉喰いを総動員してトレントを捜索した。


 トレントを見つけたら皆が俺の元に集まり、一斉にトレントへと襲いかかった。もちろんフラガラッハを持った俺も戦闘に参加した。


 そんなこんなで手に入れたトレントのステータスがこれだ。




種族:トレント

ランク:C

攻撃力:965

防御力:1175

【スキル】

●誘引:周辺にいる生物を自分の元へと引き寄せるためのフェロモンを周囲にばら()く。

●誘惑の果実:餌としてぶら下げるため、非常に美味しいリンゴに似た実を成らせる。発動すると一瞬で実が成り、また、この果実を任意で毒にすることも可能。クールタイムは半日。




 トレントは典型的な待ち伏せタイプのモンスターだ。スキル『誘引』によってばら撒いたフェロモンによって生物を引き寄せて、近づいてきた生物を捕らえて養分とする。食虫植物みてぇだなオメェ。


 木のような見た目のトレントだが、根っこが足で枝が手となっている。幹に横方向の傷のようなものがあるが、これが口である。


 また、『誘惑の果実』というスキルは一瞬にして美味しい果実を成らせることが出来る。この果実を毒に変更することも可能で、この果実を食べさせて敵を仕留めるトレントもいれば、単純に餌としてこの果実をぶら下げるトレントもいる。


 このトレントのスキルによって、食料問題が解決した。食料がなくなっても、トレントのスキルで定期的に美味しい果実が手に入るようになったのだ。


 トレントを召喚して『誘惑の果実』のスキルを発動するように指示し、その果実を食べてみた。すると、今まで食べてきたのは果実ではなかったと思うほどだったよ。


 いや~、あれが毒だとわかっていても食べてしまう人なんているんじゃないかな? だからスキルの名称が『誘惑の果実』なんだろうけど。


 このトレントの『誘引』のスキルを使い、第三避難所の人間を一カ所に集めるつもりだ。


 八咫烏いわく、トレントは館山周辺にはいないモンスターらしい。上空から探してみたが、館山にトレントはいなかったんだとさ。


 だから、第三避難所にいる覚醒者達もトレントがモンスターだとは気付かないだろう。もし気付いても、倒すまでには時間が掛かる。その間に周辺を召喚したモンスターで包囲するというのが計画の全容だ。


「さて、そろそろかな」


 第三避難所と呼ばれる高校のグラウンドには、木々が()(しげ)っているエリアがある。そのエリアにトレントを召喚することで、モンスターだと気付かれる可能性を減らすことにした。


 俺は今、その木々が立ち並ぶエリアにいる。


 ポケットからトレントのカードを取り出すと、召喚するように念じる。その途端にトレントが目の前に現れ、『誘引』のスキルを使うように言った。


 俺は誰かに目撃されないように警戒しながら離れていき、人が集まるまで待つことにする。


 二十分も経過する頃には、第三避難所の住人のほとんどがトレントの周りに集まっていた。覚醒者達も集まってきているが、未だにあの木がトレントだと気付いた奴はいない。


「そろそろだ」


 俺は遙か上空にいて姿が見えない八咫烏に向けて右手を上げる。するとそれを合図に八咫烏が降下してきて大声を上げる。


 その八咫烏の声を聞いた、第三避難所の周辺に隠れて待機していたモンスター達はすでに包囲網も形成しているはずだ。


 レイスをカードに送還し、皆に俺だとわかるようにリビングアーマーを装備せずに、フラガラッハだけを持って集団へと歩み寄っていく。


 そうしたら覚醒者や一般人の中にも俺の存在に気付く者達が現れたが、ほとんどの人はトレントや上空で旋回(せんかい)している八咫烏に注目している。


 俺が八咫烏に視線を送ると、八咫烏は一度うなずいてから旋回するのをやめて空中でホバリングした。


「人間どもよ! 復讐の時が来た!」


 八咫烏の声を聞いた一般人どもは騒がしくなる。当然だ。人語を喋るモンスターはCランク以上のモンスターで確定だからな。


 ついでにトレントにも視線を送ると、トレントは土の中から根を出してのそりのそりと歩き出した。


 俺はハイ・オークを召喚していき、一般人を囲むように指示を出す。第三避難所は包囲したから逃げられる心配はないが、皆に俺の復讐だと知らしめるためにこの場からも逃がす気はない。


「おい塚原!? なぜお前がここにいる!!」


 一般人はパニック状態、覚醒者達も何が起こっているかわからずに困惑している。


 そんな中、俺の存在に気付いていた覚醒者の一人がなぜ俺がここにいるのか問い(ただ)してきた。


「さっきあそこにいる八咫烏が言っていただろ? 復讐の時が来た、と」


 そう言いながら、俺はフラガラッハの剣先を目の前の覚醒者の青年に向けた。


 こいつの異能は確か、皮膚を鋼のように硬くするというものだったはずだ。フラガラッハならば鋼だろうと豆腐のように切れるから問題はない。


 剣先を向けられたことで青年は皮膚を硬化させる。硬化させると皮膚の色が鉄のように(にぶ)い銀色になるが、俺は意に介さずにフラガラッハで首を刎ねる。


 こいつを殺したことで覚醒者は俺を取り押さえようとするが、そいつらを順番に斬り捨てていく。


 八咫烏やトレント達などには手を出させない。これは俺の復讐だ。俺が俺の手でこいつらを殺さなくてはならないのだ。


 一般人は俺と覚醒者が戦っていることに気付いたようで顔を青くしている。いい気味だ。もっと顔を青くしろ。


 そして、第三避難所を運営している覚醒者は秦野だけが残った。


「やあ秦野。謝るなら今のうちだがどうする?」


 俺は満面の笑みを浮かべて秦野に問う。まあ今更謝ったとしても許す気はないが。気分で聞いてみたくなったのだ。


「塚原あああぁぁぁぁっ!」


 秦野はブチ切れているようだ。顔が真っ赤になってものすごい形相でこちらを睨んでいる。


 こいつの異能は魔法型だ。放てる魔法の威力は第三避難所にいた覚醒者の中で最も強力だが、一撃でDランクモンスターに致命傷を与える程度だ。


 防いだらどんな顔するだろうか。面白そうなので防いでみよう。


 両手の手のひらを俺に向けた秦野が両方の手に力を込めると、秦野の目の前に青白い発光体が生まれる。少し待っていると発光体はどんどん大きくなり、バランスボールくらいの大きさになってから俺に向けて放った。


 俺はそれをフラガラッハで真っ二つにして消滅させる。秦野から表情がさぁっと抜け落ちた。その顔は傑作だ。


 普通のインテリジェンス・ソードでは切れなかっただろうが、フラガラッハはネームドモンスターだ。通常のモンスターと一緒にされては困る。


「さて。命乞いするか?」


 というかしろ。そっちの方が面白い。


「貴様、何をした!? 俺の魔法がそう簡単に───」


「バイバイっ! また会おうね!」


 何かうるさかったのでフラガラッハで首を刎ねた。これで館山第三避難所の運営に関わっていた覚醒者は全滅。


 だがまだ復讐は終わりではない。一般人の中にも俺を馬鹿にしていた奴がいるのだ。そいつらを許すほど俺は甘くない。


 まずは俺を日常的に殴っていた奴らを見つけ出して、命乞いをしている最中に殺す。手を出さずに俺を馬鹿にしていた連中は、男ならば股間に、女ならば腹部に蹴りだ。


 復讐が終わってスッキリしていると、南原さんの彼氏の山崎とかいう男が俺に近づいてくる。


「おい、塚原! どういう───」


 俺を呼び捨てにしているし敬語でもないので減点だ。右腕没収!


「ぎゃああぁぁぁ!? 俺の右腕がっ!?」


 フラガラッハによって山崎の本体と分離した右腕をそこらに放り捨て、それから山崎を睨みつける。


「言葉遣いはちゃんとしろ。あと呼び捨てにするな。お前が南原さんの彼氏だから殺さないでやっているんだからな?」


「こ、この野郎!」


 山崎が左手に力を込める。そういえばこいつも覚醒者だったな。


 ただここの避難所の運営には関わっていなかったから、一般人のいる集団の中にいたのだろう。


 まあ山崎がやるってんなら、俺も容赦はしないが。


「ちょっ! ちょっと待ってくださいっ!」


 すると南原さんが割って入ってきた。さすがに彼氏は殺されたくないのかな。


「この人は私の彼氏じゃないんですけど!?」


 とか思ってたら本人からの急すぎるカミングアウト。マジかよ!


「でもこいつ、俺には南原さんの彼氏だってはっきりと名乗っていたんだけど」


「付き合ったことすらありません!!」


 南原さんはすごく嫌そうな顔をして言った。山崎を見ると、顔色は悪い。何だ、山崎は南原さんの彼氏のつもりだったのか?


「ならこいつ殺していいか?」


「はい、大丈夫です! 私を助けてくれた塚原さんを暴行したらしいので、すでに絶交しています!」


 辛辣(しんらつ)だな南原さん。俺がいない間に何らかの確執(かくしつ)が生まれていたのであろう。


「なら遠慮なく」


 俺がフラガラッハを振り上げたことで山崎は逃げようと背中をこちらに見せたので、背中から真っ二つにしてやった。


 その後落ち着いた南原さんが俺に感謝を述べた。あの時俺が助けていなかったら殺されていた可能性が高かったもんね。


 何でもするとのことなので、南原さんにはこの避難所にある食料や魔石などが保管されている場所に案内してもらうことにした。


 その際に自分達分の食料を残しておいてくれと騒いだ奴がいたが、うるさかったので殺した。今まで無理矢理俺に無償でモンスター肉を提供させていたんだから、利子を取って何が悪いんだよ。


 フハハハハ! 魔石も食料も根こそぎ収納カードに収納してやる!


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