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10.避難所襲撃計画

 次に、俺は八咫烏のカードに書かれているステータスを確かめてみる。




種族:八咫烏

ランク:C

攻撃力:1250

防御力:1635

【スキル】

●太陽の化身:日中は攻撃力と防御力が2倍になる。

●導き手:道に迷った時にランダムで発動し、正しい道へと導いてくれる。

●威圧:目が合った生物に対して発動可能で、目の合った対象を威圧することで体を硬直させ、動けなくさせる。




 強い! Dランクモンスターの攻撃力は90前後なのに、Cランクモンスターになると途端に数値が()ね上がるな。


 しかもスキル『太陽の化身』の効果で日中は攻撃力が2500、防御力が3270になるってことかよ。


 八咫烏は太陽の化身だと言われる場合もあるから、妥当なスキルだな。効果は強すぎるが。


 八咫烏が俺達を成長させるために襲いかかってきたと言っていたが、本当だったんだな。もし八咫烏が本気で俺達を殺したかったなら、太陽が沈む前に襲ってくるはずだし。


 戦闘でも手を抜いていたようだ。ハイ・オークとボブ・ゴブリンだけで、こんなステータスの八咫烏をあんな長時間足止め出来るはずがないもん。


 あと、俺の体が硬直して動けなくなったのはこの『威圧』のスキルか。


 『導き手』のスキルはいまいち効果がわかんないな。八咫烏に聞いても正しい道に導いてくれるという返事しか返ってこない。


 どうやら八咫烏も『導き手』のスキルの詳細(しょうさい)がわからんようだ。


 というか、念願の対空戦力が手に入ったな。これで空を飛ぶ敵とも戦えるようになった。


「なあ、八咫烏。乗るぞ」


「構わぬ」


「そんじゃ失礼して」


 八咫烏によじ登り、背中に跨がってしがみつく。


「俺が落ちないようにして飛んでくれ」


 俺の指示で八咫烏が空へ羽ばたくが、オルトロスのように振り落とされたりはしない。だが、乗り心地はオルトロスと同じく良くない。


 さすがにそう都合良くはないか。これで足も手に入ったとは思ったが……。我慢していれば乗っていられるが、俺はそんなに我慢強くないからなあ。


「どうすっかな」


「何か問題でもあるのか?」


 馬系統のモンスターをどうにかして手に入らないか悩んでいると、八咫烏がどうしたのかと尋ねてきたので相談することにした。


「馬系統のモンスターで乗り心地が良い奴のカードが欲しいんだよ」


「ふむ……馬系統というと、飛べる馬などでも良いのか?」


「ああ、それでも大歓迎だ。ペガサスとかのことか?」


「いや、別のモンスターに心当たりがある。ペガサスはCランクモンスターの中でも上位に位置するから、今のお主らでは死闘をしてやっと倒せるくらいだ」


 ペガサス以外にも飛べる馬とかいたっけ?


「スレイプニルとか?」


 スレイプニルは北欧神話に登場する八本足の馬で、空を駆けることが出来る主神オーディンが騎乗する神獣だったはず。


「馬鹿者、スレイプニルは神獣ぞ? あれはBランクモンスターに分類されておる」


「マジかよ、逆立ちしたって勝てる気がしないぜ」


 Bランクモンスターには出会ったことはないが、八咫烏と遭遇した時でさえ力の差を思い知って震えることしか出来なかったんだぞ?


 無理無理、スレイプニルに勝てる光景がまったくイメージ出来ないぜ。


「じゃあどんなモンスターなんだ?」


「それは会ってからのお楽しみだ。そのモンスターはDランクだから強くはないが、足としては役立つであろう。さあ行くぞ」


「今から行くのか?」


「そいつは『太陽の化身』のスキルを使うまでもなく勝てるのでな」


 そうして八咫烏はどこかに向かって突き進み、空の旅をすること数分。向かいから何かが近づいてきていることに気付いた。


「こっちに近づいてきているモンスターがいるが、あれがお前の言っていたモンスターか?」


「いかにも。奴らは弱いので群れておる。こちらに近づいてきているのも、十五匹ほどの群れだな」


「お前だけで大丈夫か? 駄目なら手伝うが」


「愚問だぞ。Dランクがいくら群れようが、我は負けぬ」


「いや、お前Dランクのフラガラッハに負けてたじゃん」


「ぬぅ。フラガラッハはネームドだから負けるのは仕方がない。それにフラガラッハが付喪神にランクアップした時の攻撃力が我の防御力を上回っていたのだ。我が負けるのは必然と言えよう」


「あ? どういうことだ」


 八咫烏にくわしく聞いてみると、次のようなことがわかった。


 自身の攻撃力が相手の防御力を上回れば上回るほど、相手に与えるダメージが増加する。逆に自身の攻撃力が相手の防御力を下回れば下回るほど、相手に与えるダメージが減少するらしい。


 なるほど。攻撃力と防御力の関係がいまいち理解出来ていなかったけど、被ダメージと与ダメージに関わりがあったのか。


 そうこうしているうちに目の前に大きな(わし)のような群れが現れた。ただしその鷲の下半身は何かの動物のものだ。こういうのをキメラって言うんだっけ。


「もしかしてグリフォンか?」


 グリフォンは鷲の上半身と翼、ライオンの下半身を持つ生き物として古くから描写されている。


「いや、違う。グリフォンと馬の間に生まれた子とされるヒッポグリフと呼ばれる、鷲の上半身と翼、馬の下半身を持つDランクモンスターだ」


 ヒッポグリフか。ハリー・ポッターとかに登場していた記憶があるが。


 そのヒッポグリフの群れを、八咫烏はいとも容易く蹴散らしていく。そして落下するドロップアイテムをクチバシで器用にキャッチしている。


 一分ほどで群れは全滅し、八咫烏からドロップアイテムを渡される。その中に、一枚だけヒッポグリフのカードがあった。




種族:ヒッポグリフ

ランク:D

攻撃力:85

防御力:340

【スキル】

●先祖の威光:高貴なるグリフォンを先祖に持つため、生物が敬いたくなるオーラを放つことが出来る。ただし格上や同格には通用しない。




 攻撃力はハイ・オークと同等だな。というかスキルが微妙だ。使いどころか難しいな。


 鷲は鳥の王で獅子は獣の王なので、その両者の特徴を持つグリフォンは王家の象徴(しょうちょう)とされることがある。


 だから、そのグリフォンの血を引いたヒッポグリフがこのようなスキルを持っているのだと思われる。


 八咫烏が言ったように強くはない。スキルも微妙なので、対空戦力としては期待出来ないな。こいつには足として大いに役立ってもらおう。


 ひとまずヒッポグリフを召喚して跨がる。乗り心地は悪くない。オルトロスや八咫烏よりも断然良い。


「帰りはヒッポグリフに乗って帰るのか?」


「そうする」


「では我の役目は終わりか」


「いや、家までの護衛を頼むぜ。ヒッポグリフに跨がったままだと慣れるまで戦えそうにない」


 そうなのだ、あいにくと人生で馬に乗ったことがない。だから乗り慣れるまでは八咫烏に護衛をお願いすることにしよう。


「わかった。では我の後を追って参れ」


 八咫烏が先行して案内をして、ヒッポグリフに乗った俺があとに続く形で家まで帰ってきた。ヒッポグリフの全速力は八咫烏より遅かったので、帰宅に数十分も要した。


 乗り心地は八咫烏より良かったので、いくら八咫烏の方がスピードが速いとしてもヒッポグリフから乗り換えるつもりはないけどね。




◇ ◆ ◇




 明くる朝、俺は自宅のリビングで腕を組んでいた。視線はテーブルに置いている館山周辺の地図に向けられていて、避難所のある場所は赤ペンで囲ってある。


 俺が悩んでいるのは、避難所をどうやって襲撃するかだ。


 もうすでにCランクの中でも上位に位置づけられている八咫烏を仲間にしたので、館山にいる覚醒者が束になって襲ってきても俺らが負けることはないだろう。


 だから、そろそろ頃合いだ。俺を馬鹿にしていた館山にある三つの避難所を襲撃する。


 誰も避難所から逃がさないために包囲網を作る必要があるが、配下を持つハイ・オークやボブ・ゴブリンがいるので大丈夫だ。


 そして、今まで俺を馬鹿にしていた奴らの前で復讐に来たと宣言したいのだ。


 まず最初に襲撃するのは館山第三避難所だ。だが、あの避難所に住んでいる者が全員集まる行事などは、俺が調べた限りでは存在しなかった。


 ではどうにかして、第三避難所にいる全員を一カ所に集める必要があるわけだ。さてどうしたものか……。


 人語を喋れる仲間が二人もいるので、まずはそいつらの意見も聞いてみよう。


 フラガラッハと八咫烏のカードを持った俺は外に出て庭に行った。八咫烏が大きすぎるため、家の中では召喚出来ないんだよな。


「さて、では二人とも。どうやったら第三避難所に住む全員を一カ所に集められると思う」


「お主、そんなに不憫(ふびん)だったのか……」


「マスターに暴行するなど、何て奴らでしょうか!」


 八咫烏は可哀想な者を見るような目で俺を見て、フラガラッハは俺に暴行を加えた者達が許せないようで怒っている。


 というかフラガラッハは最初は無機質な声だったけど、何かもうそんな様子はないね。何でだろ。


「ならば考えがあるぞ」


「本当か八咫烏?」


「うむ。要するに全員を一カ所に集めれば良いのだろう? そのようなことを可能にするスキルを持つモンスターに心当たりがある」


「さすが八咫烏! モンスターの知識とか豊富だな」


「八咫烏は導きの神なのでな、他の八咫烏なども我と同じくらいの知識を持っておるはずだ」


 もしかしてこれも八咫烏の『導き手』のスキルの効果なのか? 確かめる方法はないが、可能性は高いだろう。


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